ジャネット カーディフ《40声のモテット》2001年 聖ヨハネ教会(オーストリア、フェルトキルヒ)での展示風景(2005年)Photo by Markus Tretter. Courtesy of the artist and Luhring Augustine, New York / Gallery Koyanagi ©Janet Cardiff
この、原美術館ARCという時間芸術
2025年3月15日(土)-7月6日(日)
(第1期:3/15-5/11|第2期:5/16-7/6)
原美術館ARC
https://www.haramuseum.or.jp/
開館時間:9:30–16:30 入館は閉館30分前まで
休館日:木(3/20、5/11は開館)、5/12-5/15
展覧会担当:坪内雅美(原美術館ARC学芸員)
展覧会URL:https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/exhibition/1815/
2025年春夏季の原美術館ARCは、榛名山麓を背に移ろう自然の中にある美術館とその環境を時間芸術と捉えた展覧会「この、原美術館ARCという時間芸術」を開催する。
会期序盤の注目は、高度な音響技術を駆使したサウンド・インスタレーションなどの作品で知られるジャネット カーディフの《40声のモテット》をギャラリーAにて期間限定で紹介する特別企画(3月15日から5月11日まで)。ジョージ・ビュレス・ミラーとの共同制作によりヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタをはじめ、世界各地で作品を発表してきたカーディフは、日本国内でも横浜トリエンナーレ2005、あいちトリエンナーレ2013などの芸術祭に参加、2009年に銀座メゾンエルメス フォーラム、2017年には金沢21世紀美術館で個展を開催、ベネッセアートサイト直島に常設作品《ストームハウス》(2010-2021 ※施設老朽化により閉館)を設置するなど、幅広く作品を発表してきた。
《40声のモテット》は、イングランド王国君主のオルガン奏者を務めた作曲家トマス・タリス(c.1505-1585)の40声のモテット「Spem in Alium」を歌う声が楕円形に配された40台のスピーカーから別々に再生されるサウンドインスタレーション。モテットとは多声楽曲のジャンルのひとつで、中世からルネサンスにかけて成立・発達したキリスト教音楽。カーディフはフィールド・アート・プロジェクツから2000年のソールズベリー・フェスティバルへの参加の打診を受けて、1年におよぶ調査と編成の後、フェスティバルの一環としてソールズベリー大聖堂聖歌隊をはじめとするイングランド各地の歌手たちと5つのパート(ソプラノ、アルト、テノール、バリトン、バス)からなる8つの合唱団で構成し、「Spem in Alium」を録音、作品を完成させた。
今回の特別企画では、カーディフの「音の彫刻」というアイディアから考案された本作を、磯崎新が設計した原美術館ARCのギャラリーA、杉柱4本に支えられた高さ12mの天窓から自然光が降り注ぎ、太陽の面前を雲が横切る度に光が移ろう空間で披露する。
「ソフィ カル-限局性激痛 原美術館コレクションより」(2019年)展展示風景 ©Sophie Calle 撮影:木奥惠三
また、ギャラリーB、Cでは第1期、第2期にわたって、同館所蔵のソフィ・カルによる《限局性激痛》を紹介する。日本滞在を契機に誕生した本作は、日本で最初に発表したいという作家の希望を受けて、原美術館ARCの前身となる原美術館(東京・品川 ※2021年閉館)での同名個展(1999)のためにまず日本語版が制作され、その後フランス語や英語版が世界各国で発表された。身体部位を襲う限局性(狭い範囲)の鋭い痛みや苦しみを意味する医学用語をタイトルに、人生最悪の日までの出来事を最愛の人への手紙や写真で綴った第一部と、自分の不幸を他人に語り、代わりに相手の最も辛い経験を聞くことで自身の心の傷を少しずつ相対化していく様を写真と刺繍とで綴った第二部とで構成されている。2019年には閉館が決まった原美術館の空間で19年前に開かれた個展を再現する展覧会「「ソフィ カル-限局性激痛」原美術館コレクションより」も開催された。
なお、第2期(5/16-7/6)のギャラリーAでは、李禹煥が1991年にハラミュージアム アーク時代に開催した個展の際に、同館のために制作した大作の三連画《風と共に》(1991)や、山本糾の〈落下する水〉など、制作にも鑑賞にも時間の流れを伴う作品群を収蔵作品から紹介する。そのほか、宮脇愛子の《うつろひ》や多田美波の《明暗》など、屋外作品も「時間芸術」として改めて自然環境とともに体感する機会となる。
李禹煥《風と共に》1990年 カンヴァスに油彩、岩絵具 291 x 218 cm ©Lee Ufan
原美術館ARCと榛名山麓
ジャネット カーディフ《40声のモテット》2001年 聖ヨハネ教会(オーストリア、フェルトキルヒ)での展示風景(2005年)Photo by Markus Tretter. Courtesy of the artist and Luhring Augustine, New York / Gallery Koyanagi ©Janet Cardiff
この、原美術館ARCという時間芸術
2025年3月15日(土)-7月6日(日)
(第1期:3/15-5/11|第2期:5/16-7/6)
原美術館ARC
https://www.haramuseum.or.jp/
開館時間:9:30–16:30 入館は閉館30分前まで
休館日:木(3/20、5/11は開館)、5/12-5/15
展覧会担当:坪内雅美(原美術館ARC学芸員)
展覧会URL:https://www.haramuseum.or.jp/jp/arc/exhibition/1815/
2025年春夏季の原美術館ARCは、榛名山麓を背に移ろう自然の中にある美術館とその環境を時間芸術と捉えた展覧会「この、原美術館ARCという時間芸術」を開催する。
会期序盤の注目は、高度な音響技術を駆使したサウンド・インスタレーションなどの作品で知られるジャネット カーディフの《40声のモテット》をギャラリーAにて期間限定で紹介する特別企画(3月15日から5月11日まで)。ジョージ・ビュレス・ミラーとの共同制作によりヴェネツィア・ビエンナーレやドクメンタをはじめ、世界各地で作品を発表してきたカーディフは、日本国内でも横浜トリエンナーレ2005、あいちトリエンナーレ2013などの芸術祭に参加、2009年に銀座メゾンエルメス フォーラム、2017年には金沢21世紀美術館で個展を開催、ベネッセアートサイト直島に常設作品《ストームハウス》(2010-2021 ※施設老朽化により閉館)を設置するなど、幅広く作品を発表してきた。
《40声のモテット》は、イングランド王国君主のオルガン奏者を務めた作曲家トマス・タリス(c.1505-1585)の40声のモテット「Spem in Alium」を歌う声が楕円形に配された40台のスピーカーから別々に再生されるサウンドインスタレーション。モテットとは多声楽曲のジャンルのひとつで、中世からルネサンスにかけて成立・発達したキリスト教音楽。カーディフはフィールド・アート・プロジェクツから2000年のソールズベリー・フェスティバルへの参加の打診を受けて、1年におよぶ調査と編成の後、フェスティバルの一環としてソールズベリー大聖堂聖歌隊をはじめとするイングランド各地の歌手たちと5つのパート(ソプラノ、アルト、テノール、バリトン、バス)からなる8つの合唱団で構成し、「Spem in Alium」を録音、作品を完成させた。
今回の特別企画では、カーディフの「音の彫刻」というアイディアから考案された本作を、磯崎新が設計した原美術館ARCのギャラリーA、杉柱4本に支えられた高さ12mの天窓から自然光が降り注ぎ、太陽の面前を雲が横切る度に光が移ろう空間で披露する。
「ソフィ カル-限局性激痛 原美術館コレクションより」(2019年)展展示風景 ©Sophie Calle 撮影:木奥惠三
また、ギャラリーB、Cでは第1期、第2期にわたって、同館所蔵のソフィ・カルによる《限局性激痛》を紹介する。日本滞在を契機に誕生した本作は、日本で最初に発表したいという作家の希望を受けて、原美術館ARCの前身となる原美術館(東京・品川 ※2021年閉館)での同名個展(1999)のためにまず日本語版が制作され、その後フランス語や英語版が世界各国で発表された。身体部位を襲う限局性(狭い範囲)の鋭い痛みや苦しみを意味する医学用語をタイトルに、人生最悪の日までの出来事を最愛の人への手紙や写真で綴った第一部と、自分の不幸を他人に語り、代わりに相手の最も辛い経験を聞くことで自身の心の傷を少しずつ相対化していく様を写真と刺繍とで綴った第二部とで構成されている。2019年には閉館が決まった原美術館の空間で19年前に開かれた個展を再現する展覧会「「ソフィ カル-限局性激痛」原美術館コレクションより」も開催された。
なお、第2期(5/16-7/6)のギャラリーAでは、李禹煥が1991年にハラミュージアム アーク時代に開催した個展の際に、同館のために制作した大作の三連画《風と共に》(1991)や、山本糾の〈落下する水〉など、制作にも鑑賞にも時間の流れを伴う作品群を収蔵作品から紹介する。そのほか、宮脇愛子の《うつろひ》や多田美波の《明暗》など、屋外作品も「時間芸術」として改めて自然環境とともに体感する機会となる。
李禹煥《風と共に》1990年 カンヴァスに油彩、岩絵具 291 x 218 cm ©Lee Ufan
原美術館ARCと榛名山麓