日本美術と帝国主義の関係を考察するオンライン連続講義が開講


制作:真崎嶺

 

2022年8月より、日本美術と帝国主義の関係について、さまざまな角度から考察するオンライン連続講義『この国(近代日本)の芸術:「日本美術史」を脱帝国主義化する』が開講する。

本企画は、ともに制作、研究、文筆、教育など幅広い活動を展開してきた小田原のどかと山本浩貴が編著者となり、2023年に月曜社から刊行予定の論集+インタビュー集の関連企画として、同書籍寄稿者有志11名による全10回の連続講義。「日本美術史」にこれまでとは異なる角度から光を当て、ここに記述されることを避けられてきた存在を可視化するとともに、なぜそれらが避けられてきたのかに迫る内容となる。

書籍をつくるきっかけとなった出来事のひとつとして、小田原は2021年に国際交流基金が主催したオンライン展覧会『距離をめぐる11の物語:日本の現代美術』に際し、飯山由貴の新作映像作品《In-Mates》に対して、基金側から一方的に展示中止の判断が下されたことを挙げている。山本もまた、「そういった(「政治社会的な」)作品は助成できない、展示はさせられないとなると、社会政治的なもので、かつ現在進行形で起こっている論争的な事象について、今日の芸術は一切言及できないし、さわることすらできないということになる。それは、アーティストにとって、キュレーターにとって、全ての美術関係者にとって、何よりも「この国の」芸術にとって本当に深刻な憂慮すべき事態ではないか」と問題意識を共有したところから、書籍や連続講義の企画がはじまった。「芸術大学や美術大学でも、この国の帝国主義と芸術の関わりについてまとまったものを学べる機会はそれほど多く」ない状況で、本講義は問題意識を共有する貴重な機会となるだろう。
(企画の背景等は、書籍の版元である月曜社のウェブサイトに掲載された「小田原のどか×山本浩貴 対談「この国(近代日本)の芸術をめぐって」」に詳しい。)

なお、オンライン連続講義では、内容のみならず、「大学あるいは研究機関等に非常勤で勤務している者、または非正規雇用の形態で就労している労働者を含む」広範囲の学割や、講義を受ける上での「ハラスメント防止ガイドライン」の承諾などの試みにも取り組んでいる。

 

この国(近代日本)の芸術:「日本美術史」を脱帝国主義化する
https://www.odawaranodoka.com/konokuni

 


左から、山本浩貴、小田原のどか、真崎嶺[撮影:金川晋吾]

 

この国(近代日本)の芸術:「日本美術史」を脱帝国主義化する 連続講義[全10回]

[第1回]8月10日(水)
「日本美術史の脱中心化:アイヌ、沖縄」(講師:加藤弘子+富澤ケイ愛理子)

[第2回]8月31日(水)
「「工芸」から「この国」の「日本美術史」を脱帝国化する:ジェンダー、伝統、サステナビリティ」(講師:菊池裕子)

[第3回]9月7日(水)
「炭鉱と美術:旧産炭地が育んだ美術表現の固有性と戦後日本美術に対する影響」(講師:國盛麻衣佳)

[第4回]9月27日(火)
「天皇制モニュメントはどこまで読みほどくことができるか:八紘之基柱を例に」(講師:千葉慶)

[第5回]10月14日(金)
「帝国の美術史のなかの女流美術家奉公隊(仮)」(講師:吉良智子)

[第6回]10月28日(金)
「帝国の記憶:震災、戦争、公害(仮)」(講師:小田原のどか)

[第7回]11月11日(金)
「障害のある人の芸術活動を批判的障害学の観点から再考する(仮)」(講師:長津結一郎)

[第8回]11月25日(金)
「なぜ私は「日本人慰安婦像になってみ」なければいけなかったのか」(講師:嶋田美子)

[第9回]12月8日(木)
「反帝国の芸術家としての四國五郎:エコロジー・エスニシティ・ジェンダーが交差するインターセクショナル な視点から(仮)」(講師:山本浩貴)

[第10回]12月22日(木)
「天皇/ご一家の視覚表象とジェンダー(仮)」(講師:北原恵)

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