αMプロジェクト2022


design : 大西正一

 

武蔵野美術大学が運営するgallery αMは、2022年度のαMプロジェクトのゲストキュレーターに豊田市美術館学芸員の千葉真智子を迎えて、「判断の尺度」をテーマに5組の作家による5つの展覧会を開催する。

αMプロジェクトでは、「ジャンルを問わず質の高い表現と可能性を有するアーティストに作品発表の機会を提供すること」と「社会に斬新な価値を発信できるキュレーターに展示企画の場を提供すること」をコンセプトに、武蔵野美術大学の教員で構成される運営委員会によって選ばれたゲストキュレーターが年間5~7回程度の連続する展覧会を企画している。2022年度のゲストキュレーターとなる千葉真智子(愛知県生まれ)は、これまでに学芸員を務める豊田市美術館で、『寺内曜子 パンゲア』(2021)、『岡﨑乾二郎 視覚のカイソウ』(2019)、『切断してみる。 ― 二人の耕平』(2017)を担当したほか、『遠隔同化 二人の耕平』『「切断」のち「同化」』(ともにKYOTO ART HOSTEL kumagusuku、2016–2017)、『ほんとの うえの ツクリゴト』(岡崎市旧本多忠次邸、愛知、2015)、『ユーモアと飛躍 そこにふれる』(岡崎市美術博物館、愛知、2013)などを企画している。また、デザイン・装飾芸術に関する展覧会も手がけ、本年度は豊田市美術館で『交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー』の担当を予定している。2022年度のαMプロジェクトでは「判断の尺度」をテーマに掲げ、公式ウェブサイトに次のようなテキストを寄せている。

 

全ては平等に。その呼びかけは、平等であるために過度なまでの正しさを私たちに求める。しかし正しさとはそもそも何だろう。それはときに一つの原理へと向かい、小さな個別の差異を見えなくしてしまうだろう。いうまでもなく、平等であることは同じであることを意味しない。同じでないものを等しいというとき、私たちは尺度を一つにして、個々についてのそれぞれの評価や判断を手放さなければならないのだろうか。そうではなく正しさを超えて区別し、言葉を与えようとすること。それには、私たちが手垢のついた言葉自体を作り直す必要がある。美術と呼ばれるものが少なくとも造形に関わる行為であるならば、その造形=言葉を練り、拠り所にすることで、尺度自体について問い、判断自体を創造的に作ることができるのではないだろうか。独りよがりになることなく、普遍的な外部をもつものとして。

私の判断が普遍性をもつかどうかは他者の判断に賭されている。私の判断を支えるものとして、私の外部を召喚すること。そこで想定されるのは、予め同じ尺度を持たないもの、置き換えできないものであり、その困難な対話が新たな言葉と批評を開く可能性の種となる。

1年の企画をとおして、それぞれの作家とともに判断の尺度について考えてみたい。これまでの尺度を手放して作り直す。この造形=言葉による判断は、世界を測る尺度となる。だからこの行為は、静かに深く政治的でもある。

 

 


αMプロジェクト2022 判断の尺度(企画:千葉真智子)

vol.1|髙柳恵里
2022年4月16日(土)- 6月10日(金)
vol.2|加藤巧
2022年6月18日(土)- 8月6日(土)
vol.3|荒木優光
2022年8月27日(土)- 10月15日(土)
vol.4|大木裕之
2022年10月29日(土)- 12日17日(土)/23日(金)
vol.5|高嶋晋一+中川周
2023年1月14日(土)- 3月11日(土)

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