
東京都写真美術館は、総合開館30周年を記念し、2025年10月9日から11月2日にかけて、連続トークセッション「写真・映像とこれからの30年」を開催する。1995年の総合開館以来、写真と映像を中心とした文化交流の拠点として活動を続けてきた同館が、国内外の専門家を招き、これからの30年を多角的に考察する。
初回の10月9日には、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のシニアキュレーター、ロクサーナ・マルコチが登壇。これまで手がけた「ラトーヤ・ルビー・フレイジャー」(2024)、「アン・ミー・レ―」(2023)、「ヴォルフガング・ティルマンス」(2022)などの展覧会を振り返りつつ、MoMAの活動方針や今後の展望について語る。続く10月17日には、恵比寿映像祭のディレクターを長く務め、現在は東京都現代美術館学芸員の岡村恵子が、2009年に始まった恵比寿映像祭の立ち上げ経緯や変遷をたどりながら、映像文化の変化と社会的意義を検討する。
10月18日には、「アジアからの視点:写真史を複数化し再構成する」と題したセッションに、写真史家のチェン・ジャ・チー[陳佳琦]とナショナル・ギャラリー・シンガポールのキュレーター、ウー・スー・イン[吳詩瀅]が登壇。台湾とシンガポールにおける実践をもとに、国境を越えた写真史の再構築を試みる。10月25日には、「写真を満喫するメソッド~技術と歴史」をテーマに、日本写真芸術学会会長の高橋則英と日本大学芸術学部准教授の鳥海早喜が登壇。写真美術館で開かれた初期写真展を手がかりに、写真の技術的発展をふり返りながら、200年に及ぶ歴史からどのような特質を引き継いでいけるのかを考える。
11月1日には、長野県立美術館長の笠原美智子が「公立美術館における写真表現の可能性」をテーマにトーク。東京都写真美術館の準備室時代から関わってきた自身の経験をもとに、公立美術館が写真作品をコレクションする意義と課題を語る。最終回となる11月2日には、「美術館のコレクション・ケア:レジストラーと美術輸送の視点から見るコレクションの現在とこれから」を開催。国立国際美術館主任研究員の小川絢子、国立西洋美術館主任研究員の筧奈雅子、ヤマト運輸(美術)スペシャルアドバイザー/コンサヴァターの相澤邦彦が登壇し、作品保存や輸送の現場から、コレクション管理の今後を探る。
また、10月19日と26日には、同館で2026年1月7日まで開催中の展覧会「遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」に関連したトークイベントを実施する。19日には出品作家のスクリプカリウ落合安奈と岡ともみが、京都芸術大学教授で批評家の竹内万里子と対談。26日には、出品作家の甫木元空の作品上映後、インタビュアーの尹雄大とのアフタートークが行なわれる。
総合開館30周年記念|トークセッション
写真・映像とこれからの30年
2025年10月9日(木)-11月2日(日)
会場:東京都写真美術館 1階ホール
定員:190名(整理番号順入場/自由席)
参加費:無料
※当日10:00より1階総合受付にて整理券を配布
イベントURL:https://topmuseum.jp/contents/exhibition/movie-5288.html
プログラム
ロクサーナ・マルコチ(ニューヨーク近代美術館キュレーター)
2025年10月9日(木)14:00–16:00
モデレーター:丹羽晴美(東京都写真美術館学芸員)
恵比寿映像祭と変わりゆく映像体験
2025年10月17日(金)18:00–19:30
登壇:岡村恵子(東京都現代美術館学芸員)
モデレーター:田坂博子(東京都写真美術館学芸員)
アジアからの視点:写真史を複数化し再構成する
2025年10月18日(土)14:30–16:30
登壇:チェン・ジャ・チー[陳佳琦](写真史家)、ウー・スー・イン[吳詩瀅](ナショナル・ギャラリー・シンガポール キュレーター)
モデレーター:遠藤みゆき(東京都写真美術館学芸員)
総合開館 30周年記念 「遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」展 関連事業
出品作家とゲストによるトーク
2025年10月19日(日)14:00–15:30
登壇:竹内万里子(批評家・作家、京都芸術大学教授)、スクリプカリウ落合安奈(出品作家)、岡ともみ(出品作家)
モデレーター:大﨑千野(東京都写真美術館学芸員)
写真を満喫するメソッド~技術と歴史~
2025年10月25日(土)16:00–17:30
登壇:高橋則英(日本写真芸術学会会長)、鳥海早喜(日本大学芸術学部准教授)
モデレーター:三井圭司(東京都写真美術館学芸員)
総合開館 30周年記念 「遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」展 関連事業
出品作家 甫木元空による上映 《はだかのゆめ》アフタートーク
2025年10月26日(日)14:00–
登壇:甫木元空(出品作家)、尹雄大(インタビュアー)
モデレーター:大﨑千野(東京都写真美術館学芸員)
公立美術館における写真表現の可能性
2025年11月1日(土)14:30–16:30
登壇:笠原美智子(長野県立美術館長)
モデレーター:丹羽晴美(東京都写真美術館学芸員)
美術館のコレクション・ケア:レジストラーと美術輸送の視点から見るコレクションの現在とこれから
2025年11月2日(日)14:30–16:30
登壇:小川絢子(国立国際美術館主任研究員レジストラー)、筧奈雅子(国立西洋美術館主任研究員)、相澤邦彦(ヤマト運輸(美術)スペシャルアドヴァイザー/コンサヴァター)
モデレーター:堀田文(東京都写真美術館レジストラー)