国内外在住のアーティスト10名がアーティスツ・ユニオン結成(2月24日記者会見)


「アーティスツ・ユニオンについて」アーティスツ・ユニオン公式ウェブサイトより

 

2023年2月24日、国内外在住のアーティスト10名によって結成された労働組合アーティスツ・ユニオンの記者会見がオンラインにて開かれた。

アーティスツ・ユニオンは、誰でもひとりから加入できる労働組合として結成されたプレカリアートユニオンの支部として、2023年1月19日に結成。記者会見で現メンバーにより輪読されたアーティスト・ユニオン結成に関する宣言文にあるように、アーティストが主体的に声を上げ、連帯し、「美術業界に関わる誰しもが尊重される平等で公平な労働環境の実現」を目指す。

宣言文に続き、村上華子(支部長)、藤井光、湊茉莉(副支部長)、川久保ジョイ(⽀部書記⻑)のヨーロッパ在住者を中心としたメンバー4名が、それぞれが経験した事例や活動拠点のフランスやイギリスとの比較などを踏まえながら、文化芸術に従事するためのより良い環境を求めて拠点を海外へと移す「文化移民」、諸外国のユニオンの事例、雇用や契約における交渉、法律や公共政策の意思決定プロセスへの関与などについて説明し、ユニオン結成の背景と経緯を語った。今後、アーティスツ・ユニオンでは、「アーティストの報酬ガイドライン」「アーティストの倫理ガイドライン」「アーティストの労災ガイドライン」の策定を進め、ひとつひとつ問題定義、団体交渉し、権利の獲得を目指していく。

そのほか、加藤翼は2014年に展示作業中に不慮の事故で亡くなった國府理の事例をあげながら、労災を含む労働者としての権利の拡張を唱え、飯山由貴は昨年の東京都⼈権プラザの企画展におけるレイシズムと検閲による作品上映禁止に対する東京都との交渉をユニオンとして他団体と連携しながら進めると発言。山本高之は2019年のアーツ前橋での個展の際に起きた館長らが主導した学芸員ぐるみでの虚偽の報告により、行政による「契約不履行」の経験を踏まえ、美術館や学芸員、アートプロジェクト関係者の最低限の倫理を問うアクションを展開していくと語った。

アーティスツ・ユニオンへの加入の目安は、以下の10の条件のうち3つ以上を満たし、公式ウェブサイトにある「ハラスメント防止ガイドライン」に賛同するものとなる(※アーティスツ・ユニオン加入者はプレカリアートユニオンに加入)。結成したばかりの少人数の組織で、現状は運営力が乏しいために加入条件が限られているが、数年ごとに見直していく予定。4月には誰でも参加できる契約に関するワークショップおよび加入説明会、5月にはメンタルケアに関するワークショップおよび加入説明会を行なう。

1. 継続的に作品を制作している
2. 作品が購入された経験が2回以上ある
3. 大学または大学院および専門学校やそれに準ずる教育機関で美術を学んだことがある
4. アーティスト・イン・レジデンスに参加した経験がある
5. 現代美術に関する助成金や奨学金を受けたことがある
6. ワークショップやレクチャーの依頼を受けた経験がある
7. ギャラリーやディーラーなどに作品を取り扱われた経験がある
8. 国際芸術祭に参加した経験がある
9. 美術館または公的な機関の企画による展覧会経験がある
10. 自作がパブリックコレクションに入っている
(※詳細は公式ウェブサイトを参照)

 

アーティスツ・ユニオンhttp://artistsunion.jp/
村上華子(支部長)、湊茉莉(副支部長)、川久保ジョイ(支部書記長)、加藤翼、飯山由貴、寺田衣里、宮川知宙、藤井光、山本高之、白川昌生[支部加入順]

 


ユニオンメンバーのzoom会議の様子(撮影日:2月22日)

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