満ち足りたとき – 中村哲也


【タイトル】 満ち足りたとき 
【アーティスト名】 中村哲也
【期間】 2006年11月16日~2007年1月16日

2003年にクルーザーをウィンドーに入れて驚かせた中村が、今回はクリスマスウィンドーに挑戦しました。舞台はパリのアパートの一室ですが、普通のアパートではない幻想的な世界が広がります。夜明け前の空を思い起こさせるようなブルー一色の世界。そこには中村らしい抽象的なシャンデリアとソファーが存在します。もう一つのウィンドーではシックな赤の世界が広がり、鏡に椅子というモチーフが現れます。

この夢のようなアパートの家具は全て中村の手作り。プラスチック成形によるフォルムをマット色で塗装し、その端には金色の加工がなされています。床はパリのアパートらしく木材で組まれ、壁には刺繍された鈍い金色の星が散々します。

さて、そのシーンに佇むのは男と女です。冬の夜を暖かいアパートでゆったりと過ごす、満ち足りた二人を演出しました。夜が長い冬は、部屋の中で充実した時間を過ごすのに最適です。食事や団欒する時間に限りはなく、時が経つのが早く感じられます。人々が時間に追われることがない、その素敵な瞬間を表現したウィンドーです。曲線が鮮やかで美しいフォルムの家具に囲まれ、エルメスの商品もゆったりと飾られます。この夢見心地なシーンで、今年のテーマ「L’air de Paris」を締めくくります。

中村哲也(なかむら・てつや)
1968年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻修了。2005年には「CHIKAKU:Time and Memory in Japan」展に出品(クンストハウス・グラーツ/オーストリアとマルコ・ビーゴ美術館/スペインを巡回)。06年は上海ビエンナーレに参加。

Copyrighted Image