吐息 – 吉岡徳仁

【タイトル】 吐息
【アーティスト名】 吉岡徳仁
【期間】 2004年5月20日~7月20日

エルメスを象徴する商品のひとつ、スカーフ。それをシンプルかつ詩的に見せたウィンドーの展開です。透明感のある白壁に埋め込まれたモニターには、女性の顔のアップで何かをふーっと吹く映像が流れています。その動作はモニター前のスカーフと連動しており、まるでそれが誰かに吹かれたように柔らかく揺れるのです。スカーフを動かしているのは実はバックパネルの後ろに隠れたエアーコンプレッサー。映像とスカーフとの連動に、幻想的なファンタジーが感じられます。
人間の自然な動作をテクノロジーで表現したのは、デザイナーの吉岡徳仁。映像・動作を連動させるアイデアは、02年に吉岡が初めてエルメスのウィンドーを手がけた時、既に彼から提案されたもので、その後2年以上の時を経てようやく実現したのです。
色彩の豊かさにおいては他のアイテムに比べても類がないスカーフをありのままの形(正方形)で見せ、機械で動きをつけることで、「色とファンタジー」というテーマを簡単かつ大胆に見せた吉岡。スカーフは毎週変わり、7月頭からは04年秋冬コレクションの立ち上がりに合わせて、新作を紹介していきました。
単純な動作がリピートされているようですが、よく見ると左右ウィンドーのスカーフが同時に吹かれるタイミングもあれば、ずれるときもあります。そんな微妙なリズムや表情の変化も楽しいこのウィンドー。エレガントに揺れるスカーフが目に涼しく、都会の忙しさの中、そこだけはゆっくりと時が流れるかのような、不思議な空気に満ちているのです。

吉岡徳仁(よしおか・とくじん)
1967年生まれ。86年桑沢デザイン研究所卒業。倉俣史郎や三宅一生のもとでデザインを学び、92年よりフリーランスで活動開始。2000年には吉岡徳仁デザイン事務所を設立。

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