豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表 @ 東京都現代美術館


豊嶋康子《パネル #32》2014年 個人蔵 撮影:豊嶋康子

 

豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表
2023年12月9日(土)-2024年3月10日(日)
東京都現代美術館 企画展示室1F
https://www.mot-art-museum.jp/
開館時間:10:00–18:00 展示室入場は閉館30分前まで
休館日:月(1/8、2/12は開館)、12/28-1/1、1/9、2/13
企画担当:鎮西芳美(東京都現代美術館学芸員)
展覧会URL:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/toyoshima_yasuko/

 

東京都現代美術館では、1990年より30年以上にわたって、日常に取り巻くさまざまな制度や価値観、約束事に「私」の視点から対峙しつづけるアーティスト、豊嶋康子の美術館における初の大規模個展「豊嶋康子 発生法──天地左右の裏表」を開催する。

豊嶋康子(1967年埼玉県生まれ)は、物や道具の仕組み、学校教育、経済活動から日常のさまざまな行為まで、私たちに避けがたく内面化、自動化されてきた思考や行為の枠組みやルールを、自身の感じる違和感や関心を梃として独自の仕方で読み替え、捉え返すことで、人の思考の型の形成、社会と自己の成り立ちの在り様を問うてきた。 豊嶋は1993年に東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了。1990年に田村画廊(東京)にて個展を開催し、その後も秋山画廊(東京)、M画廊(足利)、ガレリア フィナルテ(名古屋)、Maki Fine Arts(東京)などで継続的に個展を開催してきた。2014年にはM画廊より作品集『TOYOSHIMA YASUKO : works 1990-2013』を刊行。そのほか、近年の個展に「公開制作27 豊嶋康子『色調補正』」(府中市美術館、2005)、「資本空間 スリー・ディメンショナル・ロジカル・ピクチャーの彼岸vol.1」(ギャラリーαM、2015)ほか。グループ展に「ART TODAY 1990」(高輪美術館、東京、1990)、「傾く小屋 美術家たちの証言 since9.11」(東京都現代美術館、2002)、第9回恵比寿映像祭「マルチプルな未来」(東京都写真美術館、2017)、アッセンブリッジ・ナゴヤ2017(旧・名古屋税関港寮、愛知)、「百年の編み手たちー流動する日本の近現代美術ー」(東京都現代美術館、2019)、「話しているのは誰? 現代美術に潜む文学」(国立新美術館、2019)ほか多数。

 


豊嶋康子《鉛筆》1996年 東京都現代美術館蔵 撮影:椎木静寧


豊嶋康子《口座開設》1996年- 作家蔵 撮影:加藤建

 

豊嶋の制作は、1990年の《エンドレス・ソロバン》や《鉛筆》など、物の使用法や構造に従いながらも別様に展開し、その機能を宙吊りにする作品に始まる。90年代後半に入ると、「表現」の領域を広く考察し、銀行での口座の開設や株式の購入、生命保険への加入といった社会・経済活動そのものを素材として用いて、特定のシステムの全体を「私」の一点から逆照射するような《口座開設》《ミニ投資》などを発表。2005年に発表した《色調補正1》では、一般的に共有される色の体系を「私」の設定のもと、ひたすらに塗り替えることを試みた。幅広い作品群はいずれも、いわゆる既成の仕組みや枠組み、順列などに対して、脈絡を守りつつ「私」を用いて別の見方を挿入し、本来の意味作用を逸脱させ、歪ませ、反転や空回りをさせることで、その構造と私たちの認識や体験の「発生」を捉えようとするものとして共通している。また、近年の〈ある順番に並べる〉(2014-2016)や〈隠蔽工作〉(2012)、一連の〈パネル〉(2013-2015)、〈地動説2020〉(2020)などは、こうした構造それ自体を抽象的に展開した作品として捉えることができる。

 


豊嶋康子《色調補正1》2005年- 作家蔵 撮影:後藤充(公開制作、府中市美術館、2005年)

 

「美術の領域でやることは、相手の想定する領域を広げること」「自分の住んでいる空間を、自分の意思で組みなおす」と語る豊島。本展は、初期作品から新作までおよそ400点を初めて一堂に公開し、豊島の制作の全貌を検証する初めての試みとなる。出品作品の〈マークシート〉は豊島が自身の表現をつかんだ重要な作品。東京藝術大学在学中の1990年に田村画廊および西武高輪美術館で発表した同作品と《エンドレス・ソロバン》の2作品も全面修復し、33年振りにオリジナルのインスタレーションを受け継ぐかたちで公開される。また、作家自身の構想にもとづき、個々の作品が持つ構造に応じて緩やかにグループ化された作品同士の関係性が見えてくる展示構成により、本展はシステムを素材とする作家に相応しく、「美術館」それ自体も、捉え直され、読み替えされる機会となる。

 


豊嶋康子《地動説2020 ナルガエ》2020年 作家蔵 撮影:星野健太


豊嶋康子《前例》2015年 gigei10蔵 撮影:柳場大 (「MOTコレクション第3期 いまーかつて 複数のパースペクティブ」東京都現代美術館、2019)

 

※会期中は、アーティストトークや対談、ボランティアや担当学芸員によるギャラリーツアーなど、多彩なプログラムを行なう予定。

 


同時開催
MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ
2023年12月2日(土)-2024年3月3日(日)
東京都現代美術館 企画展示室3Fほか
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-annual-2023/

MOTコレクション 歩く、赴く、移動する 1923→2020 特集展示 横尾忠則―水のように 生誕100年 サム・フランシス
2023年12月2日(土)-2024年3月3日(日)
東京都現代美術館 コレクション展示室
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-231202/

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