シアターコモンズ’22

シアターコモンズ’22
2022年2月19日(土)- 2月27日(日)
東京都港区エリア各所およびオンライン
https://theatercommons.tokyo/
参加アーティスト:キュンチョメ、ボーハールト/ファン・デル・スホート、市原佐都子(Q)、シュウ・ツェユー、モニラ・アルカディリ&ラエド・ヤシン、佐藤朋子、Reframe Lab ほか
チケット購入について:https://theatercommons.tokyo/ticket/

 

演劇の「共有知」を活用し、社会の「共有地」を生み出すプロジェクトとして、演劇公演やレクチャーパフォーマンス、体験型アート、ワークショップなどを展開するシアターコモンズ’22が、2022年2月19日より、東京都港区エリア各所およびオンラインにて開幕する。昨年に続き、本年度もSHIBAURA HOUSEをはじめとする東京都港区エリア各所とオンラインの両方での開催となり、どちらも参加可能な「コモンズパス」のほか、オンラインのみの参加に対応した「リモートパス」が販売される。

6回目の開催となる本年度のテーマは、「非同期することばたち – Unsynchronized Voices」。ウイルスを管理するという名目で、人間や動物の生体を徹底的に管理していくシステムから逃れることが難しい状況下、シアターコモンズは、「感染拡大防止」「コロナとの戦い」という単一の物語にまとめられてしまう声や語りを非同期状態に戻すために、パンデミックの強制同期をすり抜け、それぞれの戦略のもと「非同期することばたち」を編み上げるアーティストとその作品を編成する。

 


ボーハールト/ファン・デル・スホート《動かない旅》Image: Rodrik Biersteker


市原佐都子《妖精の問題-デラックス》


モニラ・アルカディリ《吊り狂い》©Frederic Duval

 

オンラインによるレクチャー・パフォーマンスという形式で初日を飾るのは、20年にわたり舞台芸術・視覚芸術・社会実験の境界をラディカルに越境するパフォーマンスを続けてきた、オランダを拠点に活動するアート・ユニットのボーハールト/ファン・デル・スホート。2021年夏のオランダ・フェスティバルで「夢見による治癒=インキュベーション」に焦点を当て、30体の人形とそのケアラーが展開する儀式としてのヒーリングパフォーマンスを発表したアート・ユニットは、今回、シアターコモンズからの委嘱を受けて、古代文明から現代の若者文化に至るまで、古今東西のヒーリング実践をフェミニズムの地点から読み解き直す、膨大なリサーチを展開し、パンデミック時代の治癒儀礼演劇の可能性を提示する新作《動かない旅》を発表する。続く2月20日から24日までリーブラホールで上演される市原佐都子の《妖精の問題 デラックス》は、2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件をきっかけに、市原が自身のなかに存在する優生思想や日本社会での生き辛さを直視し創作した代表作。2017年に初演した同作をロームシアター京都の製作により再創作し、2022年1月に初演したばかりの作品が東京でも披露される。市原の《妖精の問題 デラックス》と同じく現地会場のみで鑑賞可能な作品となるのが、SHIBAURA HOUSEで2月21日から24日まで上演されるクウェート出身のモニラ・アルカディリとレバノン出身のラエド・ヤシンによるロボット人形劇《吊り狂い》。コロナ危機におけるロックダウン、ヤシンの故郷ベイルートで起きた2020年8月の大爆発など、隔離された空間で極限状態に追い詰められたふたりの対話から生まれた本作では、メディア・アーティストの菅野創がロボットシステム開発を手がけ、アルカディリとヤシンのふたりと飼い猫の頭部を模した3体のロボットが、コロナ禍で錯乱する会話を断片的かつ詩的に語る。

 


シュウ・ツェユー《彼・此―かれ/これのこと》


佐藤朋子《オバケ東京のためのインデックス-第一章》©︎シアターコモンズ ’21/撮影:佐藤駿

 

台北駐日経済文化代表処台湾文化センターでは、2月21日から25日にかけて、マルチメディア・テクノロジーを活用し新たな映像表現を開拓する台湾出身のアーティスト、シュウ・ツェユーの最新作《犯罪現場の再現》を含む3本の映像作品を上映。さらに、動物と人間の関係性を創作のモチーフとして取り組むシュウは、両者の接触面に派生する事象をリサーチした成果を、独自の映像を交えたオンライン・レクチャー《彼・此―かれ/これのこと》として最終日の2月27日に発表する(ゲーテ・インスティトゥート東京でのリモート上映およびリモート参加有)。そして、会期終盤の2月26日、27日には、シアターコモンズから委嘱を受け、港区エリアをフィールドとする長期的なリサーチと創作に取り組む佐藤朋子がレクチャーパフォーマンス《オバケ東京のためのインデックス 第一章》をSHIBAURA HOUSEで上演(リモート参加有)。1957年に岡本太郎が記した都市論「オバケ東京」を起点とし、映画『ゴジラ』や如月小春の戯曲を引用、戦後の東京と現在の接続を試みた前回の「序章」に続き、本作では「第一章」として、都市で移ろいゆくものたち、「オバケ」に象徴される非人間的な存在をも招き入れながら、新たな都市論を生み出す(前作は恵比寿映像祭にて映像インスタレーション版として発表)。

 


キュンチョメ《女たちの黙示録》

 

また、シアターコモンズ’22では、会期中、郵送と各会場での配布という形式を採ったキュンチョメの《女たちの黙示録》を展開する。これまでに神話や予言(預言)の書、SFなどで描かれてきた世界の終焉のほとんどが男たちによって書き記されたものだったという前提に立ち、キュンチョメは、では今、女たちが「世界の終わり」を予言するとしたら、どんな終焉が描かれるのだろうかと問い、異なる立場や背景を持つ女性たちの声に耳を澄ませ、そこから生み出された予言を、観客へと配布する。本作は受け取り後、3月31日(木)23:59まで好きな場所、タイミングでの鑑賞が可能となる。そのほか、人々の豊かな想像力を育む「あそび」や「まなび」を通して、アート、教育、医療、福祉をつなぐプラットフォームReframe Labとシアターコモンズが共同開発したワークショップ《『名もなきあそび』をつくるワークショップ》は、ゲーテ・インスティトゥート東京(2月23日)と、芝浦区民協働スペース(2月27日)で実施(参加申込方法は公式ウェブサイトを参照)。中日となる2月23日には、コモンズ・フォーラム#1「非同期することばたち──非同期的ドラマトゥルギーはいかに生成するのか」、最終日の2月27日には、コモンズ・フォーラム#2「パンデミック時代に問い直す、世界の複数性──シアターコモンズ’22から世界演劇祭’23へ」を開催する。

 


Reframe Lab《名もなきあそびをつくるワークショップ》photo: ただ(ゆかい)


ウェン・ホイ《I am 60》photo by Li Yinjun

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