シャネット・カーディフ & ジョージ・ビュレス・ミラー展

【アーティスト名】 シャネット・カーディフ & ジョージ・ビュレス・ミラー
【会期】 2009年2月24日~5月17日

『The Forty Part Motet 40声のモテット』

「演奏会では普通、聴衆は合唱団の正面の『定位置』に座ります。この作品を通じて私は、聴衆が歌う側の視点で音楽を体験できるようにしたいと考えました。どの歌い手の耳にも、一人一人違った構成の音楽が聞こえているはずです。聴衆が空間を自由に動き回れるようにすることで、それぞれの歌声と親密な関係を結ぶことができるようになります。また、音楽とは一定の形を持たない構造物である、ということが明らかになるでしょう。加えて、音というものがいかに彫刻のように空間を物理的に構成しうるか、そして観客がこの物理的な、かつヴァーチャルな空間の中でどのように歩き回るか、そういったことにも私は関心をもっています。」

「タリスの楽曲がいかに彫刻的に構成されていることを実際に感じてもらえるように、私はスピーカーを室内に楕円を描くように配置しました。ある群から別の群へと音が移動し、行きつ戻りつ飛び移り、響きあいます。そうしてついに全員で歌うときが来ると、音の波に打たれるという圧倒的な体験をすることになるでしょう。」

『40声のモテット』は、16世紀ルネッサンス期の作曲家トマス・タリスの多声モテット『我、汝の他に望みなし』を基にしています。40声がそれぞれ個別に録音され、戦略的に配置された40個のスピーカーによって、繰り返し流されます。

トマス・タリス(1505‐1585)は当時きわめて影響力のあったイギリス人作曲家で、今日最も人気のあるルネサンス期の作曲家の一人です。王室礼拝堂のオルガン奏者として、タリスはヘンリー8世、エドワード6世、メアリ1世、エリザベス1世と、4代にわたってイギリスの君主に仕えました。彼の最高傑作の一つが、8群の5声から成る40声のための楽曲でした。エリザベス1世によるカトリック弾圧の中、恭順の意を強調する目的で、1573年の女王40歳の誕生日のために作曲されたともいわれています。

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