菅亮平 Based on a True Story @ 原爆の図 丸木美術館


菅亮平《An Unknown Girl》2024年

 

菅亮平 Based on a True Story
2024年7月20日(土)-10月14日(月・祝)
原爆の図 丸木美術館
https://marukigallery.jp/
開館時間:9:00–17:00 入場は閉館30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌平日、8/1-8/15は無休)
展覧会URL:https://marukigallery.jp/7901/

 

原爆の図 丸木美術館では、「空虚(Void)」をめぐる思考をもとに幅広い表現を手がける菅亮平の個展「Based on a True Story」を開催する。

「空虚(Void)」を主題とした創作に取り組んできた菅亮平(1983年愛媛県生まれ)は、2013年以降ドイツに滞在し、世界大戦の悲劇や喪失を空白の空間をもって指示する、戦後西洋美術史における「空虚(Void)」の表象の系譜に関心を寄せてきた。2020年に帰国し広島に拠点を置いた菅は、世界で初めて原子爆弾が投下された広島の歴史性を踏まえて、アジアの戦後美術史における世界大戦への応答に関心を向け、2021年には原爆ドームの第5回保存工事で使用された塗料による絵画作品《K 15-30D》の制作を開始するなど、戦後の歴史継承の問題をめぐって想起の芸術の今日的な可能性を追求している。主な個展に「In the Walls」(資生堂ギャラリー、東京、2017)、「K 15-30D」(広島芸術センター、2022)、「Half-life of Archetype」(広島県立美術館、2023)など。主なグループ展に「藝「大」コレクション パンドラの箱が開いた!」(東京藝術大学大学美術館、2017)など。

 


菅亮平《Unknown People – Mannequins Depicting A-bomb Victims》2024年


菅亮平《Documentary of the Project Researching the Mannequins Depicting A-bomb Victims》2024年

 

本展では、菅が2023年以降に取り組んできた、広島平和記念資料館所蔵の被爆再現人形を題材としたリサーチ・プロジェクトを発表。表象の可能性を問い続けてきた菅は、被爆再現人形と向き合う本作を通して、歴史継承のメソッドについて再考を促す契機を企図する。

被爆再現人形とは、同館で1991年から2017年まで展示された、広島の被爆直後の灰塵に帰した都市の一角を再現したジオラマ内の成人女性と女子学生、男子を模したプラスチック製の等身大の人形三体を指す。これらの人形は大規模なジオラマセットと共に、2010年に広島市が策定した「広島平和記念資料館展示整備等基本計画」の中で撤去の方針が示され、2013年以降に市民や有識者を中心にして、被爆再現人形論争とも言うべき賛否両論の議論が巻き起こった。最終的に、存命の原爆被害の体験者の高齢化・減少化が進む状況を見据えて、被爆の実相を実物資料で表現する方針の下、ジオラマと人形展示は2017年に一掃されることとなった。

一連の経緯に関心を持った菅は、同館で保管されていたこれらの人形の調査に取り掛かり、文化財保存・修復の専門家に協力を依頼し、対象となるオブジェクトの表面・内部・構造・組成等の成り立ちを明らかにすることを試みた。一方で菅は、この被爆再現人形と同様に、原爆被害の凄惨な情景はこんなものではなかったという意見と、原爆の被害を伝える上で果たしてきた功績を肯定する意見の双方がつきまとってきた丸木位里・俊による絵画《原爆の図》との対照関係に着目する。(※本展は被爆再現人形本体の展示を行なうものではない。)

 


菅亮平《K 15-30D》2022年

 

関連イベント
トークイベント「アーティストとして広島で考えること」
2024年7月20日(土)15:00–16:00
講師:菅亮平+岡村幸宣(原爆の図丸木美術館 学芸員)
※無料(要当日入館券)

トークイベント「想起の芸術と人形の表象をめぐって」
2024年9月14日(土)15:00–16:00
講師:菅亮平+香川檀(武蔵大学名誉教授 / 表象文化論)
※無料(要当日入館券)

トークイベント「彫刻史からみる被爆再現人形」
2024年10月14日(月・祝)15:00–16:00
講師:菅亮平+石崎尚(愛知県美術館学芸員)
※無料(要当日入館券)

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