やなぎみわ:婆々娘々(ポーポー ニャンニャン)!

2009.6.20-9.23
国立国際美術館(大阪)
http://www.nmao.go.jp/

文:小崎哲哉(編集部)


Windswept Woman II 2009年
©Miwa Yanagi

ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館出展作家の大規模個展。代表作『マイ・グランドマザーズ』全点展示のほか、ビエンナーレ出品作の展示も話題となっている。

B2フロア半分を用いた展示の前半は『マイ・グランドマザーズ』の一挙展示。素晴らしいのは、それに続く『フェアリー・テール』シリーズの展示方法だ。産道を想わせる暗くて狭い通路を抜けると、前半とはまったく異なる黒バックの壁に写真が並べられている。モノクロームの画像を、上方から注ぐ柔らかい光がしっとりと浮かび上がらせ、おどろおどろしくも耽美な作品世界が嫌みなく強調される仕掛けだ。

その奥にビエンナーレに出品中の最新作『Windswept Women』が続くのは自然の流れだろう。会場が違うのだから、ヴェネツィアの日本館を覆う黒い大テントは望むべくもないが、高さ4メートルの写真5点+小さなテント内のビデオ作品1点という構成はまったく同じだ。ただし、ヴェネツィア出展作はレーザークロームにマットのアクリル加工だが、ここでは布地にインクジェットプリント。テーマのひとつ「家族」を強調するためにフォトスタンドを模したというフレームも、ヴェネツィアのはアルミ製だが、ここではFRPを主に、木と紙なども用いて作ったものだという。

結果として、やや色が浅いというか、マットなトーンで統一がなされている。個人的には、ヴェネツィアで観たパキッとした色合いが好みだが、ヨーロッパでは情熱的に重厚かつコントラストを強く、日本では社会状況を反映させて軽く曖昧な印象を加味するというのが作家があえて採った戦術だった……という推測は穿ちすぎだろうか。

ART iT インタビュー:やなぎみわ
https://www.art-it.asia/u/admin_interviews/ny8YGCieDwx1kSE07MaF

動画:『Windswept Woman』(ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館)/やなぎみわインタビュー
https://www.art-it.asia/fpage/?OP=mov

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