リニューアルオープン記念特別展「芦屋の美術、もうひとつの起点 ―伊藤継郎」@ 芦屋市立美術博物館


伊藤継郎《二人の司教》1968年 芦屋市立美術博物館蔵

 

リニューアルオープン記念特別展
「芦屋の美術、もうひとつの起点 ―伊藤継郎」
2023年4月15日(土)– 7月2日(日)
芦屋市立美術博物館
https://ashiya-museum.jp/
開館時間:10:00–17:00 入館は閉館30分前まで
休館日:月
企画担当:川原百合恵(芦屋市立美術博物館学芸員)
展覧会URL:https://ashiya-museum.jp/exhibition/17446.html

 

芦屋市立美術博物館では、芦屋の地で絵画制作を続け、昭和から平成にかけて芦屋の美術の中心に存在していた画家、伊藤継郎の画業の再検証を試みる展覧会『芦屋の美術、もうひとつの起点 ―伊藤継郎』をリニューアルオープン記念特別展として開催する。同館が開館した1991年の回顧展以来32年ぶり、没後としては初の大規模な伊藤継郎展となる本展では、約60点の伊藤作品とともに、伊藤が画家として歩む中で交流した20名の多彩な画家たちの作品を展観し、当時の洋画界の様相を紹介する。

伊藤継郎(1907年大阪生まれ)は、大阪の画塾で学び、1928年に芦屋へ転居し、アトリエを構えると終生その地に暮らし描き続けた。日常の一場面や人物、動物、旅先の風景や異国の人々など、自らが心惹かれたモチーフを見つめ、愛情豊かに描く。友人の小磯良平は、伊藤のモチーフのとらえ方を「眼の前にあるものが彼の頭の中を通過することによって、忽然として彼の造形に変化して出て来る」(『なにわ会シリーズ小冊子「伊藤継郎」』梅田画廊、1966年)と評した。

複数の美術団体展に出品して研鑽を積んだ伊藤は、1941年に新制作派協会(現・新制作協会)へ入会、以後この会を拠点に活動を続ける。44年に満州に出征し、終戦後約1年のシベリア抑留を経て、46年に復員。戦火を逃れた芦屋のアトリエには、温厚な人柄の伊藤を慕って画家仲間や文化人が集ったほか、絵画教室も開かれ多くの人々が学んだ。48年には吉原治良らと芦屋市美術協会を創設。その中心人物として、芦屋市展や童美展(児童対象の公募展)の審査を務めた。その後も浪速芸術大学(現・大阪芸術大学)、京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)などで教授を歴任し後進の指導にあたった。

 


伊藤継郎《鳩を配した裸婦》1937年 芦屋市立美術博物館蔵


伊藤継郎《無題》1953年頃 芦屋市立山手小学校蔵

 

本展は、伊藤の画業を5章構成で紹介する。第1章「学び ―大阪の洋画界を背景に」では、伊藤の画業の前奏として、松原三五郎赤松麟作など、伊藤が学んだ大阪洋画界の画家たちの作品を紹介する。続く第2章「研鑽 ―美術団体での活躍」は、第17回二科美術展覧会に初入選するなど、画家として歩みはじめた1930年代の作品とともに、伊藤が交流した同世代の画家たちの作品を展観する。第3章「開花 ―新制作派協会」では、新制作派協会時代の伊藤作品および、小磯良平猪熊弦一郎小松益喜西村元三朗の作品を通じて、各々が独自の作風を探究した新制作派協会の一端を提示する。新制作派協会は、国家が美術界を統制しようとした1935年の帝展改組に端を発し、純粋な芸術上の探求のみを求めた精鋭たちの集団で、当時の美術界に清新な風をもたらしていた。

 


赤松麟作《裸婦》昭和初期 大阪中之島美術館蔵


小出楢重《横たわる裸女 A》1928年 芦屋市立美術博物館蔵

 

第4章「再出発 ―芦屋の地で」では、戦後の復興期における画家たちの活動と芦屋の文化の歩みにおいて、伊藤の果たした役割を振り返る。戦災を逃れた伊藤のアトリエは、住居やアトリエを失った画家仲間や文化人が集う、学びと交流の場となり、小磯や田村孝之介西村元三朗らはここで同じモデルを囲み、裸婦の研究をともにした。新制作派協会の研究所も置かれ、白髪一雄や村上三郎が通い、一般向けの絵画教室も開かれた。1948年に設立した芦屋市美術協会では、吉原治良と並ぶ中心人物として活躍し、吉原が逝去した1972年からは代表を務めた。本章では、戦後の伊藤のアトリエに集った画家たちと、芦屋市美術協会創立メンバーの作品を展観する。そして、最終章となる第5章「伊藤絵画の内実」では、伊藤の絵画および素描作品を、彼が残した技法書やエッセイ等の資料とともに展示し、「モチーフ」「技法・素材」という観点から、伊藤独自の絵画論、ひいては「絵を描くとはどういうことか」という根源的な問いに迫る。

 


田村孝之介《裸婦習作》1947年頃 神戸ゆかりの美術館蔵


白髪一雄《文》1954年 芦屋市立美術博物館蔵

 

出品作家
伊藤継郎、松原三五郎、赤松麟作、黒田重太郎、小出楢重、鍋井克之、古家新、田川寛一、猪熊弦一郎、小磯良平、田村孝之介、小松益喜、山本直治、吉原治良、井上覺造、藤井二郎、松井正、吉田一夫、西村元三朗、白髪一雄、村上三郎

 

関連イベント
講演会「新制作派協会の戦前・戦中・戦後 ―創立期会員、神戸・阪神間の会員の歩みとともに―」
講師:廣田生馬(神戸市立小磯記念美術館 学芸担当係長)
2023年6月11日(日)14:00-15:30
会場:芦屋市立美術博物館 講義室
定員:60名 ※申込不要、要観覧券

ワークショップ「継郎先生の絵画教室―静物画を描こう!」
講師:吉村有子(アーティスト)
2023年6月25日(日)11:00-16:00(予定)
会場:芦屋市立美術博物館 体験学習室
対象:小学生以上
定員:10名 ※事前申込制(応募者多数の場合は抽選)
※申込は4月1日より電話、メールにて(6月10日締切)。詳細は公式ウェブサイトを参照
参加費:500円、要観覧券
持ち物:使いたい絵具や画材(カンバスは美術館が用意)、汚れてもよい服装、昼食

学芸員によるワークショップ「伊藤継郎の作品を模写しよう!」
講師:川原百合恵(芦屋市立美術博物館学芸員)
2023年5月27日(土)11:00-16:00(予定)
会場:芦屋市立美術博物館 体験学習室
対象:中学生以上
定員:15名 ※事前申込制(応募者多数の場合は抽選)
※申込は4月1日より電話、メールにて(5月12日締切)。詳細は公式ウェブサイトを参照
参加費:500円、要観覧券
持ち物:使いたい絵具や画材(カンバスは美術館が用意)、汚れてもよい服装、昼食、飲み物

鑑賞&スケッチ会「伊藤継郎が愛したモチーフ・動物を描こう!」
講師:川原百合恵(芦屋市立美術博物館学芸員)
第1部(作品鑑賞会)|2023年5月13日(土)14:00-15:00
会場:芦屋市立美術博物館
第2部(スケッチ会)|2023年5月14日(日)9:30-12:30
会場:神戸市立王子動物園 ※小雨決行、荒天中止
対象:小学生以上 ※小学生の参加には保護者の同伴が必要 ※両日ともできる場合のみ応募可
定員:約20名 ※事前申込制(応募者多数の場合は抽選)
※申込は4月1日より電話、メールにて(4月29日締切)。詳細は公式ウェブサイトを参照
参加費:100円(別途、神戸市立王子動物園入園料|大人600円、中学生以下無料)
持ち物:スケッチブック、鉛筆やクレヨンなどの画材、飲み物
第1部の作品鑑賞会の際には要観覧券

学芸員によるギャラリートーク
講師:川原百合恵(芦屋市立美術博物館学芸員)
2023年4月22日(土)、5月7日(日)、6月17日(土)14:00-15:00
会場:芦屋市立美術博物館 展示室
対象:どなたでも ※申込不要、要観覧券

対話型鑑賞会「おはなししながら継郎さんの絵を見よう!」
講師:川原百合恵(芦屋市立美術博物館学芸員)
2023年5月5日(金・祝)14:00-15:00
会場:芦屋市立美術博物館 展示室
対象:中学生以下 ※申込不要

Copyrighted Image