White Discharge – 金氏徹平

【タイトル】 White Discharge
【アーティスト名】 金氏徹平
【期間】 2010年7月22日~9月14日

―拾って来たり買い集めて来たりした日用品という、現実の都市の物語の断片を、ファンタジーやサイエンス・フィクションのように、時間や意味を閉じ込めながら、白い石膏をかけて再構築する。現実の都市の物語と交わったり、そこから浮かび上がったりするように、ある意味では日用品でありながら、ファンタジーの要素でもあるエルメスの商品が白い世界を漂う。―

それぞれが異なる意味や用途をもち、さまざまな人の手を介して生まれた日用品。まったく異なる物語や性質をもつそれらの日用品が、それぞれの形状を変えることなく再構築され、表面を覆われることによって別の性質をもつひとつの集合体になっていく・・・それぞれの個性を否定することなく、けれども大きさと形状という観点からのみ選択され再構築された日用品は、表面を共有するというその一点だけで別のオブジェになり、「個体」の定義の曖昧さ、共存する複数のものの境界の曖昧さを視覚化しています。

流れ落ちて日用品を覆い尽くす石膏が表している時の流れや事象の儚さにはまるで無縁であるかのようなエルメスの商品たち。石膏で覆われた集合体とエルメスの商品の対比は、銀世界の森に現れたカラフルな動物たちのようでもあり、朽ちていく都市と新しい生命のようでもありますが、同時に、石膏が表す時の流れの中でも変わることのない、エルメスのものづくりの姿勢を表しているとも言えるでしょう。


金氏徹平(かねうじ てっぺい)

1978年、京都生まれ。2001年、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートに留学。2003年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。幼少の頃から、粘土細工やぬいぐるみ制作に熱中する。その作品は、彫刻、ドローイング、インスタレーションなど多岐に渡り、国内外のギャラリーや美術館で展覧会に出品している。

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