中平卓馬死去(1938-2015)

2015年9月1日、写真や批評活動を通じて、同世代のみならず後続する幅広い世代に影響を与えた戦後日本写真を代表する写真家、中平卓馬が肺炎のため横浜市の病院で死去した。77歳。

中平卓馬は1938年東京生まれ。東京外国語大学スペイン科を卒業し、新左翼系の総合雑誌『現代の眼』に編集者として勤務。60年代半ばより、さまざまな雑誌で写真や映画などについて執筆するとともに、自身でも写真を撮りはじめる。60年代後半から70年代にかけて、多木浩二らと同人誌『PROVOKE』を創刊、『日本写真史 1840-1945』に関わり、写真集『来たるべき言葉のために』(1970)、映像論集『なぜ、植物図鑑か』(1973)、篠山紀信との共著『決闘写真論』(1977)を刊行するなど、従来の美学や常識を疑い、否定する実践、批評活動を行なう。77年に病に倒れ、記憶の大部分を喪失する。以後も撮影、発表を継続し、2003年にはカラー写真を交えた大規模な個展『中平卓馬展 原点復帰—横浜』を横浜美術館で開催した(翌年、那覇市民ギャラリーに巡回)。近年は過去の批評を纏めた論集や写真集の出版に加え、『六本木クロッシング2013』やヨコハマトリエンナーレ2014といった展覧会にも作品が出品されていた。

文中敬称略

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