Forecast: 2011年7月-9月

菊畑茂久馬回顧展 戦後/絵画
7月9日(土)- 8月28日(日)
福岡市美術館
http://www.fukuoka-art-museum.jp/

7月16日(土)− 8月31日(水)
長崎県美術館
http://www.nagasaki-museum.jp/


「ルーレット No. 1」(1964). 福岡市美術館蔵
菊畑茂九馬の回顧展『戦後/絵画』が長崎県美術館と福岡市美術館にて同時開催される。独学で絵画を始めた菊畑は、1957年に福岡で結成された前衛美術集団「九州派」の主要メンバーとして活動し、1960年代の「反美術」の動向を代表する若手作家のひとりとして注目された。炭鉱画家の山本作兵衛に私淑し、進めた作品研究、太平洋戦争記録画に関する論考の発表や国内の公共空間における作品制作や監修など画家という枠に収まらない活動を展開し、沈黙期としての1970年代を経て、その後も精力的な活動を続け、徳島県立近代美術館(1998)、福岡県立美術館(2007)、長崎県美術館(2009)と美術館レベルでの個展や回顧展も開催されている。本展ではふたつの美術館を用いて、「ルーレット」「天動説」といった代表作のみならず、オブジェ、版画、さらには「天動説」以後の絵画シリーズの集大成となる「春風」など菊畑の膨大な活動の「全景」が紹介される。また、両会場にて菊畑自身によるアーティストトークや福岡市美術館学芸員の山口洋三、昨年末に『肉体のアナーキズム』を著した黒ダライ児によるセミナーなどが予定されている。

『家の外の都市(まち)の中の家 第12回ヴェネチア・ビエンナーレ建築展帰国展』
7月16日(土)- 10月2日(日)
東京オペラシティ アートギャラリー
http://www.operacity.jp/ag/


第12回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館 展示風景. (2010).
写真提供:国際交流基金. photo: Andrea Sarti/CAST1466

昨年開催された第12回ヴェネツィア・ビエンナーレ建築展、日本館での展示の帰国展となる『家の外の都市(まち)の中の家』が東京オペラシティ アートギャラリーにて開催される。
東京という街を「新しい建築」、「都市建築理論」を生み出す孵化装置として捉え、「トウキョウ・メタボライジング」というテーマのもと、ヴェネツィアで発表されたアトリエ・ワンの「ハウス&アトリエ・ワン」、西沢立衛の「森山邸」に加え、本展では帰国展独自の企画として日本館のコミッショナーを務めた北山恒の「祐天寺の連結住棟」が紹介される。そのほか、変化を続ける東京という都市の行方を指し示す「あたらしい都市のインデックス」の展示も加えられる。なお、関連企画としてゲストトークが予定されている。(申込方法は決まり次第ホームページにて発表)

「ゲストトーク・サイクル」
8/11(木) 内藤廣×北山恒
8/14(日) 山本理顕×北山恒
8/28(日) 北山恒×西沢立衛
9/4(日)  柳澤田実×塚本由晴(アトリエ・ワン)
9/6(火)  大野秀敏×北山恒
9/15(木) 陣内秀信×北山恒
9/18(日) 西郷真理子×貝島桃代(アトリエ・ワン)

時間:19:15– (9/4のみ9:30–
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
定員:70名(要予約)
料金:要当日入場券

『視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション』
7月20日(水)– 9月4日(日)
京都国立近代美術館
http://www.momak.go.jp/


「ライト・スペース・モデュレータ」(1922-30/2006). ハーバード大学附属ブッシュ=ライジンガー美術館.
(c) Hattula Moholy-Nagy

「光と運動による造形」という創作理念を確立し、20世紀美術に「新しい視覚」をもたらしたハンガリー出身の芸術家、モホイ=ナジ・ラースローの全体像を紹介する『視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション』が京都国立近代美術館にて開催される。絵画、写真、彫刻、映画、グラフィック・デザイン、舞台美術と多岐に渡るモホイ=ナジの活動は芸術と工業技術の関係性、情報伝達やコミュニケーションといった当時の美術が直面した重要な課題を提示している。本展ではキネティック彫刻の代表作「ライト・スペース・モデュレータ」をはじめ、国内外の美術館から集められた貴重な未公開作品を含む作品、資料、約300点が展示される。展覧会会期中には、国内外の専門家を招いた国際シンポジウム「モホイ=ナジ再考ーー芸術の領域を超えて」、仲正昌樹氏による特別講演会「ベンヤミンとドイツ近代映画」のほか、ワークショップが企画されている。さらに、同美術館4Fコレクションギャラリーではモホイ=ナジが1937年に渡米して創設した「ニュー・バウハウス」の流れを汲む教育機関にて共に教鞭を執った写真家および教育を受けた写真家を特集した『キュレトリアル・スタディズ05 ニュー・バウハウスの写真家たち』、同美術館1F講堂ではモホイ=ナジがドイツに滞在した時代のフランス、ドイツの前衛映画より光と視覚的リズムの問題を追求した作品を紹介する『MoMAK Films @ home: 実験映画上映』が企画されている。
なお、本企画『視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション』はモホイ=ナジの仕事を展望する日本で最初の回顧展として、神奈川県立近代美術館 葉山を皮切りに、京都国立近代美術館での展覧会終了後の今秋にはDIC川村記念美術館に巡回する予定。

『キュレトリアル・スタディズ05 ニュー・バウハウスの写真家たち』
7月13日(水)– 9月11日(日)
京都国立近代美術館4Fコレクションギャラリー
http://www.momak.go.jp/Japanese/pressRoom/2011/curatorial.html

『MoMAK Films @ home: 実験映画上映』
8月19日(金)19:00 –、20日(土)14:00 –
京都国立近代美術館1階講堂
http://www.momak.go.jp/Japanese/films/2011/momakFilmsAthome3.html

『視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション』
9月17日(土)– 12月11日(日)
DIC川村記念美術館
http://kawamura-museum.dic.co.jp/

詳細記事
『視覚の実験室 モホイ=ナジ/イン・モーション』@ 京都国立近代美術館

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『Inner Voices – 内なる声』
7月30日(土)− 11月6日(日)
金沢21世紀美術館
http://www.kanazawa21.jp/


塩田千春「Wall」(2010), production still. (C) Chiharu Shiota, 作家蔵, Courtesy of
KENJI TAKI GALLERY

1960年以降に生まれた作家に注目したグループ展『Inner Voices – 内なる声』が金沢21世紀美術館にて開催される。既存の価値観や古い現実のパラダイムを脱し、もうひとつの現実を自ら探し続け、人間の生の困難さと可能性の両面を見る作家たちの内なる声に耳を傾ける展覧会。通俗的なイメージや価値に、そして差異から生まれる誤解や無理解に対して、対立や抵抗ではないかたちで乗り越えようとする実践や作品を通して、権威や通念から自由であろうとすること - 自己決定の自由の獲得の重要性について考える機会となるであろう。参加作家はイー・イラン、塩田千春、ジェマイマ・ワイマン、呉夏枝、キム・ソラ、藤原由葵、シルパ・グプタ、ワー・ヌ、メリッサ・ラモスの9名。会期中には「私を探す」というタイトルのもと、メリッサ・ラモスの『Haunt Me Again, Recite It Again』の特別試写を含む出品作家による8時間に渡る連続トークや、藤原由葵と美術評論家の山下裕二による対談「生と性」、呉夏枝によるワークショップなどが企画されている。

ヨコハマトリエンナーレ2011 OUR MAGIC HOUR –世界はどこまで知ることができるか?–
8月6日(土)– 11月6日(日)
http://www.yokohamatriennale.jp/

2001年にはじまり、4回目となる横浜トリエンナーレが横浜美術館、日本郵船海岸通倉庫の2会場を中心に開催される。総合ディレクターを務めるのは横浜美術館館長の逢坂恵理子、そして、アーティスティックディレクターはパレ・ド・トーキョーのチーフキュレーターである三木あき子が務める。昨年10月のキック・オフミーティング以後、1年に満たない準備期間のなかで東日本大震災が発生し、運営および内容に影響を及ぼしたものの予定通り8月6日から11月6日まで開催される。「OUR MAGIC HOUR –世界はどこまで知ることができるか?–」というタイトルのもと、世界や日常の不思議、魔法のような力、さらには超自然現象や神話、伝説、アニミズムなどに言及した作品を通して、科学や理性では解き明かせない領域に改めて眼を向ける。60名以上の参加アーティストの作品に加え、今回から主会場のひとつとなった横浜美術館の所蔵品も一部展示される予定。

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ニュース: ヨコハマトリエンナーレ2011、参加アーティスト発表(2011/06/01)

杉本博司『アートの起源|宗教』
8月28日(日)– 11月6日(日)
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
http://mimoca.org/

昨年11月より、1年間かけて4つの異なるキーワードのもとに杉本博司の作品世界を紹介していくプロジェクト。これまでの「科学」「建築」「歴史」に続く最後のキーワードは「宗教」。光学硝子製の五輪塔内部に「海景」を収めた「海景五輪塔」や、三十三間堂の千体千手観音立像を撮影した「仏の海」など、初公開作品や新たな展示方法による作品といった杉本作品を中心としながらも、キリスト胸像や十一面観音像といった古来の宗教芸術との組み合わせにより、人間の想像力の源泉を辿り、アートの起源へと迫る構成となる予定。

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