航海 – 中村哲也

【タイトル】航海
【アーティスト名】中村哲也
【期間】 2003年4月3日~5月27日

前回の展示と2部構成の、中村哲也によるウィンドーの後半は、クルーザーが停泊していた桟橋から出港して、地中海の海原を航海している波が表現されています。
穏やかな地中海を優雅に進むクルーザーは、その流線型の全容をあらわして、さらに際立って見えます。波に囲まれた姿は、あたかも本物の船舶のようです。その優雅なイメージは、「大人の遊び方」であると、作家は考えました。
初夏らしく強まる日差しの中、ウィンドーの背景に使われているのは、まさに波を表現している「地中海」というスカーフのモチーフ。朱色と紺色という対照的な2色により、夜明けから日暮れまでの間、ゆっくりとクルーザーが海を彷徨っているイメージを伝えています。
白く艶やかに塗装されたクルーザーの甲板の上には、タオルやピクニックできるようなテーブルウェア商品が飾られています。日差しを避けるための帽子や手袋なども用意されています。風が囁く中、クルーザーを泊めて海原でゆったりと過ごす大人たちの休日です。
中村哲也の白いクルーザーを用いたウィンドー展示は、前回・今回とも一目で分りやすく、そして楽しく2003年のエルメス年間テーマ「地中海」を表現しました。スピード感溢れるクルーザーが、ウィンドーの中に佇んでいるという意外性も、視覚的な効果を発揮しました。

中村哲也(なかむら・てつや)
1968年千葉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻終了。93年より制作活動を開始。ほぼ毎年個展を開催、98年からは「レプリカシリーズ」をスタート。02年メゾンエルメス8Fフォーラムにおいて「手の隙間」展を須田悦弘と開催

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