ヨコハマトリエンナーレ2020が「エピソードX」をデジタル空間で展開


岩井優《マジックアワー(エピソードのために)》©️Masaru IWAI, Courtesy of Takuro Someya Contemporary Art

 

2020年7月3日、ヨコハマトリエンナーレ2020は、7月17日の開幕に先立ち、デジタル空間での展開として「エピソードX」を公式ウェブサイトで開始する。

アーティスティック・ディレクターのラクス・メディア・コレクティヴは、当初よりトリエンナーレを構想するにあたり、会期と会場が限定される展覧会という枠組みを拡張するために「エピソード」というプログラムを昨年11月から実施してきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐる状況が変化する中で、会期中に予定していた「エピソード」におけるパフォーマンスのデジタル環境への切り替えについて、先に行なわれたオンライン記者会見では、仮に緊急事態宣言発令により休館が要請された際にもトリエンナーレを継続するための一案として示唆されていた。

「エピソードX」は、当初、開幕日に設定されていた本日7月3日に配信を開始する。第一弾の岩井優の《マジックアワー(エピソードのために)》を皮切りに、開幕(17日)まで毎日、公式ウェブサイトに映像コンテンツをアップしていく。

 

エピソードX ―あるいは「コールド・オープン」で始まるデジタル空間

ひとつのパンデミックが知覚の向かう方向を変えてしまいました。本来、優先され、優位だったはずのことが、今ではかすみ、ひっくり返され、くらくらします。優劣の順に整理されていた経験や隔離されていた領域に現実が織り交ぜられ、無秩序な状態で立ちはだかります。あらかじめ計画されていたイヴェントや出来事は消散し、変動し、遠近の条件も逆転してしまいました。それは、まるでテレビドラマの制作でいう「コールド・オープン」——直接話に入った後にタイトルやオープニングを入れるテクニック——に放り込まれたかのようです。

「エピソードX」は、みなさんをこの「コールド・オープン」へと誘導するデジタルの点火装置です。ここでは、アーティストらとともに徐々に重ねていく時間がプロデュースされ、展覧会から枝分かれして、行為、まなざし、集まり、たまり場、別の場所の記録、あてどのない散策、接触し交わろうとする思い、独白、対話、反応、そして青い絨毯の集いのような企画が加わっていきます。
「何キロも何キロも遊びを組み合わせて歩き続け、建物の規模を凌駕するほどの距離を歩き、ここに集まったエネルギーがついに建物からあふれ出す。そんなことをやってみたい」。「エピソードX」についてアーティストのランティアン・シィエはこのように夢想します。

「エピソードX」は7月3日に開始し、そこから、いくつもの衝動(インパルス)を重ねていきます。そして、いずれ疲れ果てると同時に活力が沸き上がるまで続けていきます。そして、ついぞ最後まで辿り着くことなく、「エピソードX」の世界が当たり前になっているときが、やがてやってくるかもしれません。

ラクス・メディア・コレクティヴ

 

ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」
2020年7月17日(金)- 10月11日(日)
https://www.yokohamatriennale.jp/2020/
会場:横浜美術館、プロット48
AD:ラクス・メディア・コレクティヴ

ヨコハマトリエンナーレ2020 ソースブック:https://www.yokohamatriennale.jp/2020/concept/sources/

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