エルメス スペースモジュール – フロリアン・クラール


【タイトル】 エルメス スペースモジュール
【アーティスト名】 フロリアン・クラール
【期間】 2009年5月21日~7月14日

17世紀のダイニングルームに浮かんでいる靴。窓の外を見ると、星が通り過ぎて行きます。その部屋は、地球上のモチーフを題材としたロココ調のフレスコ画が天井を覆うクラシカルな部屋。ところが、無機的な金属のカプセルに入って、宇宙を旅しているようなのです・・・。

アーティスト、フロリアン・クラールは、2009年の年間テーマ「美しき逃避行」をコンセプトとしてメゾンエルメスのウィンドウをデザインするにあたり、瞬間的に、「地球上の」という制約を外すべきだと感じました。

NASA(アメリカ国立航空宇宙局)は、1969年に人類初の月着陸を成功させ、宇宙服や宇宙船などに代表される、まったく新しい旅のスタイルを提示しました。革新的な素材の使用やそのフォルムは視覚的にも斬新で、今日においても象徴的で時代を感じさせません。

それから40年経ち、火星へのオリオン計画などの新しい宇宙開発が進行する中、惑星間の旅のスタイルや宇宙での生活の定義は、新しい議論となっています。60年代の宇宙開発のような極端で革新的な考え方ではなく、宇宙開発以前、あるいは産業革命以前のルネサンスが起きているかのようです。まるで時代と逆行するかのように、過去の歴史的なスタイルが未来の革新的なビジョンと衝突しています。19世紀の宮殿様式で造られた20世紀初頭の外洋航路船のように、宇宙旅行でも、先端産業的な器の中に、様式的にはまったく逆の空間が出現するという、驚くような新しいスタイルを生み出すかもしれません。

クラールは、メゾンエルメスのウィンドウでは、逆行する時代の幅をより大きくしたら面白いだろうと考えました。21世紀の現在を起点に現在と過去に400年ずつ離れ、17世紀と25世紀を内と外で実現しました。はかない現在という一瞬は、過去と未来によってはさまれることによって、その実体を現すのです。

Florian Claar (フロリアン・クラール)
1968年、ドイツ、シュトゥットガルト生まれのアーティスト。1994年、ナショナルアートユニヴァーシティ・シュトゥットガルト大学院彫刻家修了。近年、東京ミッドタウンや金沢21世紀美術館などのパブリックスペースに数多くの彫刻を制作して注目を集めている。音楽や数学から着想を得た作品を多く手がけ、その独特な表現は、高い評価を得ている。神奈川県在住。

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