ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術 @ 愛知県美術館


ドロテ・フィッシャーとコンラート・フィッシャー 1969 年 Photo: Gerhard Richter

 

ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術
2022年1月22日(土)- 3月13日(日)
愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
https://www-art.aac.pref.aichi.jp/
開館時間:10:00-18:00(金曜は20:00まで)入場は閉館30分前まで
休館日:月
担当学芸員:黒田和士(愛知県美術館学芸員)
中野悠(愛知県美術館学芸員)

 

愛知県美術館では、1960-70年代に台頭した新しい美術動向の国際的な展開において重要な役割を果たしたドロテ&コンラート・フィッシャー夫妻の活動に着目し、同時代のミニマル・アートとコンセプチュアル・アートを振り返る展覧会『ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術』を開催する。

コンラート・フィッシャー(1939–1996/デュッセルドルフ生まれ)と、ドロテ・フィッシャー(1937–2015/ヴッパタール生まれ/旧姓:フランケ)は、1967年にデュッセルドルフに約3m×11mの小さな画廊「Ausstellungen bei Konrad Fischer(コンラント・フィッシャーでの展覧会)」(現・コンラート・フィッシャー・ギャラリー)を開廊する。フィッシャー夫妻は、アメリカ合衆国やヨーロッパの若いアーティストたちにコンタクトを取りながら、完成した作品を高い費用をかけて輸送するのではなく、アーティスト本人をデュッセルドルフに招いて現地での制作を依頼したり、アーティストが記した制作指示書に基づいて、フィッシャーや職人、エンジニアなどが制作と展示設営を遂行したりする方法で展覧会を実現していった。ふたりは、展覧会を手がけた作家たちの作品を蒐集し、同時に書簡や指示書、展示のためのドローイングといった資料を記録、保管しており、現在、そのコレクションはデュッセルドルフのノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館に収蔵されている。

 


ソル・ルウィットの展覧会「4つの壁の4つの縁から生じる線」の招待状 1975年 ノルトライン゠ヴェストファーレン州立美術館 ©2021 The LeWitt Estate; Photo: Achim Kukulies, Düsseldorf


ソル・ルウィット《隠された立方体のための提案》 制作年不詳 ノルトライン゠ヴェストファーレン州立美術館 ©2021 The LeWitt Estate; Photo: Achim Kukulies, Düsseldorf

 

同画廊で最初の展覧会を行なったのは、カール・アンドレ。アンドレは工業用に生産された金属の板やブロックを素材に作品を制作、誰でもたやすく解体や再構成ができる作品は、従来の作品や作家の地位を大きく揺るがすものだった。同様に、ダン・フレイヴィンも既製品の蛍光灯を素材にして、直観的な判断が入り込む余地を排除した制作を試みている。直観的な色彩やフォルムの配置、絵具に残された身振りの痕跡といった作家の個性を示すような表現性を捨て去り、幾何学的で単純なかたちの絵画や彫刻がつくられた、こうした新たな動向は、批評家たちによってミニマル・アートと呼ばれることになる。

また、1967年に「コンセプチュアル・アートに関する断章」というテキストを発表して、作品の構成を決定するコンセプトの重要性を説いたルウィットの1975年の個展では、壁面ドローイングの方法などを記した制作指示書を作成し、技術者が作品を実現した。物理的な作品よりもコンセプト自体を重視していく態度は、数字の計算という思考の過程を提示するハンネ・ダルボーフェンや、起床時間を記した絵葉書を知人に毎日送り続けた河原温にも認められる。ギルバート&ジョージは、自らを「生きた彫刻」とみなして、自分たちの日常それ自体がアートであると考えた。

本展では、上述したアーティストを含む全18名の活動により、ノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館の全面的な協力のもと、フィッシャー・ギャラリーが保管していた貴重な作品や資料、ならびに日本国内に所蔵される主要な作品を通じて、1960-70年代のミニマル・アートとコンセプチュアル・アートを振り返る。

 


フィッシャー・ギャラリーにおけるソル・ルウィット《隠された立方体のある立方体》の展示 1968年 Photo: Fred Kliché


ギルバート&ジョージ《アーチの下で(ボックス)》1969年 ノルトライン゠ヴェストファーレン州立美術館
©2021 Gilbert & George; Photo: Achim Kukulies, Düsseldorf

 

出品作家(予定)
カール・アンドレ、ダン・フレイヴィン、ソル・ルウィット、ベルント&ヒラ・ベッヒャー、ハンネ・ダルボーフェン、河原温、ロバート・ライマン、ゲルハルト・リヒター、ブリンキー・パレルモ、ダニエル・ビュレン、リチャード・アートシュワーガー、マルセル・ブロータース、ローター・バウムガルテン、リチャード・ロング、スタンリー・ブラウン、ヤン・ディベッツ、ブルース・ナウマン、ギルバート&ジョージ

 

関連イベント
スライドトーク(学芸員による展示説明会)
2022年1月29日(土)、2月6日(日)、2月26日(土)各回11:00–11:40
2022年2月18日(金)各回18:30–19:10
会場:愛知県美術館 アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
定員:各回90名
※※申込不要・聴講無料、開始時刻に会場に集合

 


巡回情報
DIC川村記念美術館
2021年10月9日(土)– 2022年1月10日(月・祝)

兵庫県立美術館
2022年3月26日(土)– 5月29日(日)

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