2011年ヴェネツィア・ビエンナーレ、各国代表発表

2010年10月7日
2011年に開催される第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ美術展の各国代表アーティストやコミッショナーが次々と発表されている。過去に発表されているものも含めて掲載する。


アイスランド

アイスランドの代表アーティストは1997年からコラボレーションを続けるリビア・カストロとオラファー・オラフソン。スペイン出身のカストロは昨年ドイツを代表したイギリス人アーティスト、リアム・ギリックに続き、国民ではない国の代表者に選ばれた数少ないアーティストの一人となる。カストロとオラフソンは2005年にもビエンナーレの関連プロジェクトとしてヴェネツィアで作品を展示しており、2008年のマニフェスタ7など、ヨーロッパを中心に世界的に活動している。現在の世界における文化横断的な傾向とそこから発生する複雑な関係性を主なテーマとし、展示の開催地の社会状況を扱う現場重視の作品で知られる。


アイルランド

アイルランド館のコミッショナーはニューヨークのペース・ギャラリーのディレクターを務めるエミリー=ジェーン・カーワン。コマーシャルギャラリーのディレクターがパビリオンのコミッショナーに選ばれるのは比較的珍しいことだが、今回、カーワンが同ギャラリーの取り扱い作家であるコーバン・ウォーカーを代表アーティストに選んだことで論議を呼んだ。ウォーカーはニューヨークとアイルランドを拠点とする彫刻家。日本では、東京丸の内ビルディングの吹き抜けから地下1階に通じる階段にガラス、ファイバーライト、LED、スチールによるインスタレーション「スケールズ」(2001/02)が設置されている。アイルランド館での展示自体はカーワンではなく、アイルランドの非営利ギャラリー、リスモア・キャッスル・アーツのディレクターでもあるインディペンデントキュレーター、イーモン・マックスウェルが担当する。


インド

2011年にはインドが初めて参加国に加わる。インド館の記念すべき初展示のコミッショナーには詩人や批評家などとして幅広く活躍しているインディペンデントキュレーターのランジット・ホスコテが選ばれた。インディア・エクスプレス誌によると代表アーティストはビエンナーレのテーマに合わせて決めるとのことで、まだ発表されていない。


韓国

韓国館の担当、韓国文化芸術委員会は2010年10月1日にメディアアーティスト、李庸白(イ・ヨンベク)を選んだことを発表した。李は過去にメディア・シティ・ソウル(2000、2002)、光州ビエンナーレ(2002)、ヴェネツィア・ビエンナーレ(2000)などに参加しており、韓国とドイツを中心に世界的に活動している。日本でも名古屋の+Galleryでの個展『天使-戦士』(2006)のほか、国際交流基金主催の『アウト・ザ・ウィンドウ』展(2003、2004)などのグループ展にも出品。主にビデオインスタレーションや、ロボットやオーディオ作品などあらゆる科学的な分野に関わる実験的な作品で知られる。8月の暮れに発表されたコミッショナーの尹在甲(ユン・チェガブ)は今年までアラリオ・ギャラリー(天安、北京、ソウル、ニューヨーク)のエグゼクティブディレクター。今回の展示では李が過去数年の間に制作した作品を展示する。


スイス

スイス連邦文化局によるスイス館にはトーマス・ヒルシュホルンとアンドレア・タールが選ばれた。2000年のマルセル・デュシャン賞受賞者のヒルシュホルンはベルン生まれでパリを拠点とするアーティスト。2008年のカーネギー・インターナショナルや2006年のサンパウロ・ビエンナーレに参加。ガムテープやアルミホイルを使った、左派政治やグローバル化など政治的、社会的テーマを扱う大型のインスタレーション作品が有名である。日本代表アーティスト束芋と同じく1975年生まれのタールは2006年からチューリヒでレ・コンプリース*というアートスペースを運営しており、ヨーロッパ各地での音楽やパフォーマンスを中心とした展覧会やプロジェクトを企画している。


スペイン

スペイン館のコミッショナーに任命された、ジュネーブの現代美術センターのディレクター、カティア・ガルシア=アントンが選んだ代表アーティストはスペイン出身、ブリュッセル在住のドラ・ガルシア。ガルシアは2008年のシドニー・ビエンナーレや2009年のリヨン・ビエンナーレにも参加した、国際的に活躍するアーティストで、現在はクンストハレ・ベルンでマルコ・ポロニと個展を2010年10月10日まで同時開催中である。美術における慣習やパラダイムの分析を中心的なモチーフとし、テキストや物語を使って複雑な倫理的・道徳的な問題を提起するユーモラスなシナリオを創り出すことで知られる。

Dora García, Steal This Book (2009). Courtesy of Galería Juana de Aizpuru

ドイツ

ドイツ館の展示はアーティスト、俳優、映画監督として活躍したクリストフ・シュリンゲンズィーフの追悼展となる。生前に代表アーティストとして選ばれ、コミッショナーのスザンネ・ゲンズハイマー(フランクフルト近代美術館館長)とビエンナーレでの展示に向けてコラボレーションの最中であったシュリンゲンズィーフは8月21日に肺がんで亡くなった。ザ・アート・ニュースペーパーとのインタビューでゲンズハイマーは追悼の意を込めて何も展示しないことも考えたが、国際的には作品があまり知られていないため、未完のプロジェクトの全貌を表す資料展示や回顧展などというかたちを検討していると語っている。


ロシア

ロシア館は6年間3回を同じコミッショナーが務める。2012年は新たなコミッショナーが任命される年にあたり、ステラ・ケサエヴァが選ばれた。ロシア館の展示に全体の責任を負うコミッショナーとは別に、キュレーターとしてボリス・グロイスが企画をし、アンドレイ・モナストリスキーもメンバーの一員である、アーティストグループ、コレクティブ・アクションズ(アンドレイ・モナストリスキー, ニコライ・パンティコフ、イゴール・マカレヴィッチ、エレナ・エラジーナ、セルゲイ・ロマンシュコ、サビーナ・ヘンスゲン)が代表アーティストとして選ばれた。コレクティブ・アクションズは1976年に結成し、現在まで活動を続けている。


第54回ヴェネツィア・ビエンナーレ美術展は2011年6月4日から11月27日までの開催日程が予定されている。全体のアーティスティックディレクターはチューリッヒ市立美術館ディレクターで、雑誌『パルケット』編集長のビーチェ・クリガーが任命されている。

(文中敬称略)



すでに発表済みの他のパビリオン
アメリカ館 ジェニファー・アローラ&ギレルモ・カルサディーヤ
イギリス館 マイク・ネルソン
スコットランド館 カーラ・ブラック
日本館 束芋
フランス館 クリスチャン・ボルタンスキー


2011年ヴェネツィア・ビエンナーレ日本館の作家は束芋に
2011年ヴェネツィア・ビエンナーレ、スコットランド代表はカーラ・ブラックに
2011年ヴェネツィア・ビエンナーレ、アメリカ館代表はアローラ&カルサディーヤに
クリスチャン・ボルタンスキー 消え行く記憶の融解点