『Alternative Humanities – 新たなる精神のかたち ヤン・ファーブルx舟越桂』

『Alternative Humanities – 新たなる精神のかたち ヤン・ファーブルx舟越桂』
2010年4月29日- 8月31日
金沢21世紀美術館


Left: Jan Fabre – Self-portrait of the hanged (1999). Fondation Raimunda Munoz Ortega, Mula (Spain). Photo Attilio Maranzano, © Angelos / Jan Fabre. Right: Katsura Funakoshi – Drawing for “Touch of Winter” (1997). Collection of the Artist. © Katsura Funakoshi.

『Alternative Humanities – 新たなる精神のかたち ヤン・ファーブルx舟越桂』はそれぞれベルギー、日本という異なる国で伝統的な主題や手法を使い、現代美術という分野で作品を制作しつづけるキャリアのあるふたりの作家を取り上げた展覧会である。ヤン・ファーブルは自身の出身地であるフランドル地方のフランドル絵画がもつ宗教観、世界観を含有するドローイング、インスタレーション、パフォーマンス作品を制作しており、舟越桂は鎌倉時代の仏像彫刻に類似点を持つ木造の肖像彫刻でありながら、身体の現代的な見解と表現を反映している作品を制作している。

金沢の展覧会は双方の作品同士が交差している部分と、その対照が浮き彫りになっている部分の両方を通して進行していく。ファーブル、舟越両作家に個別の展示室があり、そこでは彼らの作品と共に歴史的な名作が一緒に展示されていた。潜在的に過剰な展示にもかかわらず、SANAAの設計による、回遊性を持つフロアプランとその親密性を持つ空間から拡張する空間への劇的なシフトが生まれる美術館のデザインによって、弁証法的発展がより活発になっている。

大きな長方形の部屋のひとつには舟越の最近作が集められ、天井からのスポットライトによってひとつひとつの作品が照らされ、また、奥の壁には展示作品のエスキスが高い位置まで数多く展示されている。ほぼウエストから上に切り取られ、生きているようでもあり超現実的な細部に色づけされた彫刻は不気味な、不安定にさせる効果をもたらしている。自然光が溢れる別の部屋には、ファーブルの「シザー・ハウス」 (1986年)と題されたふたつのボールペンで塗りつぶされた巨大な棺桶のような木の構造体のインスタレーション作品があり、その周囲の壁には大きなボールペンによる紙のドローイングが展示されている。

展覧会のタイトルが示すように、河鍋暁斎の「卒塔婆小町下絵画巻」や「九相図」、アントワープ美術館に所蔵される作者不詳の16世紀の宗教画「エッケ・ホモ」などの歴史的な作品を彼らの作品と一緒に展示することによって、両作家が問う生と死、さらには老いへの畏怖に対するアプローチを見いだす力を強めている。

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