
総合開館30周年記念「遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22」
2025年9月30日(火)-2026年1月7日(水)
東京都写真美術館 3階展示室
https://topmuseum.jp/
開館時間:10:00–18:00(木・金は20:00まで ※1/2を除く)入館は閉館30分前まで
休館日:月(月曜が祝休日の場合は開館、翌平日休館)、年末年始(12/29-1/1)
企画担当:大﨑千野(東京都写真美術館学芸員)
展覧会URL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-5087.html
出品作家:寺田健人、スクリプカリウ落合安奈、甫木元空、岡ともみ、呉夏枝
東京都写真美術館では、写真・映像の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、将来性のある作家を発掘するために、新しい創造活動の展開の場として、2002年より継続するシリーズの22回目の展覧会「遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」を開催する。
出品作家は、写真を軸に、社会的な枠組みやジェンダーを問い直すインスタレーションを展開する寺田健人、日本とルーマニアの2つの母国を背景に、土地と人との結びつきを浮かび上がらせるスクリプカリウ落合安奈、映画監督、音楽家、小説家で、家族の生と死を記録することで、観るものと記憶を共有する甫木元空、日本各地に残る死にまつわる風習や個人の記憶を古時計に閉じ込めた代表作〈サカサゴト〉を展示する岡ともみ、オーストラリア移民の歴史と個々の記憶を写しこむ代表シリーズから派生した新作を日本初公開する呉夏枝の5名。
タイトルの「窓」は、他者の存在を想起させる象徴であると同時に、作品を通して遠い時間や場所、記憶へと鑑賞者を導く装置として位置づけられている。人や土地、風習との結びつきから生まれる「小さな物語」は、異なる価値観を想像する契機となり、共生や対話が求められる現代社会において、多様な生の在り方を考えるきっかけを提示する。


寺田健人(1991年沖縄県生まれ)は、「性」や「生まれ」といった社会的枠組みが、人の行動や思考をいかに方向づけるのかに関心を持ち、「個人的なことは政治的なこと」というラディカル・フェミニズムの視点を起点に、こうした構造を問い直す手段として写真を軸に据え、映像や立体など多様なメディアを取り入れたインスタレーションを制作している。2019年に東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程を修了した。主な展覧会に「聞こえないように、見えないように」(Yumiko Chiba Associates、東京、2025」、「新収蔵品展」(福岡市美術館、2025)、「あらがう」(福岡市美術館、2024)、「態度が〈写真〉になるならば」(T3 PHOTO FESTIVAL TOKYO、東京、2023)、「想像上の妻と娘にケーキを買って帰る」(BankART Under35、横浜、2022)など。
スクリプカリウ落合安奈(1992年埼玉県生まれ)は、日本とルーマニアの2つの母国に根を下ろす方法の模索をきっかけに、「土地と人の結びつき」というテーマを持ち制作を行なう。2016年に東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻を首席で卒業。2025年に同大学博士課程を修了。2022年から2024年にはポーラ美術振興財団の令和4年度在外研修員として、ルーマニアに滞在した。主な展覧会に「ポーラ ミュージアム アネックス展 ―軌跡を辿る―」(ポーラ ミュージアム アネックス、東京、2025)、北アルプス国際芸術祭 2024(長野)、「Blessing beyond the borders- 越境する祝福 -」(埼玉県立近代美術館、2020)など。
甫木元空(1992年埼玉県生まれ)は、多摩美術大学映像演劇学科在学中に青山真治の指導を受け、卒業後、同氏プロデュースにより、自身が監督、脚本、音楽を努めた『はるねこ』で映画デビュー。また、2019年にBialystocksを結成し、2022年にメジャーデビュー。2023年には『はだかのゆめ』で小説家としてもデビューした。本展では、余命宣告を受けた甫木元の母や、祖父、時々訪ねてくる弟、そして弟夫婦に生まれた姪と共に過ごした高知での日々をテーマに制作した作品を出品する。主な展覧会に「ARTIST FOCUS #04 甫木元空 窓外 1991-2021」(高知県立美術館、2023)など。主な上映歴に「BAUS 映画から船出した映画館」(2025)、「はだかのゆめ」(2022)、「はるねこ」(2016)などがある。


岡ともみ(1992年東京都生まれ)は、時間・記憶・反転・光と影をキーワードに、「小さなモニュメント」を作ることをテーマに制作している。誰かにとって大切な個人の思い出や、消えかかっている風習など、世界から見過ごされてしまうような小さな物語を封入した装置を作り、リアリティを持った記憶の空間を場に立ち上げることを試みる。2019年にベルリン芸術大学留学を経て、2022年に東京藝術大学大学院美術研究科を修了。現在は同研究科博士後期課程に在籍し、岡山県と東京都を拠点に活動している。主な展覧会に「オープン・スペース 2019 別の見方で」(ICC、東京)、「オープン・スペース 2018 イン・トランジション」(ICC、東京)、個展「どこにもいけないドア」(ASK?Ⓟ、東京、2018)など。
呉夏枝(1976年大阪府生まれ)は、織や染め、ほどくといった技法を中心に、写真(サイアノタイプ)、テキスト、音声などを組み合わせたインスタレーションを制作している。在日韓国人三世としての出自を背景に、言葉にされなかった「沈黙の記憶」を巡る表現を通じて、記憶の継承の可能性を探求している。2017年から継続する「grand-mother island project」では、東アジアや太平洋を往来した人々の軌跡を手がかりに、海路を通じてつながる個人の物語や歴史を親密に想像し、記憶するための場の創出を試みている。主な展覧会に、第11回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(クイーンズランド州立美術館/現代美術館、2024)、「ANTEPRIMA×CHAT Contemporary Textile Art Prize 2024」(Centre for Heritage, Arts and Textile、香港、2024)、「六本木クロッシング 2022:往来、オーライ」(森美術館、東京、2022)など。また「Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026」を受賞し、2026年に東京都現代美術館での受賞記念展が控える。
関連イベント
出品作家とゲストによるトーク
①2025年10月19日(日)14:00–15:30
登壇:スクリプカリウ落合安奈、岡ともみ、竹内万里子(批評家・作家、京都芸術大学教授)
②2025年12月27日(土)14:00–15:30
登壇:寺田健人、呉夏枝、鷲田めるろ(金沢21世紀美術館館長、東京藝術大学准教授)
会場:東京都写真美術館 1階ホール
定員:190名(整理番号順入場/自由席)
参加費:無料
※当日10:00より1階総合受付にて整理券を配布
※両日とも文字表示支援あり
甫木元空による上映
①2025年10月26日(日)
14:00–《はだかのゆめ》 ※アフタートーク付き
登壇:甫木元空、尹雄大(インタビュアー)
②2025年11月22日(土)
10:30–《BAUS》
13:30–《はだかのゆめ》
15:00–《BAUS》
③2025年12月13日(土)
14:00–《1991》 ※作家による生演奏付き
会場:東京都写真美術館1階ホール
定員:190名(整理番号順入場/自由席)
参加費:無料
※当日10:00より1階総合受付にて整理券を配布
担当学芸員によるギャラリートーク
2025年10月10日(金)14:00–
2025年11月21日(金)14:00– ※手話通訳付き
2025年12月19日(金)14:00– ※手話通訳付き
会場:東京都写真美術館 3階展示室
参加費:無料(要チケット提示 ※またはそれに準ずるパス、各種証明書など)
筆談鑑賞会「遠い窓へ 日本の新進作家 vol. 22」手話通訳付きインクルーシブワークショップ
2025年11月8日(土)14:00–16:30
案内人:小笠原新也(耳の聞こえない鑑賞案内人)
会場:東京都写真美術館 3階展示室
対象:小学4年生以上
定員:10名(事前申込制、応募多数の場合は抽選)
参加費:無料
※申込方法は決定次第東京都写真美術館ウェブサイトに掲載予定