第24回中之島映像劇場「ケアする映画をたどる」@ 国立国際美術館


《おてんとうさまがほしい》撮影風景 写真提供:マザーバード

 

第24回中之島映像劇場「ケアする映画をたどる」
2023年3月18日(土)、3月19日(日)
国立国際美術館 地下1階講堂
https://www.nmao.go.jp/
定員:100名(先着順)
上映会担当:田中晋平(国立国際美術館 客員研究員)
上映会URL:https://www.nmao.go.jp/events/event/theater_024/

 

「美術と映像」の歴史的な変遷を探り、映像における現代の状況を考察する中之島映像劇場。第24回中之島映像劇場では、3月18日、19日の二日間にわたり、「ケア」という主題から戦後日本のドキュメンタリー映画に流れる水脈に光をあてたプログラムを上映を通じて、単なる介護や福祉の場の記録ではなく、映画がどのようにケアの空間に寄り添い、容易に答えの出ない問いと向かい合ってきたかを考える機会を提供する。

「care(ケア)」は、健康に対する配慮やそのための手助けといった行動を指すが、それは看護や介護、福祉、保育の現場のみならず、生存に関与するあらゆる空間で実践されている。また、地域や社会のなかで孤立し、苦しみを抱えるケアの受け手と与える者との繋がりは、既存の人間関係に縛られない、新たな共同性を創発することさえもある。ケアの思考は、個人の判断と責任が強く求められる現代の社会状況で、生の営みがいかに多様なアクターとの連関のなかで支えられているかを喚起する。

本上映ではケアの概念をそのように捉え、過去の記録映画の取り組みをたどる導きの糸にする。本上映の上映作品《夜明け前の子どもたち》(Dプログラム)や《そっちやない、こっちや ―コミュニティ・ケアへの道―》(Eプログラム)を含む「福祉五部作」と呼ばれる映画を手がけるなど、福祉映画の巨匠として知られる柳澤壽男は、かつて「撮りながら考え、考えながら撮る」と述べた。ケアの概念に着目するとき、優れたドキュメンタリーには、制作過程で試行錯誤しながら、「ケアとは何か」を問い直してきた痕跡が認められるのではないだろうか。

 


《夜明け前の子どもたち》写真提供:国立映画アーカイブ

 

3月18日の上映作品は、日本の女性映画監督の先駆者、記録映画の第一人者として知られる羽田澄子が、認知症高齢者と介護スタッフの日常を追い、到来しつつある高齢化社会における老いのあり方を問いかけた《痴呆性老人の世界》(Aプログラム)、映画照明技師の渡辺生が、アルツハイマー病を患う妻を記録しつづける過程で、病院関係者や患者の家族も撮影し、老人医療・看護の現場が抱える問題や患者を支える家族の問題、地域の福祉に関する問題などを捉えて編集した素材を、ドキュメンタリー映画作家の佐藤真が構成、編集した《おてんとうさまがほしい》(Bプログラム)、佐藤真自身が自分の娘が通う保育園の様子を記録した私家版ドキュメンタリー《保育園の日曜日》(Bプログラム)、​​時枝俊江が東京都中野区の幼稚園の年長組の子どもたちの様子を記録した《子どもをみる目 ―ある保育者の実践記録から―》(Cプログラム)、同じく時枝が東京都目黒区の幼稚園で撮影した入園から夏休みまでの記録《ともだち》(Cプログラム)。

3月19日の上映作品は、柳澤壽男が日本初の重症心身障害児施設「びわこ学園」を舞台にその療養活動を記録した《夜明け前の子どもたち》(Dプログラム)、愛知県知多市の療育グループの障害者や親たちの交流、「家」づくりの困難、作業所「ポパイノイエ」を完成する様子を丹念に記録した《そっちやない、こっちや ―コミュニティ・ケアへの道―》(Eプログラム)、養護学校教育の義務制が開始される1979年1月に、文部省前に義務化を阻止しようと集まった障害者当事者を中心とする人たちの6日間の記録を大石十三夫山邨伸貴が構成した《養護学校はあかんねん! ‘79.1.26ー31文部省糾弾連続闘争より》(Fプログラム)。

 

上映スケジュール
※参加無料・全席自由・先着100名、各プログラム入れ替え制、各日10:00から当日の各プログラムの整理券を配布(1名につき1枚)

2023年3月18日(土)
Aプログラム 13:00- ※冒頭、担当者による解説あり
《痴呆性老人の世界》(16mm/1986年/84分)※国立映画アーカイブ蔵
※作品タイトルは、オリジナルを尊重して、そのまま記載。
Bプログラム 15:30-
《おてんとうさまがほしい》(16mm/1994年/47分)
《保育園の日曜日》(デジタル上映【原版:16mm】/1997年/20分)
Cプログラム 17:30-
《子どもをみる目 ―ある保育者の実践記録から―》(16mm/1978 年/45 分)※国立映画アーカイブ蔵 ※褪色したプリントでの上映
《ともだち》(デジタル上映【原版:35mm】/1961年/59分)

2023年3月19日(日)
Dプログラム 10:30- ※冒頭、担当者による解説あり
《夜明け前の子どもたち》(16mm【原版:35mm】/1968年/116分)※国立映画アーカイブ蔵
Eプログラム 13:30-
《そっちやない、こっちや ―コミュニティ・ケアへの道―》(16mm/1982年/110分)※国立映画アーカイブ蔵
Fプログラム 15:50-
《養護学校はあかんねん! ‘79.1.26ー31文部省糾弾連続闘争より》(16mm/50分/1979年)※神戸映画資料館蔵

 


同時開催
ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展
2023年2月4日(土)– 5月21日(日)
国立国際美術館 地下3階展示室
https://www.nmao.go.jp/events/event/20230204_berg/

コレクション2 特集展示:メル・ボックナー
2023年2月4日(土)– 5月21日(日)
国立国際美術館 地下2階展示室
https://www.nmao.go.jp/events/event/collection20230204/

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