イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術
2025年6月24日(火)-9月21日(日)
アーティゾン美術館 6・5階展示室
https://www.artizon.museum/
開場時間:10:00–18:00(金曜は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休場日:月(ただし7/21、8/11、9/15は開館)7/22、8/12、9/16
企画:上田杏菜(アーティゾン美術館学芸員)、賀川恭子(アーティゾン美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.artizon.museum/exhibition_sp/echoes_unveiled/
アーティゾン美術館では、複数の女性アボリジナル作家に焦点を当てた展覧会「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」を開催する。
地域独自の文脈で生まれた作品への再考が進む近年の国際的な現代美術の動向とも呼応し、オーストラリア先住民によるアボリジナル・アートに改めて注目が集まっている。第60回ヴェネツィア・ビエンナーレ(2024)で、アボリジナル作家のアーチー・ムーアの個展を展示したオーストラリア館が国別参加部門の金獅子賞を受賞したことからも、その世界的な評価と関心の高さが伺える。
本展では、所蔵作家4名を含む7名と1組による計52点の出品作品をとおして、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化の息づかいを感じ取ると同時に、イギリスによる植民地時代を経て、どのように脱植民地化を実践しているのか、またそれがいかにして創造性と交差し、複層的で多面的な現代のアボリジナル・アートを形作っているのか考察する。
ノンギルンガ・マラウィリ《バラジャラ (ジャラクピに隣接するマダルパ氏族の土地)》2019年、天然顔料、再利用されたプリンター用インク・ユーカリの樹皮、ケリー・ストークス・コレクション © the artist ℅ Buku-Larrŋgay Mulka Centre
ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ《タンギ(ロバ)》2021年、映像、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズ、NPYウィメンズ・カウンシル © Tjanpi Desert Weavers, NPY Women’s Council
アボリジナル・アートの多様性は、オーストラリアの広い国土に由来する。国際的に高い評価を得る本展の出品作家の地域性は、彼女たちの作品を読み解く鍵のひとつとなる。伝統文化が深く根付くコミュニティの出身作家から、1988年から1989年にアクリル絵具とカンヴァスによる絵画制作を始め、1996年に亡くなるまでの8年間で約3,000点以上を制作したエミリー・カーメ・イングワリィの作品を出品。2025年7月からテート・モダンにて大規模回顧展が控える。カイアディルトと呼ばれる先住民コミュニティ出身のマーディディンキンガーティー・ジュワンダ・サリー・ガボリは、80歳を超えた2005年から絵画制作を開始し、約2,000点に及ぶ作品を制作。クイーンズランド州立美術館とヴィクトリア国立美術館で個展を開催したほか、2022年にはパリのカルティエ現代美術財団で回顧展が開催された。ノーザンテリトリー準州北東部を占めるアーネムランド地方のコミュニティ出身のノンギルンガ・マラウィリは、この地方で主流とされるユーカリの樹皮に自然顔料で彩色したバーク・ペインティングと呼ばれる絵画手法を用いる。また、中央砂漠から西砂漠地域のコミュニティに属するアーティスト・コレクティヴ、ジャンピ・デザート・ウィーヴァーズは、砂漠に自生する草を主な素材に伝統技法を用いながら立体作品を制作し、現代社会に生きるコミュニティの身近な事物や日常の出来事を映像作品として発表している。地域の伝統や文化を集団で継承し続けたアボリジナルにとって、コレクティヴという創作形態は重要な要素のひとつとなっている。
マリィ・クラーク《ポッサムスキン・クローク》2020-21年、ポッサムの毛皮、ヴィクトリア州立美術館 © Maree Clarke
ジュリー・ゴフ《1840年以前に非アボリジナルと生活していたタスマニア出身のアボリジナルの子どもたち》2008年、木製椅子・焼けたティーツリーの枝、オーストラリア国立美術館、キャンベラ © Julie Gough
ジュディ・ワトソン《記憶の深淵》2023年、天然藍、鉛筆、合成ポリマー絵具・麻布、作家蔵(ミラニ・ギャラリー) © Courtesy the Artist and Milani Gallery, Brisbane, Meeanjin, Australia. Photography by Carl Warner.
現在のアボリジナル人口の8割が都市部に住むオーストラリア社会において、都市部出身もしくは都市部を拠点に活動する作家から、1980年代にジュエリー制作からキャリアをスタートし、植民地時代に失われた地域の伝統文化を復興させる活動に、創作をとおして積極的に携わっているマリィ・クラークが参加。また、タスマニアのアボリジナルを母方の祖先に持ち、創作活動をとおして自身のアイデンティティを模索しながら、緻密なリサーチを裏付けにタスマニア・アボリジナルの文化や歴史、そして祖先が経験した体験や感情に寄り添う作品をさまざまなメディアで制作するジュリー・ゴフ、吹きガラスを用いたインスタレーションを得意とし、祖先が経験した植民地時代の出来事や、冷戦期の核実験の場として利用された故郷の大地の姿、そして現在も鉱山採掘によって削られていく大地の姿を伝えるイワニ・スケース、絵画、プリント、ドローイング、彫刻、マルチメディアなど幅広い手法を用いて、イギリス植民地時代の公式文書やアーカイブを活用した作品を制作し、オーストラリア社会の歴史と文化をアボリジナルの視線から多角的に探っているジュディ・ワトソンの作品を展示する。
関連プログラム
アーティストによるギャラリートーク
2025年6月27日(金)15:30–16:30、18:30–19:30
登壇:マリィ・クラーク、ジュリー・ゴフ、イワニ・スケース、ジュディ・ワトソン
会場:アーティゾン美術館6階、5階展示室
申込:不要(要観覧券)
※各回とも逐次通訳あり
土曜講座
①「オーストラリア先住民とアート ー1970年代からの展開ー」
2025年7月19日(土)14:00 – 15:30(13:30開場)
講師:窪田幸子(芦屋大学学長、神戸大学名誉教授)
会場:アーティゾン美術館 3階 レクチャールーム
申込:事前申込制
※詳細は公式サイトで後日発表
②「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術について」
2025年8月23日(土)14:00 – 15:30(13:30開場)
講師:上田杏菜(アーティゾン美術館学芸員)
会場:アーティゾン美術館 3階 レクチャールーム
申込:事前申込制
※詳細は公式サイトで後日発表
同時開催
石橋財団コレクション選 コレクション・ハイライト
2025年3月1日(土)-9月21日(日)
アーティゾン美術館 4階展示室
https://www.artizon.museum/exhibition/detail/587