pink – 鬼頭健吾

【タイトル】pink
【アーティスト名】鬼頭健吾
【会期】 2004年7月22日~9月14日

 
04年秋冬レディースプレタからジャン=ポール・ゴルチエがデザイナーに就任したエルメスのプレタ。マルタン・マルジェラの時代から変わろうとするエルメスの姿を表現したのが、このウィンドーです。今までに比べ華やかで近未来的なイメージを感じるかもしれません。
このウィンドーを担当したのは鬼頭健吾。カラフルなインスタレーションが印象的な作家です。その象徴が、正面左ウィンドーに見える100mのアクリルチェーンでつくられた蛍光ピンクのシャンデリア。回転灯のピンクの光が、人々を誘う案内灯の役目も果たしています。これを鬼頭はオスカー・ワイルドの童話から引用し、「the happy prince」と名づけました。壁には三角形に切った3300枚のステンレスのピースを構成。隆起の部分にステンレス製の車輪がまわり続けています。これはお客様を運ぶ馬車の車輪を複製したもの。馬車はエルメスのロゴであるカレーシュ(馬車)にも描かれています。またC.D.フリードリッヒの絵画『氷界』(1823-24)から氷山だけを切り取って3D化したのが、手前にある鏡の山。それを鬼頭は「マルシュアス」と名づけました。ギリシャ神話で、楽器の演奏勝負でアポロンに負け、皮膚をはがされた神の名前です。その鏡の山には飾られた商品のみでなく、街並みや通行人があらゆる角度から映り込んでいます。
04年秋冬レディースプレタのほか、シクラメン色の皮革製品やテーブルウェアなど、多彩な新製品が飾られ、「色とファンタジー」が表現されたウィンドー。そこには伝統を守りながら変革を続けるエルメスの姿が象徴されているのです。

鬼頭健吾(きとう・けんご)
1977年名古屋生まれのアーティスト。名古屋芸術大学で学び、京都市立芸術大学大学院で油絵を専攻。メディアや写真、インスタレーションも手がけるなど、幅広い活動を展開している。

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