オマー・ファスト @ TARO NASU


5,000 feet is the best (2011) © Omer Fast Courtesy of gb agency, Paris / TARO NASU, Tokyo

オマー・ファスト
2015年9月11日(金)-10月10日(土)
TARO NASU
http://www.taronasugallery.com/
開廊時間:10:00-18:00
休廊日:日、月、祝
※レセプション:9月11日(金)17:00-19:00

TARO NASUでは、出来事の反復とメディアの介在を通じて、記憶や歴史の不確かさを露わにする映像作品で知られるオマー・ファストの日本初個展を開催する。

オマー・ファストは1972年エルサレム生まれ。10代の大半をニューヨークで過ごし、タフツ大学とボストン美術館付属美術大学を卒業し、2000年にニューヨーク市立大学ハンター校で修士号を取得。現在はベルリンを拠点に活動している。ドクメンタ13や第54回ヴェネツィア・ビエンナーレをはじめとする国際展や企画展に数多く参加しており、近年はアムステルダム市立美術館やモントリオール現代美術館、ストックホルム近代美術館、ダラス美術館で個展を開催している。また、日本国内でも2012年には東京都現代美術館で開催された『ゼロ年代のベルリン—わたしたちに許された特別な場所の現在』に、米軍兵士が語ったふたつのエピソードを元に制作、編集した映像作品をスクリーンの表裏に投影した4チャンネルの映像インスタレーション「キャスティング」(2007)を出品。昨年、東京オペラシティ アートギャラリーで開催された『幸福はぼくをみつけてくれるかな?』では、ドイツ人夫婦が戦地から帰還した息子を出迎えて、自宅で夕食を共にするまでの場面を息子役や展開を入れ替えて反復した「コンティニュイティ」(2012)を発表している。

本展では、ドローン(小型無人機)をテーマとするふたつの映像作品を発表する。「1,500mがベスト」(2011)は、2010年にラスベガスのホテルで実際に行われたインタビューに基づいている。同一の登場人物によって複数回繰り返されるインタビューは、その都度少しずつ内容を変え、元ドローン・パイロットの苦悩を浮き彫りにする。一方、「彼女の顔は覆われて」(2011)は、匿名のドローン・パイロットが、とある場所で行われた実弾射撃任務について語る二部構成の映像作品。Part 1ではスカイプを通じて録音されたパイロットの証言と映像が、 Part 2では、パイロットの証言と、その証言と同じ文言をインターネットの画像検索に入力することで得たイメージのスライドが交互に映し出される。

無人戦闘機としてのドローンの技術は、イスラエルで考案されアメリカで発展したと言われている。上空から地上を俯瞰し、生殺与奪権を握るという人間を超えた神のごとき超越的な存在と、その背後に存在する身の安全を保障されながらも深い心理的苦痛を味わう操縦士の人間的な苦悩。ファストはドローンをテーマとした二作品を通じて、このような「居ながらにして居ない」という現代社会が抱える矛盾を呈示する。


Her Face Was Covered (Part1) (2011) © Omer Fast Courtesy of gb agency, Paris / TARO NASU, Tokyo

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