第24回福岡アジア文化賞、発表

2013年6月7日、福岡アジア文化賞委員会は、第24回福岡アジア文化賞の芸術・文化賞をナリニ・マラニとアピチャッポン・ウィーラセタクンに授賞する旨を発表した。なお、大賞には医師の中村哲、学術研究賞にはアジア地域研究者のテッサ・モーリス=鈴木が選出された。
ナリニ・マラニは1946年カラチ生まれ。インド亜大陸の近現代史と向き合い、絵画やインスタレーションなどを通して、宗教対立や戦争、女性への抑圧、環境破壊など、今日的かつ普遍的なテーマに挑み続けている。2007年のヴェネツィア・ビエンナーレや昨年のドクメンタ13、日本国内でも昨年から今年にかけて、福岡アジア美術館、栃木県立美術館を巡回し、現在は三重県立美術館で開催中の『アジアの女性アーティスト展 アジアをつなぐ—境界を生きる女たち 1984-2012』や、国立新美術館で開催された『アーティスト・ファイル2013—現代の作家たち』などで作品を発表している。
アピチャッポン・ウィーラセタクンは1970年バンコク生まれ。民話や伝説に基づく物語に、個人的な記憶や時事問題への言及を織り込んだ映画作品は、国際的に高い評価を得ている。2010年には『ブンミおじさんの森』がカンヌ映画祭の最高賞であるパルム・ドールを受賞、それ以前にも同映画祭にて「ある視点」部門賞や審査員賞を受賞している。1998年以来、映画制作と並行して美術の分野でも映像インスタレーションを中心に発表を続け、2010年には第1回アジア・アート・アワードを受賞、昨年はドクメンタ13に出品している。日本国内では、広島市現代美術館や東京都現代美術館、ヨコハマトリエンナーレ2011などで作品を発表している。
福岡市と公益財団法人よかトピア記念国際財団が主催する同賞は、古くからアジア諸地域との交流において重要な役割を担ってきた福岡において、アジアの固有で多様な文化の保存と想像に顕著な業績をあげた個人や団体を顕彰するために1990年に創設された。過去の芸術・文化部門受賞者には蔡國強(2009年)やナム・ジュン・パイク(1995年)などがいる。

福岡アジア文化賞:http://fukuoka-prize.org/

(文中敬称略)

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