サーペンタイン・パビリオン2018


Serpentine Pavilion 2018 Designed by Frida Escobedo, Taller de Arquitectura, Conceptual Drawing, © Frida Escobedo, Taller de Arquitectura

ロンドンのサーペンタイン・ギャラリーは、毎年恒例の夏季限定パビリオンの設計者に、メキシコ出身のフリーダ・エスコベドを抜擢した。1979年生まれのエスコベドは、歴代最年少での抜擢となる。

日常的な素材とシンプルなかたちを駆使して、建築で時間を表現するという、エスコベドのこれまでの実践と、ロンドンという都市自体が持つ物質的、歴史的なインスピレーションを兼ね備えた計画案は、ふたつの長方体が交差した中庭の形式をなす。メキシコ建築の特徴として知られる中庭という形式を採用する一方で、中庭の軸の向きは、1851年にロンドン郊外のグリニッジ天文台で定められ、世界共通の経度および時刻の基準を担うこととなったグリニッジ子午線を参照。建材はイギリス製のものを使用し、外壁にはメキシコ建築に見られる伝統的建築工法セロシア(格子窓)を採り入れる。鏡面仕上げの湾曲した屋根の内側とパビリオン内部に張られた水によって、パビリオン内部の光と影の動きを強調し、訪問者が時間の経過を意識するような空間の創出を試みる。


Serpentine Pavilion 2018 Designed by Frida Escobedo, Taller de Arquitectura, Design Rendering, Interior View © Frida Escobedo, Taller de Arquitectura, Renderings by Atmósfera


Serpentine Pavilion 2018 Designed by Frida Escobedo, Taller de Arquitectura, Design Rendering, Interior View © Frida Escobedo, Taller de Arquitectura, Renderings by Atmósfera

フリーダ・エスコベドは、メキシコ国立自治大学、ハーバード大学デザイン大学院を経て、2003年に建築事務所「ペロ・ロホ」を共同設立。都市のなかで見捨てられたり、忘れ去られたりした空間を再び活性化する取り組みによって注目を集める。2004年に若手芸術家のための芸術文化基金の助成を取得。2008年には、アイ・ウェイウェイが企画し、ヘルツォーク&ド・ムーロンが建築家を選出した中国の内モンゴル地区オルドス市郊外に計画された別荘地の開発プロジェクト「オルドス100」に参加。2009年、ニューヨークのアーキテクチュラル・リーグの若手建築家フォーラムのコンペティションで勝利。これまでに、メキシコシティのムセオ・エクスペリメンタル・エル・エコの「エコ・パビリオン」(2010)、メキシコ・モレロス州クエルナバカの「ラ・タレラ」(2012)、リスボン建築トリエンナーレ2013の「シヴィック・ステージ」(2013)などを手がけている。2017年には、前出したアーキテクチュラル・リーグによるエマージング・ヴォイスのひとりに選出された。


Frida Escobedo El Eco Pavilion (2010) Mexico City, Photography: Rafael Gamo


Frida Escobedo La Tallera (2012) Cuernavaca, Morelos, Mexico, Photography: Rafael Gamo


Frida Escobedo Civic Stage (2013) Close-Closer- Lisbon Architecture Triennale, Lisbon, Portugal, Photography: Frida Escobedo, Catarina Botello

6月15日から10月7日まで開館するエスコベドのパビリオンでは、実験的かつ領域横断的な一連のイベント「パーク・ナイツ」や、食を通じたつながりを追求する「ラディカル・キッチン」などを開催。同時期のサーペンタイン・ギャラリーでは、クリスト&ジャンヌ・クロードの個展(6月17日〜9月9日)、サーペンタイン・サックラー・ギャラリーでは、トマ・アブツの個展(6月7日〜9月9日)を開催する。

前ディレクターのジュリア・ペイトン・ジョーンズの発案ではじまった本企画は、建築界を代表する建築家の実験的な試みの場としての地位を築いてきた。近年は藤本壮介やビャルケ・インゲルスといった70年代生まれの比較的若い世代の建築家を抜擢する傾向にある。建築家の選出は、サーペンタイン・ギャラリーのアーティスティックディレクター、ハンス・ウルリッヒ・オブリストと最高経営責任者のヤナ・ピールが、デイヴィッド・アジャイとリチャード・ロジャースのアドバイスの下で担当し、本企画のスポンサーは4年連続でゴールドマン・サックスが務める。

サーペンタイン・ギャラリーhttp://www.serpentinegalleries.org/


過去のパビリオン設計
2017|ディエベド・フランシス・ケレ
2016|ビャルケ・インゲルス
2015|セルガスカーノ
2014|スミルハン・ラディック
2013|藤本壮介
2012|ヘルツォーク&ド・ムーロン、艾未未
2011|ピーター・ズントー
2010|ジャン・ヌーヴェル
2009|SANAA
2008|フランク・ゲーリー
2007|オラファー・エリアソン、シェティル・トールセン
2006|レム・コールハース(+セシル・バルモンド、アラップ)
2005|アルヴァロ・シザ(+セシル・バルモンド、アラップ)
2004|MVRDV(+アラップ)※実現せず
2003|オスカー・ニーマイヤー
2002|伊東豊雄(+セシル・バルモンド、アラップ)
2001|ダニエル・リベスキンド(+アラップ)
2000|ザハ・ハディド

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