渉るあいだに佇む-美術館があるということ @ 茅ヶ崎市美術館


やんツー《Untitled Drawing by a Device for “Graffiti” #13 (seen the sea)》 2022年 スプレー式アクリル塗料ドローイング・パネル 作家蔵

 

渉るあいだに佇む-美術館があるということ
2023年4月8日(土)– 6月11日(日)
茅ヶ崎市美術館
https://www.chigasaki-museum.jp/
開館時間:10:00–17:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月
企画:藤川悠(茅ヶ崎市美術館学芸員)
出品作家:やんツー、菅野創、藤原大、若見ありさ、小川敦生、鵜飼美紀、森若奈、高尾俊介、萬鉄五郎、速水御舟、小山敬三、八木重吉、三橋兄弟治、井上有一
展覧会URL:https://www.chigasaki-museum.jp/exhibition/7120/

 

開館25周年を迎える茅ヶ崎市美術館では、同館にゆかりのある作品や作家を紹介しながら、地域に美術館という場があることについて考える展覧会『渉るあいだに佇む-美術館があるということ』を開催している。

1998年4月に開館した茅ヶ崎市美術館ではこれまで、茅ヶ崎にゆかりのある作家の作品を所蔵するとともに、近年では同時代を生きるアーティストと展覧会を開催し、地域に関連した作品を増やしている。制作された時代も、形態も異なるそれらの作品には、その時々のアーティスト自身の関心事や、物事の捉え方、思考の跡が見てとれる一方で、作品の見え方は、見る人の状況、社会情勢によっても変わりうる。本展では、そのように揺れ動くものの中で、ふと立ち止まり、自分や他者の考えの中に身を置くことができる空間として美術館を捉え、25周年をひとつの節目として、地域に美術館という場があることについて来館者と一緒に考えていく。

 


やんツー+菅野創《SEMI-SENSELESS DRAWING MODULES #1 – Replicate》 2015年 マシン、ボールペン・パネル 作家蔵 Photo by Mochida Kanta

藤原大《ゴミが糸になる—草原のセーター、都会のセーター(茅ヶ崎)》 2021年 写真 茅ヶ崎市美術館蔵 Photo by Keizo KIOKU

 

展覧会は、同館のために制作された作品や、ゆかりある作家の作品を展開しながら、6章立てで14人の作家を紹介していく。

刻々と変わるテクノロジーの進化や社会状況を捉え、機械と人間、その身体性や表現の主体性の在りかについて、問いを突きつけるやんツー(1984年神奈川県生まれ)は、絵を描く、文字を書く、鑑賞するなど、人間特有と思われるような行為を機械に代替させる作品で知られる。電子回路やプログラミングを用いた作品で知られる菅野創(1984年千葉県出身)は、近年、自然界のアルゴリズムを用いた作品を制作し、複数のロボットが互いにコミュニケーションをとる様子や繁殖していく様子を見せる新たな作品を制作している。菅野とやんツーは、茅ヶ崎市美術館にて『正しいらくがき展』(2015)を開催しており、本展ではこのとき制作された、子どもと大人が展示室の巨大な壁面と対峙してできあがった作品を展示する。

藤原大(東京都生まれ)は、コーポレイト(企業)、アカデミック(教育)、リージョナル(地域)の3エリアをフィールドに、現代社会に向けた多岐にわたる創作活動で知られ、2021年に茅ヶ崎市美術館にて開催された個展『human nature Dai Fujiwara 人の中にしかない自然 藤原大』から、茅ヶ崎に落ちていたゴミでつくられた作品を出展。主にコマ撮りの手法を用いたサンドアニメーションを制作するほか、映画やテレビ番組などのアニメーションも手がけるアニメーション作家の若見ありさ(愛知県生まれ)は、まちのシンボルである烏帽子岩をモチーフにした作品を出展するほか、アニメーション上映会や地域の素材を活かしたものづくりワークショップも予定されている。

 


若見ありさ《ちがさきの海》 2023年 アニメーション 作家蔵

鵜飼美紀《共有する範囲について》 2022年 ラテックス、木、POフィルム 作家蔵

 

作品と鑑賞者を取り巻く環境、場の微細な変化を気づかせるサイトスペシフィックな作品が高い評価を受けている鵜飼美紀(1968年東京都生まれ)は、主にラテックスという天然ゴムを使い、皮膜状にして大きく空間を遮る作品や、無数の小さなガラスの器に水を張り、光や空気のゆらぎを感じさせる作品で知られる。本展では天候や時間によって変化し続ける作品を出展。紙、アクリル、石けん、地面などさまざまな素材の上に、一本の線をペンやニードル、時にはチョークを用い、手で自在に描き構築していく作品で知られる小川敦生(1969年神奈川県生まれ)は、一本の線は、場や素材の特性に沿うように、反復し、展開し、時に逸脱しながら繊細なかたちを創り出す。

 


小川敦生《ghost catcher》 2019年 ポスターペイントマーカー・ガラス面

 

そのほか、さまざまな地で生きる人の声を丁寧に拾い上げた記事を展開するライフジャーナル・マガジン「雛形」の立ち上げや、500年のcommonを考える「YATOプロジェクト」に参画して地域の人への聞き書きを通じた本「郷土詩」を制作し、2022年に独立して“聞く”ことの可能性を探る編集会社「三三社(みみしゃ)」を設立した編集者の森若奈(1983年神奈川県生まれ)は、同館を訪れる人々や周辺に暮らす人の声を集めて展示する。人間の日々変わる気分や体調などの変動的な部分と規則的な動きをするコンピューターをつなぐことで、プログラミングの表現の幅を拡張していく作品で知られる、クリエイティブコーダーの高尾俊介(1981年熊本県生まれ)は、作品を出展するだけでなく、オンラインでのワークショップを開催する。

 


森若奈《こえを聴く-「聞き書き」からなぞる美術館》 2023年 声、言葉・紙 作家蔵


高尾俊介《220319b》 2022年 インクジェットプリント 作家蔵

 

また、茅ヶ崎市美術館にゆかりある美術史に残る作家として、強烈な色彩と大胆な筆使いで描いた《裸体美人》で知られる画家の萬鉄五郎(1885-1927/岩手県生まれ)、精密で叙情的な写実描画で知られ、明治から昭和にかけて活躍した代表的な日本画家の速水御舟(1894-1935/東京都生まれ)、身近な暮らしや何気ない自然の美しさ、自身の死を前に揺れ動く内面を素直な言葉でつづった詩人の八木重吉(1898-1926/東京都生まれ)、重厚な筆致と大胆な構図の作品で知られる画家の小山敬三(1897-1987/長野県生まれ)、ほとんど水を使わずに描く、渇筆描法の技法を駆使した作品で知られる水彩画家の三橋兄弟治(1911-1996/神奈川県生まれ)、書の枠組みを打ち破る作品で世界的に高い評価を受ける書家の井上有一(1916-1985/東京都生まれ)の作品もともに展開される。

 


萬鉄五郎《海岸風景》 1926年 油彩・キャンバス 茅ヶ崎市美術館蔵

 

関連イベント
美術館の建築ディテールツアー
出演:新倉隆(洋建築企画チーフデザイナー/一級建築士)
2023年4月22日(土)14:00–15:30
会場:茅ヶ崎市美術館館内
定員:20名(申込制/先着順)※申込は4月8日(土)10:00–、電話か美術館受付まで
料金:500円(資料代)

アウトリーチ ・ トーク(1) 作家ゆかりの地、文化人を呼び寄せた「南湖院」
出演:平山孝通(茅ヶ崎ゆかりの人物館学芸員)、小川稔(茅ヶ崎市美術館館長)
2023年4月23日(日)14:30–16:00
集合場所:南湖院記念 太陽の郷庭園(茅ヶ崎市南湖7-12869)
定員:30名(申込制/先着順)※申込は4月8日(土)10:00–、電話か美術館受付まで
料金:500円(資料代)

アウトリーチ ・ トーク(2) アート×ビール 見る楽しみ、飲む楽しみ ※受付終了
出演:大庭陸(Passific Brewing)、山本俊之(Passific Brewing)、やんツー(美術家)
2023年6月10日(土)14:30–16:00
集合場所:Passific Brewing工場(茅ヶ崎市萩園2644-3)
定員:15名(申込制/先着順)※申込は4月8日(土)10:00–、電話か美術館受付まで
料金:1,000円(ビール1本付き)

カフェ・トーク(1)現象と境界を共有していくこと
出演:小林晴夫(アーティスト/blanClassディレクター)、鵜飼美紀(アーティスト)
2023年5月13日(土)14:30–16:00
会場:茅ヶ崎市美術館アトリエ
定員:30名(申込制/先着順)※申込は4月8日(土)10:00–、電話か美術館受付まで
料金:700円(ワンドリンク付き)

カフェ・トーク(2)かたちで創り上げていくこと
出演:野老朝雄(美術家)、小川敦生(アーティスト)
2023年5月14日(日)14:30–16:00
会場:茅ヶ崎市美術館アトリエ
定員:30名(申込制/先着順)※申込は4月8日(土)10:00–、電話か美術館受付まで
料金:700円(ワンドリンク付き)

カフェ・トーク(3) 地域を素材にモノ/コトを起こすこと
出演:藤原大(美術家)、小川稔(同上)
2023年5月28日(日)14:30–16:00
会場:茅ヶ崎市美術館アトリエ
定員:30名(申込制/先着順)※申込は4月8日(土)10:00–、電話か美術館受付まで
料金:700円(ワンドリンク付き)

オンライン・ワークショップ「プログラミングで描く茅ヶ崎の海」
講師:高尾俊介(クリエイティブコーダー)
2023年5月27日(土)14:00–15:30
会場:Zoomによるオンライン形式で実施
定員:10名(申込制/先着順)※申込は4月8日(土)10:00–、電話か美術館受付まで。小学生以上対象(小学4年生までは保護者同席)
料金:無料
申込方法:氏名、年齢、連絡先を記入し「bijutsukan@chigasaki-arts.jp」へメール

親子向けショート・アニメーション上映会&ミニトーク
出演:若見ありさ(アニメーション作家)
2023年6月3日(土)10:30–11:30
会場:茅ヶ崎市立図書館2階 第1会議室
定員:50名(申込制/先着順)※申込は4月8日(土)10:00–、電話か美術館受付まで。未就園児~大人まで対象(小学3年生までは保護者同伴)
料金:無料

地域の素材を活かした造形ワークショップ
講師:東京造形大学 若見ありさゼミナールの学生の皆さん
2023年6月4日(日)10:30–16:30
会場:茅ヶ崎市美術館アトリエ
料金:500円
※申込不要、時間内随時受付。小学生~中学生向け(小学3年生以下は保護者同伴)

エディター×キュレーター「『聞く』 ことからはじまるもの」 ※既に終了
出演:森若奈(編集者)、藤川悠(茅ヶ崎市美術館学芸員)
2023年4月16日(日)14:00–15:00
会場:茅ヶ崎市美術館展示室
料金:無料 ※要観覧券、申込不要

アーキテクト×キュレーター「建物をつくる人×つかう人の建築ツアー」
出演:山口理紗子(建築家)、藤川悠(同上)
2023年5月7日(日)14:00–15:30
会場:茅ヶ崎市美術館館内
料金:無料 ※要観覧券、申込不要。対象は子ども~大人まで

キュレータートーク① ※既に終了
2023年4月15日(土)14:00–15:30
会場:茅ヶ崎市美術館展示室
担当:藤川悠(同上)
料金:無料 ※要観覧券、申込不要

キュレータートーク②
2023年6月9日(金) 14:00–15:30
会場:茅ヶ崎市美術館展示室
担当:藤川悠(同上)
料金:無料 ※要観覧券、申込不要。手話通訳付き/視覚に障がいのある方も相談可

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