「ボヨ~ン ボヨ~ン」 Le Gentil Garçon

【タイトル】 ボヨ~ン ボヨ~ン
【アーティスト名】 Le Gentil Garçon
【期間】 2013年5月22日~2013年7月17日

トランポリンは、絶妙なバランスと安定感、そして正確な身体感覚を必要とするアクロバット競技でありながら、跳躍と反発の単純な繰り返しで、誰でも楽しむことのできるスポーツです。抜けるような青空の下トランポリンに興じれば、体が頂点まで跳ね上がった瞬間、全身は重力から解放され、最高の気分を味わうことができます。
このシャボン玉のように儚い至福の時間を瞬間冷却し、ウィンドウというフレームのなかに収めたのが今回のデザインです。さらにウィンドウのなかでは、色鮮やかなカレがトランポリンのフレームに収められ、四角形の入れ子構造を表しているようでもあります。この胸が躍るような夢の世界で、トランポリンに興じる2人のキャラクターに呼応して、大きな綿雲のように連なった無数のピンポン玉も大空へ跳ね上がります。
このウィンドウは、ベルギーの画家ルネ・マグリットの絵画を想起させるとともに、その前に立つ人々を惑わせます。例えば、「Ceci n’est pas une pipe / これはパイプではない」という作品において、マグリットはキャンバスの中央にじつに大きなパイプを描き、その下に“Ceci n’est pas une pipe / これはパイプではない”と目の前の事実を敢えて否定しているのです。
宙を舞うのは、「野球ボールであって顔ではない」のか、「顔であって野球ボールではない」のか、またはどちらでもないのか。目の前にある事実と、鑑賞者の既成概念との関係を打ち壊します。巨大なボールのようにも見えるマネキンの顔は互いに見つめあい、赤い縫い目は特大の微笑みにも見えます。そして、桃色の鼻先をした子犬は、この儚い一瞬を寄せ集めた白くてもろい分子のようです。
小窓では、この超現実の世界を「H」のロゴが配されたピンポン玉で多様に変化させています。このパラレルワールドのピンポン玉は、遊び心を持つ変幻自在の粒子です。雲、生物、オブジェだけでなく、実寸大のエッフェル塔でも朝飯前です。

Le Gentil Garçon(ル・ジャンティ・ギャルソン)
フランス、リヨンを拠点して活動するアーティスト。Le Gentil Garçon は、フランス語で「ナイスガイ」の意。デッサン、インスタレーション、アニメーション、彫刻をはじめ、パブリックスペースでの作品、小規模な建築物に至るまで、さまざまな方法で創作活動を行っている。自然科学分野での経験を生かして、アートを研究対象としてとらえている。知識の正確性と発想の偶然性の間に立ち、複雑な事象を、さまざまな技術やノウハウを統合しながら、ささやかなユーモアとポエジーを織り交ぜて表現する。
日本では、横浜の黄金町バザール(2009年)と関西日仏交流会館 ヴィラ九条山(2012年)にて滞在制作を行う。黄金町バザールでは、「The Rise and Fall of Black Light City」という映像作品を制作。ヴィラ九条山では、大阪を拠点として活動する街頭紙芝居師、杉浦貞氏と関西のフランス人学校の生徒とともに映像作品を制作した。同作品は今夏、京都にて公開予定。

■過去のウィンドウ・ディスプレイ一覧

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