この度、ギャラリー小柳では2026年9月26日(土)から10月24日(土)の会期で、グループ展「Tranquility 静謐」を開催いたします。
「Tranquility」をテーマに、4人の作家がそれぞれの視座から表現する静けさの姿に光を当てます。静謐(Tranquility)とは、物事が静かで落ち着き、穏やかに整った状態を意味します。しかし、その感じ方や現れ方は決して一様ではありません。風景や記憶、感情、そして時間の流れと重なり合いながら、内なる感覚の中で多様なかたちを伴って立ち現れます。本展では、作品に表現された静けさのかたちに触れ、そこから広がる豊かな世界を見つめます。少女がもつ強さと脆さが交錯する内面を、独自のセッティングとポージングによって鮮やかに映し出すヘレン・ファン・ミーネの作品をはじめ、熊谷亜莉沙、中澤安奈、小林照の3名による新作を展観いたします。

オランダ出身のヘレン・ファン・ミーネ(1972−)は、1990年代半ばより、主に少女を被写体とした写真作品を発表してきました。知り合いや、街で声をかけた少女たちをモデルにファン・ミーネ自身が即興で服や髪に独特な変化を加え、ポーズをつけながら虚構の世界を作り上げていきます。ダッチライトと呼ばれる、自国オランダの歴史的絵画の特徴的な光を想起させる繊細な色彩の中で捉えられた彼女たちは、伏し目がちに佇み、その静かな内省のひとときの中に、成長過程の寄る辺のない不安定さと不完全な美しさを垣間見せます。

熊谷亜莉沙(1991−)は、自身の複雑な生い立ちや境遇と向き合い、そこにある矛盾や葛藤を絵画として表現してきました。個人的な体験を起点に、生と死、愛と憎しみ、豊かさと貧しさといった人間の根源的なテーマへと広がる作品は、美しさと不穏さをあわせ持ち、見る者にさまざまな想像や感情を呼び起こします。新作《she》では、フランスの教会で出会ったマリア像を描いています。人物を描く際、目から下だけを捉える構図を繰り返し用いてきた熊谷は、長い年月にわたり人々の祈りを受け止めてきた「彼女」を、「聖母」という象徴であると同時に、ひとりの人間として描き出します。熊谷はそこに積み重ねられた信仰と営み、そして紡がれ続ける物語そのものを見つめています。
中澤安奈(1988−)は、石や木を素材に、キリスト者としての信仰生活の中で彫刻を制作しています。聖書の言葉や恵みの体験を源泉とするその作品は、目には見えない存在に呼応する人間の普遍的な在り方を見つめるものです。代表的な「衣」シリーズでは、衣の佇まいを通して人の人格そのもの、そして神に出会う人のありようを表現してきました。本展では、同シリーズの新作《Remove the Veils 暁にまみえて》に加え、カーテンをモチーフとした新作《その日、風の吹くころ》を発表します。風や気配を感じさせるカーテンは、神によって現されたものとなお隠されているものの境界を象徴し、その覆いが取り去られたあとにある約束された希望を、作品は静かな余韻とともに湛えています。

小林照は、『ピクチャー』を巡る歴史を背景に、視覚表現を展開し、「像の起こり」を主題として制作しています。また、御嶽行者(おんたけぎょうじゃ)として、山岳信仰の実践と祭祀や儀礼に携わっています。今回発表する《dpi》シリーズは、印刷やデジタル画像の解像度を示す「dpi(dots per inch)」に着想を得て、1インチ(2.54cm)に1つのドットが配置される「1dpi」の考え方をもとに、円形の版木による点描を重ねています。制作地で採取し、自製した炭インクを木炭紙に定着させる反復的な行為を通して、現代のオートメーションが担う均一さや速さから、画像を解放する試みです。点に刻まれた人の手による痕跡が、静かに浮かび上がります。
展覧会初日9月26日(土)の午後5時から7時までは、熊谷、中澤、小林が在廊し、レセプションを開催いたします。午後6時からは3名によるギャラリートークも実施予定です。この機会にぜひご取材いただけますよう、お願い申し上げます。
【展覧会概要】
展覧会名:Tranquility 静謐
作家名:Hellen van Meene、熊谷亜莉沙、中澤安奈、小林照
会期:2025年9月26日(土)-10月24日(土)
[オープニングレセプション:9月26日(土)17:00-19:00]
開廊時間:12:00-19:00
休廊日:日/月/祝祭日
会場:ギャラリー小柳
東京都中央区銀座1-7-5小柳ビル9F
Tel: 03-3561-1896 Fax: 03-3563-3236
