第15回イスタンブール・ビエンナーレのキュレーターに、エルムグリーン&ドラッグセット


Elmgreen & Dragset, Installation view at Denmark and Nordic Countries Pavilion, 53rd Venice Biennale, 2009

 

2016年4月13日、イスタンブール文化芸術財団は来年9月に開幕する第15回イスタンブール・ビエンナーレのキュレーターに、アーティスト・デュオとして数々の国際展に参加、美術館やギャラリーなどでの展覧会企画も手がけるエルムグリーン&ドラッグセットを任命したと発表した。コンセプトなどは今秋開催の記者会見で発表される予定。

今回の任命に対し、エルムグリーン&ドラッグセットは「過去に3回アーティストとして関わってきたイスタンブール・ビエンナーレの次回のキュレーターに任命されたことを光栄に思っています。ナショナリズムが新たに勢いを増している現在の地理的、政治的状況を踏まえると、協働的な試みや行為に基づいたビエンナーレを企画することが重要になるでしょう。20年以上にわたって、アーティスト・デュオとして活動してきた私たちにとって、コラボレーション、協働はごく自然なものであるような気がします。ビエンナーレは対話のためのプラットフォームであり、さまざまな意見やものの見方や共同体が共存できるフォーマットになりうるものでしょう」と述べている。

エルムグリーン&ドラッグセットは、デンマーク出身のマイケル・エルムグリーン(1961年生まれ)とノルウェー出身のインガー・ドラッグセット(1969年生まれ)が1995年に結成したアーティスト・デュオ。現在はロンドンとベルリンを拠点に活動している。制度批判や社会的、政治的問題、パフォーマンス、建築などさまざまな領域に、機転を利かせたアプローチで切り込んでいく多様性に富んだ作品を発表しており、キャリアを通じて、アートの展示方法や経験を再定義するような実践を行なっている。近年は、ニューヨークのロックフェラーセンター(2016)、北京のユーレンス現代美術センター(2016)、ソウルのサムスン美術館PLATEAU(2015)、デンマーク国立美術館(2014)、アストルップ・ファーンリ現代美術館(2014)、ボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館(2011)、カールスルーエのZKM(2010)などで個展を開催。上述した3度のイスタンブール・ビエンナーレをはじめ、リバプール、シンガポール、モスクワ、ヴェネツィア、光州、サンパウロ、ベルリンなど数多くの国際展や世界各地の展覧会に参加しており、第1回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ、横浜トリエンナーレ2008、森美術館の『ハピネス:アートにみる幸福への鍵-モネ、若冲、そしてジェフ・クーンズへ』などに出品している。2000年にはヒューゴ・ボス賞にノミネート、2002年にはベルリンにて国立美術館賞を受賞。また、2008年にはベルリンのポツダム広場にナチスの迫害を受け、虐殺された同性愛者の追悼碑を制作。2012年にはロンドンのトラファルガー広場の「第4の台座」プロジェクトを担当している。

 




Above: Elmgreen & Dragset, Installation view at 12th Istanbul Biennale, 2011. Below: lmgreen & Dragset, Installation view at 3rd Singapore Biennale, 2011.

 

一方で、エルムグリーン&ドラッグセットのふたりは、今回のビエンナーレに限らず、少なくない数の展覧会やプロジェクトの企画を担当している。なかでも、2009年の第53回ヴェネツィア・ビエンナーレでは、デンマーク館と北欧館をそれぞれ架空のコレクターの住宅に見立てた展覧会『The Collectors』を企画し、特別表彰を受賞した。この企画は同ビエンナーレ史上初めてふたつのパビリオンを、ひとつの展覧会に用いた事例としても知られている。また、2013年に企画した『A Space Called Public』では、公共空間という概念に対する新しい会話を生み出すべく、さまざまなイベントをミュンヘン市内各地で展開。同年のヴィクトリア&アルバート博物館での展覧会『Tomorrow』では、同館所蔵品を使って、架空の人物の部屋/物語を創り出した。1996年にはコペンハーゲンで欧州文化首都プログラムの一環のパフォーマンスを中心とした芸術祭『Update』、2005年にはクンストラーハウス・ブレーメンで、スザンヌ・プフェファーとともに『Not a Drop But the Fall』を企画している。また、今年9月にはベルリンのケーニッヒ・ギャラリーで開催される展覧会『The Others』の企画を担当する。

イスタンブール・ビエンナーレのアドバイザリーボードのメンバーは、同ビエンナーレの13回目のキュレーターを務めた現サンパウロ美術館ディレクターのアドリアーノ・ペドロサ、イスタンブール出身のキュレーターで昨年のヴェネツィア・ビエンナーレ・マケドニア館の企画を担当したバシャク・シェノヴァ、アンカラ出身でイスタンブールを拠点に制作活動を行なうアーティストのインジ・エヴィネル、ロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーのディレクター、イヴォナ・ブラズウィック、シンガポールの南洋理工大学現代美術センターのウテ・メタ・バウアーなどで構成される。

 

第15回イスタンブール・ビエンナーレ
2017年9月16日(土)-11月12日(日)
http://bienal.iksv.org/
メディア・プレビュー:9月13日(水)
プロフェッショナル・プレビュー:9月14日(木)、9月15日(金)

 


 

過去のキュレーターとテーマ

第14回(2015)|キャロライン・クリストフ=バカルギエフ
「Saltwater」

第13回(2013)|フルヤ・エルデミッチ
「Mom, am I barbarian?」

第12回(2011)|イェンツ・ホフマン、アドリアーノ・ペドロサ
「Untitled」

第11回(2009)|What, How & For Whom(WHW)
「What Keeps Mankind Alive?」

第10回(2007)|ホウ・ハンルゥ
「Not Only Possible, But Also Necessary: Optimism in the Age of Global War」

第9回(2005)|チャールズ・エッシュ、ワシフ・コルトゥン
「Istanbul」

第8回(2003)|ダン・キャメロン
「Poetic Justice」

第7回(2001)|長谷川祐子(アーティスティックディレクター)
「Egofugal: Fugue from Ego for the Next Emergence」

第6回(1999)|パオロ・コロンボ(アーティスティックディレクター)
「The Passion and The Wave」

第5回(1997)|ロサ・マルチネス(アーティスティックディレクター)
「On Life, Beauty, Translations And Other Difficulties」

第4回(1995)|フルヤ・エルデミッチ(ディレクター)
ルネ・ブロック(アーティスティックディレクター)
「ORIENT/ATION, The Vision of Art in Paradoxical World」

第3回(1992)|ワシフ・コルトゥン(ディレクター)
「Production of Cultural Difference」

第2回(1989)|ベラル・マドラ
「Contemporary Art in Traditional Spaces」

第1回(1987)|ベラル・マドラ
※副題なし

Copyrighted Image