本の記憶 – 泉イネ

【タイトル】 本の記憶
【アーティスト名】 泉イネ
【期間】 2010年11月18日~2011年1月25日

整然と並び、幾重にも折り重なるたくさんの本。
「語り継がれる“ものがたり”」をテーマとする2010年最後のウィンドウに登場したのは、雑然としているようでありながら、何らかの法則のもとに収集された本が並んだ誰かの本棚。

誰の本棚?―そのヒントはいたるところに見え隠れするさまざまなオブジェにありそうです。グレーのコート、紫色のバッグ、黒い帽子・・・。持ち主はどんな人なのだろう?そしてその人が収集し、そして手に取っているおびただしい数の本の内容は・・・?

アーティスト、泉 イネがウィンドウのモチーフに選んだのは、たくさんの本でした。それ自身が現実の、あるいは架空の“ものがたり”を語ることのできるオブジェである本。そして、その本には、それを集積し、別のオブジェを共存させることにより、見る人の想像力から、あらゆるものがたりを生み出す力もあります。

ここでは、背景に埋め込まれた澁谷征司の写真が、想像のためのひとつの道標となっています。女たちが何かを選んでいる場面。彼女たちがこの本棚の持ち主なのか、それとも彼女たちはその持ち主のために何かを選んでいるのか・・・?

幾何学模様のような本棚と本、構図とディテールの繊細な泉の作品、想像力をかきたてる澁谷の写真が、まるでサスペンス映画のような緊張感を相互に保ちつつ、そこにちりばめられたエルメスの商品が、謎を解く鍵のように存在し、背景にあるものがたりの結末を見る人にゆだねています。

泉イネ (いずみいね)
1977年、東京都生まれ。2002年東京藝術大学美術学部絵画科油画卒業。2000年より紺泉として装飾的な画風の絵画制作を開始する。2008年からは泉イネとして身近な出来事をモティーフに、絵画だけでなく、オブジェ、写真、空間インスタレーションなどの制作を展開し、現実と架空の間を繋ぐ。小山登美夫ギャラリー、MA2ギャラリーをはじめとするギャラリーや、美術館で作品を発表している。

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