六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠 @ 森美術館

A.A.Murakami《ニュー・スプリング》2017年 アルミニウム、ロボティクス、泡、霧、香り、700×700×700 cm 展示風景:「Studio Swine x COS, New Spring」ミラノサローネ2017

 

六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠
2025年12月3日(水)–2026年3月29日(日)
森美術館
https://www.mori.art.museum/
開館時間:10:00–22:00(ただし、12/30を除く火曜と12/8は10:00-17:00)入館は閉館30分前まで
会期中無休
企画:レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM]キュレーター)、キム・へジュ(シンガポール美術館シニア・キュレーター)、德山拓一(森美術館キュレーター)、矢作学(森美術館アソシエイト・キュレーター)
展覧会URL:https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2025/

 

森美術館では、3年に一度、日本の現代アートシーンの最前線を定点観測的に総覧するシリーズ展「六本木クロッシング2025展:時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」を開催する。

2004年以来共同キュレーション形式で開催してきた「六本木クロッシング」の8回目となる今回は、山口情報芸術センター[YCAM]キュレーターのレオナルド・バルトロメウス、シンガポール美術館シニア・キュレーターのキム・へジュの2名のゲストキュレーターと、森美術館の德山拓一、矢作学の計4名が共同キュレーションを手がける。

本展では、「時間」をテーマに、国籍を問わず日本で活動する、もしくは日本にルーツがあり海外で活動するアーティスト全21組を紹介する。出展作品には、絵画、彫刻、映像はもとより、工芸や手芸、ZINE(ジン)、さらにはコミュニティプロジェクトも含まれる。本展の副題「時間は過ぎ去る わたしたちは永遠」が示す時間の貴さと儚さのもと、各作品に現れるさまざまな時間の交差をとおして、日本のアートを多角的に見つめ直す。

 

和田礼治郎《スカーレット・ポータル》2020年 ワイン、強化ガラス、真鍮、ステンレススチール、大理石、180×220×60 cm 展示風景:「Embraced Void」ダニエル・マルツォーナ(ベルリン)、2020年 撮影:Nick Ash
沖潤子《甘い生活》2022年 綿、亜麻、絹、55.0×35.5×9.8 cm Courtesy: KOSAKU KANECHIKA, Tokyo 撮影:木奥惠三

 

効率性や短期的な成果を重視し、「時間」が消費対象として扱われがちな現代社会において、その在り方を問い直す試みのもと、A.A.Murakamiによる大型インスタレーションは、霧や光といった流動的な要素によって観客を物理的・心理的に包み込み、時間がゆっくりと拡張される「今ここ」への没入体験を生み出す。和田礼治郎のブランデーを複層ガラスに封入した立体作品は、果実の発酵と蒸留を経た液体を取り込むことで、「生と死」や「時間」といった形而上学的なテーマと向き合う。ペルー出身でアムステルダムを拠点に活動するマヤ・ワタナベは、考古学的なアプローチにもとづく映像インスタレーションによって、人類史を超える時間の概念を示唆する。特定の場所に集う人々の声や環境音を用いた細井美裕のサウンド・ピースでは、個人や社会、自然や記憶といったさまざまなスケールの時間が交差する。

「記憶」の集積と「技術」の再定義を軸に、歴史や文化との新たな関わり方を提示するこれらの作品群の中で、沖潤子による繊細な刺繍作品は、手仕事や布に宿る家族の記憶を辿りながら、個人と社会、過去と現在の関係を結び直す。桑田卓郎は、日本の陶芸の技術と歴史を大胆に引用しつつ、鮮やかな色彩や奇抜なフォルムによって時代を超える造形美を生み出し、その作品に備わる工芸と現代美術というカテゴリーに対する批評性によって「日本的なるもの」への認識を更新する。日本軍のジャワ侵攻で使用され、その後インドネシア軍が独立戦争のために再利用した戦闘機を、インドネシアの凧職人たちとともに凧として蘇らせる北澤潤のプロジェクトは、歴史の痕跡をダイナミックに描き出しつつ、両国をつなぐことの葛藤と可能性を浮かび上がらせる。

 

ケリー・アカシ《モニュメント(再生)》2024-2025年 バーナーワークで制作されたホウケイ酸ガラス、コールテン鋼、66×43.2×43.2 cm Courtesy: Lisson Gallery 撮影:Dawn Blackman
北澤潤《フラジャイル・ギフト:隼の凧》2024年 竹、藤、印刷された布、紐、210×3,870×1,090 cm 展示風景: ARTJOG 2024、ジョグジャ国立美術館(インドネシア、ジョグジャカルタ) 撮影:Aditya Putra Nurfaizi

 

ケリー・アカシは、ブロンズやガラスを用いた彫刻作品によって、身体や記憶、刹那性と永遠性といったテーマを詩的に表現し、キャリー・ヤマオカは、歴史的記憶とその消失、そして風景をめぐる一連の作品を生み出すためにアナログ写真の手法を用いている。ともに日系アメリカ人であるアカシとヤマオカの作品には、国境や世代を越えて共鳴する日本的な抒情性を見出すことができる。シュシ・スライマンはマレーシア出身のアーティストでありながら、広島県尾道市で土地の歴史やコミュニティに根ざした活動を長年にわたり続けている。多様な視点から記憶、移動、越境といったテーマに迫るこれらの作品は、日本の社会と文化をさまざまなかたちで物語っている。

 

参加作家
A.A.Murakami、ケリー・アカシ、アメフラシ、荒木悠、ガーダー・アイダ・アイナーソン、ひがれお、廣直高、細井美裕、木原共、金仁淑、北澤潤、桑田卓郎、宮田明日鹿、Multiple Spirits、沖潤子、庄司朝美、シュシ・スライマン、和田礼治郎、マヤ・ワタナベ、キャリー・ヤマオカ、ズガ・コーサクとクリ・エイト

 

桑田卓郎《無題》2016年 磁土、釉薬、顔料、鋼鉄、金、ラッカー、288×135×130 cm
廣直高《無題(解剖学)》2024年 アクリル、グラファイト、油性鉛筆、クレヨン、木、243.8×213.4×5.7 cm Courtesy: Misako & Rosen, Tokyo 撮影:岡野 慶

 

同時開催
MAMコレクション021:ハオ・ジンバン(郝敬班)
2025年12月3日(水)–2026年3月29日(日)

MAMスクリーン022:イキバウィクルル
2025年12月3日(水)–2026年3月29日(日)

MAMプロジェクト034:ソニア・ボイス
2025年12月3日(水)–2026年3月29日(日)

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