佐藤雅晴 尾行−存在の不在/不在の存在 @ 大分県立美術館


佐藤雅晴《ガイコツ》2018年

 

佐藤雅晴 尾行−存在の不在/不在の存在
2021年5月15日(土)- 6月27日(日)
大分県立美術館 1階 展示室A
https://www.opam.jp/
開館時間:10:00-19:00(金曜、土曜は20:00まで)入場は閉館30分前まで
休館日:会期中無休
企画担当:宇都宮壽(大分県立美術館学芸企画課長)、吉田浩太郎(大分県立美術館主幹学芸員)

 

大分県立美術館では、ビデオカメラで撮影した日常の風景をパソコンソフトのペンツールでトレースする「ロトスコープ」技法によるアニメーションで知られた佐藤雅晴が、ドイツ時代から2019年に45歳の若さで亡くなるまでに手がけた制作の全貌を紹介する展覧会『佐藤雅晴 尾行−存在の不在/不在の存在』を開催する。

佐藤雅晴(1973年大分県生まれ)は、1999年に東京藝術大学大学院を修了したのちに渡独。ドイツ国立デュッセルドルフ・クンストアカデミーにガストシューラー(研究生)として在籍した2年間を含む10年あまりをデュッセルドルフを拠点に活動した。試行錯誤を重ねつつ、前述した手法にたどり着き、アニメーションや平面作品の制作をはじめる。ドイツ滞在中の2009年に第12回岡本太郎現代芸術賞で特別賞を受賞。2010年に日本に帰国し、茨城県取手市を拠点に移した佐藤だが、同年に癌を発症し、手術を受ける。一方、2000年代後半より発表機会を順調に重ね、2013年に川崎市市民ミュージアムとギャラリーαM、2016年には原美術館、2017年にはシドニーのアーティスト・ラン・スペース「Firstfraft Gallery」で個展を開催している。2019年には『六本木クロッシング2019展:つないでみる』に出品、KEN NAKAHASHIにて個展『死神先生』を開催するなかで、3月9日に他界。死後もなお、ヨコハマトリエンナーレ2020や国際交流基金主催のオンライン展覧会『距離をめぐる11の物語:日本の現代美術』などで出品が続いている。

 


佐藤雅晴《東京尾行》2015-2016年


佐藤雅晴《I touch Dream #1》1999年

 

自動演奏のピアノがドビュッシーの「月の光」を奏でるなか、12台のモニターに実写映像とアニメーションを合わせた90の場面の映像が流れる《東京尾行》は、2000年に発見された癌が再発し、その治療で入院した時期を挟んで制作された佐藤の代表作。本展『佐藤雅晴 尾行−存在の不在/不在の存在』は、現前に映る事物の実在感とともに、目には見えなくとも、私たちがどこかで感じている生の不確かさや儚さなどを捉える佐藤の作品世界を最も鮮明に映したといえる同作からはじまり、佐藤の制作活動の全貌をドイツ時代から時系列でたどる5つの章へと続いていく。

第1章ではドイツ時代を取り上げ、佐藤が「ロトスコープ」技法で初めて手がけたアニメーション《TRAUM》(2004-2007)や、友人をモデルにした11人の若者がゆっくりと振り向いて顔を見せ、またゆっくりと向こう側に顔を向ける様子が繰り返される《アバター11》(2009)などの映像作品のほか、ドイツの街で見かけた風景を題材にした平面作品を紹介する。続く第2章では、日本に帰国し、自身の癌の発見、手術やパートナーのくも膜下出血、そして、東日本大震災など、さまざまな出来事に見舞われる一方で、制作活動において国内外での発表機会が増えていった時期を取り上げる。新たな活動拠点となった取手市の情景を舞台に天使と悪魔の姿をした男女が織りなすメロドラマを描いた《バインド・ドライブ》(2010-2011)、東日本大震災で被害を受けながらも復活した福島の蒲鉾製造工場の伊達巻製造の様子を題材にした《ダテマキ》(2013)などを展示する。

第3章では、2009年にドイツ編、2014年に日本編に手がけたアニメーション《Calling》に焦点を当てる。いずれも実写映像をもとに制作したアニメーションで、持ち主不在で鳴り続ける携帯電話や主不在の部屋に鳴り続ける固定電話は、人の移ろいゆくさまやいずれは消えゆく人間の定めを暗示しているようにも、逆に、持ち主不在の携帯電話や主不在の固定電話に鳴り続ける着信音は、物体としては消えてしまった誰かが、この世につながるために架電しているようにも感じられる。第4章は、帰国後に入退院を繰り返すなど病と戦うなかで、身の回りにある情景や事物に目を向けて制作した作品を紹介。自宅から見える木々が時間の経過に伴って、刻々と表情を変えていくさまを描いた8枚組の作品《Garden#1~8》(2013)や、自宅の浴槽を描いた《RYG》(2014)などの平面作品、33種類の「手」を描いた映像作品《Hands》(2017)などを展示する。

 


佐藤雅晴《バインド・ドライブ》2010-2011年


佐藤雅晴《Calling(ドイツ編)》2009-2010年

 

第5章では、JR常磐線富岡(福島県富岡町)ー 竜田(同楢葉町)間の運転再開を報じる2017年10月の新聞記事を目にしたことをきっかけに、半年の間に福島を数回訪れ、制作した《福島尾行》(2018)を紹介する。ライフワークのようなかたちでじっくりと撮影し、描こうと望みながらも、制作途中に余命3ヶ月の宣告を受けたことで、当初の予定を変えて、生きている間に完成することを目指した同作は、自然の脅威や原発事故によって姿を変えさせられてしまった福島の姿の記録であると同時に、画面に不在の人々の姿や暮らしを観客に想起させる。エピローグでは、病気の進行により活動範囲が限られた最晩年に手がけた「死神先生」シリーズを紹介。佐藤の代名詞ともいえる「ロトスコープ」技法によるアニメーションとは異なり、目の前にあるものを絵筆で描いた9点のアクリル画と1点のオブジェクトで構成されている。

 


佐藤雅晴《福島尾行》2018年

 

関連イベント
トークイベント「佐藤雅晴 尾行」
登壇者:佐藤霧子(クリエイティブディレクター)
藤堂(アーティスト)
中橋健一(KEN NAKAHASHI代表)
2021年5月15日(土)13:30-15:00
会場:大分県立美術館 1階 アトリウム
定員:100名
無料(要事前申込)
※申込方法は下記URLを参照
https://www.opam.jp/events/detail/948

トークイベント「佐藤雅晴作品にみる『メメント・モリ』」
登壇者:占部まり(宇沢国際学館代表取締役、日本メメント・モリ協会代表理事)
中橋健一(KEN NAKAHASHI代表)
2021年5月16日(土)13:30-15:00
会場:大分県立美術館 1階 アトリウム
定員:100名
無料(要事前申込)
※申込方法は下記URLを参照
https://www.opam.jp/events/detail/949

学芸員によるギャラリートーク
展覧会会期中の土曜日(5月15日を除く)14:00-15:15
会場:大分県立美術館1階 展示室A
無料(要展覧会観覧券)
※申込不要

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