曇りのち晴れ – アラン・ブュブレックス

【タイトル】 曇りのち晴れ
【アーティスト名】 アラン・ブュブレックス
【期間】 2006年1月19日~3月14日

2006年のエルメスのテーマである「l’Air de Paris(レール・ドゥ・パリ)」すなわち「パリの空気」を最初に表現するのは、フランス人アーティストのアラン・ブュブレックス。これまでも物語性を重視してきたエルメスのウィンドーですが、今回は「本当の話」が展開されています。それは「ウィンドー制作の現場」の話。工具箱や板などを背景に、06年の春夏コレクションを着たマネキン6体が、作業する様子です。
各マネキンが手にしているのは「パリの空」。パリでは、空の表情が街並みの見え方に及ぼす力が、他の都市よりも大きいのではないか……そう考えた作家は、自身で撮影した空の風景を用い、それを天上や背景にはめ込もうとしている現場を演出しました。なぜパリの空は景観にそれほど影響を与えるのでしょう? それについてアランは「建物の色や高さが似ているからではないか」と語ります。パリでは、空の色は快晴のブルーというより豊かなグレーのトーンで成り立っていることが多いので、作家はその曇り空とテーマを結びつけました。確かにコンコルド広場やセーヌ河沿いなど、空が目前に広がる場所に行けば、たとえ曇りであろうと雨降りだろうと、改めてこの街の空の美しさが認識できるはずです。
また、空のボックスには、「パリの空気を詰めて東京に運んできた」という象徴的な意味も込められています。空気というと単純に聞こえますが、そこには日々の天気や雰囲気まで含まれています。緩やかに変色する空のボックスは、パリのニュアンスをより豊かに伝えるため、演出されたものなのです。

Alain Bublex(アラン・ブュブレックス)
1961年リヨン生まれ、パリ在住。カーデザインの仕事を経て、アーティストに転身。写真やインスタレーションなど幅広い活動を展開する。その場その土地に視点を置いてコンセプトを作り出す作品や、地図や建物にフォーカスされた作品が特徴的。

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