第10回マックスマーラ・アート・プライズ・フォー・ウィメン

Dian Suci, Larung May the Blooms Be Carried Safely through the Night (2024) ©Dian Suci Photo: Dian Suci

 

2026年5月7日、マックスマーラはジャカルタのヌサンタラ近現代美術館[MACAN]を連携パートナーに迎え、初のアジア開催となった第10回マックスマーラ・アート・プライズ・フォー・ウィメンの受賞者として、5名の最終候補の中から、宗教における職人技術の伝統と資本主義システムの出合いがもたらした副作用を探求する「Crafting Spirit: Cultural Dialogues in Heritage and Practice(クラフティング・スピリット:遺産と実践における文化的対話)」というプロジェクトを提案したディアン・スチを選出した。受賞者のスチは、これからイタリアでの半年間の滞在制作を経て、2027年にヌサンタラ近現代美術館とレッジョ・エミリアのコレツィオーネ・マラモッティでの個展に挑む。

ディアン・スチ(1985年ケブメン生まれ)は、さまざまな表現方法を通じて、ドメスティックな物語と国家の政治権力が交差する領域を探究。自らのシングルマザーとしての日常的な経験に基づいた作品は、女性に対する政治的抑圧、権威主義とファシズム、家父長制、資本主義といったインドネシアの女性が直面するさまざまな問題の根底にある構造を取り上げてきた。受賞記念展に向けて、現代社会における信仰の商品化や搾取を探求するプロジェクト「Crafting Spirit: Cultural Dialogues in Heritage and Practice」では、手仕事による奉納物や宗教的イメージを手がかりに、霊性(spirituality)は、市場の力学、不正義、抑圧が浸透したシステムにおいてさえも、文化的レジリエンスの一形態として存在しうるのか、存在しうるのであればどのような仕方であり得るのかを考察。半年間のイタリア滞在では、ウンブリア州のアッシジにあるサン・マッセオ修道院、バチカンのサン・ピエトロ大聖堂など現地視察や、レッチェやフィレンツェでの特別なワークショップ、各分野の専門家の指導や調査、現地の職人やアーティストらとの対話を通じて、新作のための技術や知識、経験を深めていく。

 

Dian Suci, Is It a Body Has No Walls and Has No Collapses (2020) ©Dian Suci Photo: Dian Suci
Dian Suci, Beneath Fingers: Echoing Through the Shadow of a Still House (2025) ©Dian Suci Photo: Dian Suci
Dian Suci, Nests of Memories That Shrink from Words (2025) ©Dian Suci Photo: A+ WORKS of ART/Hariz Raof

 

連携パートナーの選定に携わり、審査員も務めたニューヨークのハイライン・アートのディレクター兼チーフキュレーターを務めるチェチリア・アレマーニは、スチの提案したプロジェクトにおける、霊性を「現実からの逃避ではなく、資本主義や大量生産による侵略的な影響に対するレジリエンスを備えた応答」として分析的視点から捉えた独自性を高く評価。同じく審査員を務め、連携パートナーのヌサンタラ近現代美術館ディレクターのヴィーナス・ラウは、建築を学んだ後に美術へと転向し、伝統的な美術機関に属さず独学で学んできたという背景を持つスチの「自律性が作品に独特の感性と概念を扱う上でのしなやかさをもたらしており、さらに、家庭生活における傷つきやすさに対する探究を通じて、家庭生活における傷つきやすさについて探究することを通じて、強く心に残る存在をつくりだす女性的な力強さを効果的に表現している。そこには彼女のレジリエンスを創造のエネルギーに変換する驚くべき能力がある」のだと分析し、半年間のイタリア滞在が表現を洗練し、その実践に新たな変革をもたらす機会になるだろう」と期待を寄せた。

マックスマーラ・アート・プライズ・フォー・ウィメンは、ロンドンのホワイトチャペル・ギャラリーとの20年に及ぶ協働を終え、大規模個展などの実績を持たない新進のアーティストの活動支援の目的はそのままに、エディション毎に異なる国、連携パートナーと開催する方針に変更。ヌサンタラ近現代美術館を連携パートナーにインドネシアでの開催となった今回の審査員は、上述したチェチリア・アレマーニ、ヴィーナス・ラウのほか、アマンダ・アリアワン(キュレーター)、メーガン・アルリン(ara contemporary共同設立ディレクター)、エヴェリン・ハリム(コレクター)、ムラティ・スルヨダルモ(アーティスト)の計6名。最終候補にはディアン・スチのほか、ベティ・アディー、ジクラ・アフィファ、イペェ・ヌル、ミラ・リズキが選ばれた。

 

マックスマーラ・アート・プライズ・フォー・ウィメン(Max Mara Art Prize for Women)https://www.collezionemaramotti.org/en/max-mara-art-prize-for-women

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