米田知子 暗なきところで逢えれば @ 東京都写真美術館


「平和記念日・広島」(「積雲」より)2011年

米田知子 暗なきところで逢えれば
2013年7月20日(土)-9月23日(月・祝) 
東京都写真美術館
http://www.syabi.com
開館時間:10:00-18:00(木曜、金曜は21時まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日は休館)

「記録」という写真の根本的な役割のひとつを基に、現実に見えているものだけでなく、そこにある記憶や歴史を浮かび上がらせる写真作品で知られる米田知子の個展『暗なきところで逢えれば』が、東京都写真美術館で開催される。

米田知子は1965年兵庫県明石市生まれ。89年にイリノイ大学シカゴ校芸術学部写真学科を卒業そた後に渡英、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート修士課程を修了、現在もロンドンを拠点に活動している。自然災害や戦争、政治体制の変化などを経験した場所を訪れ、その場では見ることができない記憶や歴史を写真を通して浮かび上がらせる。徹底した客観的なアプローチにも関わらず、詩的な感性に満ちた写真と慎重に選び取られたキャプションにより、鑑賞者をイメージの細部、そして、目に見えていないものへと誘っていく。これまでにも第52回ヴェネツィア・ビエンナーレ企画展や昨年の第一回キエフ・ビエンナーレをはじめ、国内外の多数の展覧会に参加しており、日本国内では『記憶と不確実さの彼方』(2003年、資生堂ギャラリー)、『震災から10年』(2005年、芦屋市立美術博物館)、『終わりは始まり』(2008年、原美術館)など、継続的に個展を開催している。また、8月10日より開幕するあいちトリエンナーレ2013への参加も決まっている。

初期作品にはヨーロッパの近現代史を題材としたものが多かったが、近年はアジア、とりわけ台湾や韓国など、日本の近代化にかかわる地域を題材とした作品が増えている。本展の構成もそのような米田の関心を反映したものであり、日本統治時代、蒋介石率いる国民党の支配を受けてきた台湾の日本家屋を題材とした「Japanese house」、ソウルの元韓国国軍機務司令部キムサの内部を写した「Kimusa」に加え、新作で初公開となる「サハリン島」、天皇制の象徴である菊花、靖国神社、平和記念公園などのイメージを東日本大震災以降に再考していく「積雲」などで構成される。そのほかにも、見えるものと見えないものの関係を問い続ける米田の代表的なシリーズ「Scene」や、「Between visible and invisible」からも新しく制作された坂口安吾、安部公房を扱った写真、さらに初公開となる映像作品も発表される。
なお、会期中には森美術館チーフキュレーターの片岡真実、小説家の半藤一利をそれぞれゲストに迎え、米田本人との対談が行われる。

以下、米田が本展に寄せた文章をプレスリリースより抜粋し、記載する。

時は我々が何もしなくても流れて行く。
ただじっとしていても、鼓動と血脈があるよう
ただ生きている。

空をみて、雲は早くも遅くも常に
形を変えて彼方へと消えていく。

何一つ、誰一人、
同じ場所(ところ)で、
同じ思いであるということは不可能だろう。

我々は目の前に写しだされた像を見ては
(無垢なき)観念 - を見いだす。

それは外から染められた
しかし内に秘めた 姿なき像である。

それは見えているのだが、
見えていないということと同じかもしれない。

見えないということは
見えているということに等しいかもしれない。

永遠ということは悲観的概念であり、
すべては永遠ではない - ことで
永遠を渇望する。

それに気づくのか、気がつかないか

‘過去を支配するものは 未来をも支配し
今を支配するものは 過去をも支配する’ ※

全ては断面的なことではなく
相反しながらも、継続的なことである。

米田知子
※ George Orwell Nineteen Eighty-Four Penguin Books版より(翻訳/米田知子)

関連イベント
対談
米田知子、片岡真実(森美術館チーフキュレーター)
2013年7月20日(土)15:00-16:30
会場:東京都写真美術館1階ホール
定員:190名(無料)

米田知子、半藤一利(小説家)
2013年7月27日(土)15:00-16:30
会場:東京都写真美術館1階ホール
定員:190名(無料)
※どちらも、本展の半券持参の方に当日10時より1階受付にて整理券配布。番号順入場、自由席。

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