独立行政法人国立美術館が国立アートリサーチセンターを新設


国立アートリサーチセンター ウェブサイトより

 

2023年3月8日、文化庁が所管する独立行政法人国立美術館(理事長:逢坂惠里子)は、日本におけるアート振興の基盤整備と国際発信に持続的に取り組む日本初の総合的な専門組織「国立アートリサーチセンター」(センター長:片岡真実)を、3月28日に同法人内に設立することを発表した。

文化庁では、2018年度から、日本の現代アートの持続的発展を目指し、国際的な評価を高めていく取り組みを推進する「文化庁アートプラットフォーム事業」を5年間継続し、日本の現代アートの情報プラットフォームとして「アートプラットフォームジャパン」を構築・運営した。同事業では、①国内外の美術研究者等が特定の作家について調査・研究し、作品の所在情報を収集することを可能にする、日本国内の登録博物館、博物館相当施設等が収蔵する美術品の検索システム「全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」」、②日本の現代アートの国際的な研究喚起を目的とした「日本の現代アートに関する未英訳の重要なテキストの新訳・公開」、③国内外の美術館等で行なわれた現代美術展の開催記録、日本の画廊に関する調査・研究を行なう「リサーチプロジェクト」の3つを軸に日本における現代アートの今後の発展に向けた土台づくりを進めてきた。

 


独立行政法人国立美術館・国立アートリサーチセンター 組織図

 

同事業の成果を継承・発展させる拠点として新設される国立アートリサーチセンターは、「アートをつなげる、深める、拡げる」をキーワードに、専門領域の調査研究(リサーチ)に留まらず、広く社会と連携しながら、「美術館コレクションの活用促進(作品活用促進グループ)」「情報資源の集約・発信(情報資源グループ )」「海外への発信・国際ネットワーク(国際発信グループ)」「ラーニングの充実(ラーニンググループ)」を推進し、日本の美術館活動全体の充実を目指す。

作品活用促進グループ(リーダー:大谷省吾)では、地域におけるアートの鑑賞機会の充実と美術館の展示・調査研究活動の活性化に貢献することを目的として、全国の美術館等と協働し、国立美術館のコレクションを活用した連携事業を準備。また、作品の保存修復の取り組みや調査研究の情報発信を進めていく。

情報資源グループ(リーダー:川口雅子)では、前述した「全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」」の継承、国際的リサーチセンター機能に向けた活動、メディア芸術データベースの継承を行なっていく。

国際発信グループでは、日本のアートに関する文献の翻訳・発信、海外の専門家を招待したワークショップ等による国際的な人的ネットワークの構築、現存作家の国際発信を支援する活動を推進していく。

ラーニンググループ(リーダー:一條彰子)では、人々の健康や幸福に関わるアートの機能に注目し、福祉・医療分野の機関や大学等と連携して調査研究を実施、また、だれもが美術館やアートとの関わりができるよう現状の課題を調査し、アクセシビリティを向上する資料やツールなどの開発に取り組んでいく。

センター長を務める片岡真実(森美術館館長)は、「世界の政治、経済、社会が複雑さや不確実性を増し、包摂性、ダイバーシティ、サステナビリティなどの追求が分野を超えた地球規模の喫緊の課題となっています。美術や美術館を取り巻くグローバルな動向を踏まえ、我が国のアートが持続的に発展していくために、アートを社会にますます広く浸透させ、同時に専門性を深めるためのプラットフォームとして、国立アートリサーチセンターの活動はこれから始まるところです。さまざまな声を反映し、学びと議論を重ねながら、日本のアート振興のために何ができるのか、みなさんとともに考えて参りたいと思います」とコメントを寄せた。ただし、職員数は26名と全事業の規模に比べると少なく、そこにはセンター長を務める片岡や、作品活用促進グループのリーダーを務める大谷省吾(東京国立近代美術館副館長)といった兼職も含まれる。現在、国際発信・国際連携業務に携わる主任研究員および任期付研究員を募集している。

 

独立行政法人 国立美術館 国立アートリサーチセンター
(Independent Administration Institution National Museum of Art
National Center for Art Research[NCAR])

https://ncar.artmuseums.go.jp/
所在地:東京都千代田区九段北1-13-12 北の丸スクエア2階

 

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