7/12[木]-8/19[日]「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」[原美術館]

東京・原美術館より

磁器のようにつるりとした肌合いの画面に描かれた子ども、動物や草花。繊細な描線、幾重にも塗り重ねた色彩と視線が吸い込まれるような奥行き。卓越した画力を持つ寡作の若手作家、安藤正子の美術館における初個展。現実と非現実の間で「絵」になる瞬間を模索し、こつこつと描きためた絵画19点を一挙公開。
図版では伝わりきらない安藤絵画の魅力、そこに息づく生き物たちの芳醇な物語世界を、実際に見て体験してください。


「おへその庭」 2010年 パネル張りカンヴァスに油彩 190×140cm
ⓒMasako Ando Courtesy of Tomio Koyama Gallery

今夏、原美術館では、「ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭」展を開催いたします。
愛知県に生まれ育った安藤正子(あんどう まさこ、1976年-)は、国際的に活躍する奈良美智や杉戸洋なども師事した櫃田伸也(ひつだ のぶや)の下、時代の波やスピードに流されず、自らの感覚を信じて絵画制作に注力してきました。自身の中に蓄積する記憶や言葉の断片と現実の事象とを織り交ぜながら、徐々に絵画のイメージを育てるという安藤。その悠長なペースゆえ、これまでに発表した作品は10点ほどで、開催した展覧会はグループ展を合わせてもわずか3回。今回はもちろん美術館として初めての個展となりますし、2004年の画廊での個展以来、こつこつと描きためてきた未発表作品12点を含む19点を鑑賞できる稀有な機会となります。

安藤の作品は鉛筆画と油彩画。様々な素材・技法を試みる作家が全盛の現代に、絵画のみで潔く表現しています。どちらもモチーフは子供や動物、昆虫、草花などの“生き物”。それらが溢れる画面は、ひと目見ただけでは全てを把握することができません。隅々まで細かく観察することによって、生き物の精緻な描写に驚嘆し、色彩の繊細さに感嘆します。生き物はいずれも同じだけの集中力をもって丹念に描かれ、彼女にとってこの世の全ての存在が等価であることを物語ります。

鉛筆画は、安藤が「自分の感情とやり取りしやすい」と語るように、指先から溢れ出るイメージをそのまま画面に定着させています。一方油彩画は、鉛筆画を基に、不透明色の描写と透明色のグレーズ*を繰り返しながら色彩のイメージと対話します。また、絵具を置いてはその都度、筆や手の平で薄く叩き伸ばし、紙やすりで磨くことによって、まるで磁器のように滑らかな表面に仕上げます。卓越した描写力によって表されたモチーフの質感には目を見張る現実感がありますが、表面が磨かれることで作家の手の痕跡や絵具の物質としての生々しさが消え、鏡の中のような実体のない虚構性も感じられます。現実と非現実の間で「絵」になる瞬間を手探りする――それが安藤の油彩画です。

本展の展覧会名は、出品作品名でもある「おへその庭」。そこに安藤は「何か生まれてくるものが漂う場」という意味を込めています。かつては私邸として、現在は美術館として多くの人々の記憶が沈殿し、小さな生き物たちや草木が庭に息づく原美術館と安藤の絵画が出会う時、そこには何が生まれ漂うのでしょうか。絵画は単なる図像ではなく、そこに描かれた世界へ鑑賞者を引き込み、「体験」させる力を持っていることを感じていただけることでしょう。 * グレーズ: 伝統的な西洋絵画の技法のひとつ。薄く溶いた透明な絵具を塗り重ね、光沢と深みを出す技法。


「雑種」 2008年 紙に鉛筆 84.5×84.5cm
ⓒMasako Ando Courtesy of Tomio Koyama Gallery

【開催要項】
展覧会名 ハラ ドキュメンツ9 安藤正子―おへその庭
(英題 Hara Documents 9: Masako Ando – The Garden of Belly Button)
*会期中、原美術館2階ギャラリーIII、Ⅳ、Vにて、「原美術館コレクション展―あちらとこちら」を併催。
[出品作家 エンリコ カステラーニ、マルタ パン、ロバート メイプルソープ、佐伯洋江、加藤美佳、横尾忠則、名和晃平、米田知子、山本糾、ルイザ ランブリ(順不同)

会期 2012年7月12日[木] – 8月19日[日]
会場 原美術館 (ギャラリーI、Ⅱ、III)
        東京都品川区北品川4-7-25 〒140-0001
        Tel 03-3445-0651(代表) Fax 03-3473-0104(代表)
        E-mail info@haramuseum.or.jp
        ウェブサイト http://www.haramuseum.or.jp
        携帯サイト http://mobile.haramuseum.or.jp
        ブログ https://www.art-it.asia/u/HaraMuseum
        Twitter http://twitter.com/haramuseum (アカウント名 @haramuseum)

主催 原美術館
特別協力 小山登美夫ギャラリー
開館時間 11:00 am-5:00 pm(水曜は8:00 pmまで/入館は閉館時刻の30分前まで)
休館日 月曜日(祝日にあたる7月16日は開館)、7月17日
入館料 一般1,000円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料/20名以上の団体は1人100円引
交通案内 JR「品川駅」高輪口より徒歩15分/タクシー5分/都営バス「反96」系統「御殿山」停留所下車、徒歩3分。
関連イベント 「Meet the Artist 安藤正子」(作家によるトーク)
7月14日[土] 2:00-3:00 pm 
場所 原美術館 ザ・ホール/料金 無料(要入館料)/定員 80名(要予約) *終了しました

*日曜・祝日には当館学芸員によるギャラリーガイドを行ないます。(2:30pmより30分程度)


「スフィンクス」 2007年 パネル張りカンヴァスに油彩 99.7×120.0cm
高橋コレクション ⓒMasako Ando Courtesy of Tomio Koyama Gallery

【概要】
原美術館がキュレーターの育成や若手作家の支援を目的に開催する不定期のプロジェクト、「ハラ ドキュメンツ」の第9弾とし「安藤正子―おへその庭」展を開催する。今回は安藤正子(1976年、愛知県生まれ)の油彩画9点と鉛筆画10点の計19点を展示する予定である。
その画力が高く評価されている安藤であるが、精緻な描写に加え、手間のかかる手法で制作されるため、油彩画の完成作は数えるほどしかない。油彩画の制作前に描く鉛筆画は、下図としての性格のみならず、別個の精微な完成作でもある。2004年の画廊での個展以来描きためてきた未発表作品を中心に、ギャラリーI、II、IIIに展示。図録等では味わえない安藤絵画のマチエールを直に鑑賞できる稀有な機会となる。

【見どころ】
* 寡作な安藤の作家人生2度目の個展にして、美術館での初個展
* 2004年の個展以降描きためてきた未発表作品12点を含む19点を一挙公開
* 図版では味わいきれない安藤絵画のマチエールを鑑賞できる稀有な機会

【安藤正子 プロフィール】
1976年、愛知県生まれ。2001年、愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了。2004年に個展開催(小山登美夫ギャラリー)の他、2009年、「放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち」展(愛知県美術館、名古屋市美術館)などに出品。現在、名古屋市在住。
http://www.tomiokoyamagallery.com/artists/ando

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安藤正子メールインタビュー
1 頭の中の風景をかたちにする
2 世界に似た絵
3 「世界」であると同時に、いのりである 

記者会見・アーティストトークのリポートこちらへ。

賛助会員イベントのリポートこちらへ。

毎日新聞 美術:安藤正子展 絵肌の驚異的な透明感 展評こちらへ。
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作家近影

【ハラ ドキュメンツとは】
ハラ ドキュメンツとは、原美術館がキュレーターの育成や若手作家の支援を目的に開催する不定期のプロジェクト。原美術館賛助会員のサポートの下、1992年の福田美蘭に始まり2002年の笹口数まで、これまでに8回開催している。美術の範疇に留まらず、着せ替え人形作家の真鍋奈見江など、次代を担う若手の創作を紹介してきた。今回は10年振りの開催となる。


「竜の背中」 2007年 パネル張りカンヴァスに油彩 120.3×130.0㎝
ⓒMasako Ando Courtesy of Tomio Koyama Gallery

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原美術館

「ホームアゲイン―Japanを体験した10人のアーティスト」
8月28日(火)-11月18日(日)

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原美術館ウェブサイト
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