韓国美術家賞2014


Noh Suntag at “The 9th Gwangju Biennale”. 2012

2014年10月10日、韓国国立現代美術館は韓国美術家賞2014のノ・スンテクへの授賞を発表した。

ノ・スンテクは1971年ソウル生まれ。韓国の歴史、現代社会における政治的、社会的問題に取り組む写真作品で知られる。フィクショナルな要素をドキュメンタリーに、厳密な構図をスナップショットに取り入れた手法を用い、2000年から2007年にかけて撮影した写真を纏めた『State of Emergency』(2008)によって、ドイツ写真集賞を受賞している。これまでに、韓国国内に設置された米軍軍事施設レドームを撮影した『Strange Ball』(2006)、北朝鮮との軍事境界線近くの延坪島砲撃事件を扱った『Lost Thermos』(2013)などを発表している。一昨年の第9回光州ビエンナーレでは、5.18光州民主化運動を扱った『The Forgetting Machine』(2012)を発表している。

『韓国美術家賞2014』展における展示「Sneaky Snakes in Scenes of Incompetence」では、写真環境が大きく変化した現在において、カメラが韓国社会の中でどのように機能しているかを問いかけている。抗議運動の現場で人々が互いにカメラを突きつけ合う姿を収めたノの写真は、カメラが相手を攻撃する武器であるかのように見せるとともに、写真が持つ限界を示す。残酷だが現実的にどうすることもできない「Scenes of Incompetence[無能な風景]」における「Sneaky Snakes[狡賢い蛇]」としての写真という展示タイトルは、ノ自身の写真に対する自己反省的見解を反映していると言える。

同賞は2012年に韓国現代美術に多大な功績を残し、作品制作を通じて韓国現代美術の将来的なヴィジョンを表現していく才能あるアーティストの発掘、支援を目的として、1995年から続いた「Artist of the Year」を引き継ぐ形で、韓国国立現代美術館とSBSファウンデーションによって設立された。審査過程は、推薦委員に選ばれた候補者から、5名の審査員が4名の最終候補者を選出する。最終候補者は韓国国立現代美術館で開催される展覧会で新作を発表。展示期間内にグランプリが決定する。今回の審査員を務めたのは、同館ディレクターのチョン・ヒョンミン、テート・リサーチ・センター・アジア・パシフィック部門リサーチ・キュレーターのイ・スキョン、桂園造形芸術大学教授のイ・ヨンジュン、福岡アジア美術館学芸課長の黒田雷児、インディペンデント・キュレーターのトム・トレバーが務めた。最終候補者にはノのほか、ク・ドンヒ、キム・シニル、チャン・ジアが選ばれた。

『韓国美術家賞2014』展は、韓国国立現代美術館(果川市)にて11月9日まで開催中。

韓国美術家賞2014
2014年8月5日(火)-11月9日(日)
韓国国立現代美術館(果川市)
http://www.mmca.go.kr/

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