BLACK BOX 002: 宮本隆司

「The Crossing 1975」について

 
「The Crossing 1975」の制作は、1975年12月23日に開始し28日まで毎日行った。

New Yorkの友人に無理を言って撮影機材を借り、期限切れの安いフィルムを手に入れて100フィートずつにカットして16mm Bolex カメラに装填し、1日目は一人で100フィート手持ち撮影。New York、ManhattanのBroadwayを南端のBattery Parkから北上して、ブロック毎に交差点で360度一回転しながら撮影していった。この作品は当初、Manhattanの全ての交差点を撮影するという壮大なコンセプトだったので、まず中央をタテに貫く幹線道路であるBroadwayを南から攻めていった。
ところが実際の撮影は想像以上に大変だし盗難防止もかねて、2日目から荷物持ちの助手を一人雇って2人で行動した。

数日後、Houston st.あたりまで来て何故か左右の道路も撮影し、Williamsburg Bridgeが見える所でも脇見をするように撮影。最後の6日目には友人のロフト(そこに宿泊していた)があったCanal st.あたりからWorld Trade Centerが見える交差点で撮影している。結局、Manhattanの全ての交差点を撮影することはフィルムも資金も時間も足りず短期間では不可能だと判断し、残りでSoHoの交差点を幾つか撮影して終了となってしまった。最終的に1200フィート廻し、すべてNew Yorkの現像所で現像した。

これは、当時28歳だったわたしが作品にしようと格闘したあげく、未完成のままに長期間放置されていた16mm映画フィルムである。今回まったく編集を行わず、全フィルムをラッシュ・フィルム同様に撮影当時のままデジタル・ハイビジョン変換し映像展示した。

2011年春 

宮本隆司

本作品は、現在開催中の下記グループ展でご覧いただけます。

路上
2011.5.17-7.31
東京国立近代美術館 本館2Fギャラリー4


宮本隆司 The Crossing 1975 Video

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