ホン・ジンフォン 画像提供:韓国国立現代美術館
2026年10月28日、韓国国立現代美術館(MMCA)は、SBS財団と共催する韓国国内有数の現代美術賞「韓国美術家賞(今年の作家賞)」を、ホン・ジンフォンに授賞すると発表した。ホンには賞金1000万ウォン(約120万円)が授与された(※最終候補の4名には最終のプレゼンテーションとなる展覧会の新作製作補助費として5000万ウォンが提供されている)。
ホン・ジンフォン(1980年生まれ)は、写真や映像、ウェブプログラミングなどを活用し、イメージに埋め込まれた社会的・政治的な権力構造について探究している。国際的な報道メディアでジャーナリストとして働いた経験を背景に、彼自身が目撃してきた抗議運動の現場がどのようにイメージへと変換されるのかに着目し、異なるイメージやサウンドを並置することにより、その中で作用する権力構造への介入を試みてきた。
ホン・ジンフォン《The Highest Form of the Image is Armed Struggle》2026年 「韓国美術家賞2026」韓国国立現代美術館 ソウル館、2026年
ホン・ジンフォン《The Highest Form of the Image is Armed Struggle》2026年 「韓国美術家賞2026」韓国国立現代美術館 ソウル館、2026年
新作《The Highest Form of the Image Is Armed Struggle(イメージは最良の形態は武装闘争である)》(2026)では、足立正生と若松孝二が『赤軍-PFLP・世界戦争宣言』内で掲げたスローガン「プロパガンダの最良の形態は武装闘争である」を、現代の抗議運動の風景の中に探りつつ、抵抗と闘争の場が予測可能で制御可能なイメージへと変容していく過程を、動物学者ジョン・B・カルフーンの実験「ユニバース25」と結びつけながら考察している。また、《Exactly Speaking, the Milky Way Is a Phantom(正確に言えば、銀河は亡霊である)》(2026)では、銀河を無数の星の分布とそれを観測する視線の関係の中で形成されるイメージとして捉えたオランダの天文学者アントン・パネコックの研究を引き合いに、ホン自身が撮影してきた悲劇を経験した場所の風景写真を観測と記憶の中でのみ現れる亡霊的なイメージとして提示することで、不在と沈黙、凝視と記憶の問題を問い直した。
審査員を務めたテート・モダンのシャーメーン・トーは、「ホン・ジンフォンの作品は、社会的実践とそれらがイメージとして表象される過程との間にある緊張関係を明らかにし、私たちが現実を見る、理解する際の視覚体系に疑問を投げかけている」と評し、同じく審査員を務めたベルリンのクンストヴェルケ現代美術センターのエマ・エンダービーは、「異なる時代、異なる文脈のイメージや記録の編み込み方が印象的で、社会的な出来事を伝え、その意味を再構築するイメージの作用を説得的に示している」と言及した。
また、韓国国立現代美術館ディレクター代理のユン・テウクは、「ホン・ジンフォンは、イメージが単に現実を記録する手段に留まらず、社会的な出来事の意味や記憶を構成する本質的な条件なのだということを示し、私たちが慣れ親しんできた視覚体系と権力関係について再考を促しました」とグランプリを受賞したホンを賞賛した上で、「展覧会を通じて、韓国現代美術の卓越した力量を証明してくれた4名の最終候補者に感謝の意を表します」と展覧会に参加したすべてのアーティストを讃えた。
ホン・ジンフォン《Exactly Speaking, the Milky Way is a Phantom》2026年 「韓国美術家賞2026」韓国国立現代美術館 ソウル館、2026年
ホン・ジンフォン《Exactly Speaking, the Milky Way is a Phantom》2026年 「韓国美術家賞2026」韓国国立現代美術館 ソウル館、2026年
本年度の審査員は、上述したトー、エンダービーのほか、ホー・ツーニェン(第16回光州ビエンナーレ アーティスティックディレクター)、チョン・ヒョン(美術批評家、仁荷大学校教授)、キム・ジヨン(d/pディレクター)、キム・ソンヒ(韓国国立現代美術館ディレクター)が務めた。受賞者は、10月27日に開かれた観客参加型座談会を経て、審査員による非公開の最終審査を通じて選定された。
最終候補4名の作品を紹介する「韓国美術家賞2026」は、12月6日まで韓国国立現代美術館 ソウル館で開催。なお、受賞者のホン・ジンフォンの過去作《オー・バレンタイン》は、イメージフォーラム・フェスティバル2026の東アジア・エクスペリメンタル・コンペティションの出品作品に選ばれており、同フェスティバルの名古屋会場のナゴヤキネマ・ノイでも11月12日に上映予定となっている。
韓国美術家賞:http://koreaartistprize.org/
韓国美術家賞2026
2026年7月24日(金)- 12月6日(日)
韓国国立現代美術館 ソウル館
http://www.mmca.go.kr/
参加アーティスト:イ・ジョンウ、イヘミンソン、チョン・ヒョンソン、ホン・ジンフォン
キュレーター:パク・ドクソン(韓国国立現代美術館キュレーター)
過去5年の受賞者および最終候補(太字はグランプリ)
2025|キム・ヨンウン、キム・ジピョン、アンメイク・ラボ、イム・ヨンジュ
2024|ヤン・ジョンウク、クォン・ハヨン、ユン・ジヨン、ジェーン・ジン・カイゼン
2023|クォン・ビョンジュン、ガラ・ポラス・キム、イ・カンスン、チョン・ソジョン
2022|「韓国美術家賞」回顧展のため実施せず
2021|チェ・チャンスク、キム・サンジン、バン・ジョンア、オ・ミン
