雨上がり – 栗林 隆


【タイトル】 雨上がり
【アーティスト名】 栗林 隆
【期間】 2009年7月17日~9月15日

「人は、この世界から、非現実的な世界への逃亡を試みる。
夢の中で、アートの中で、そして実際に列車に乗って。

旅立ちの出発点を『駅』だとするならば、そこは現実と非現実の境界地点なのだろう。
これから向かう新しい世界に、不安と期待の心を弾ませながら、
雨上がりの空のような青空に思いを寄せて。」

アーティスト、栗林隆は、「美しき逃避行」というテーマのもと、旅の出発点である「Station」を主題としてウィンドウを制作しました。飛行場、駅などのStationとは、そこからまったく別の場所に自分を運んでくれる特別な場所です。その「駅」という空間において、「雨上がり」という状況は、まだ見ぬ新しい土地への期待や不安を象徴しています。

雨上がりとは、雨によってすべてが洗い流され、空気や空間がとてもクリアになった状態、そしてグレーの世界からカラフルな世界に移行しようとする、そんな境目のことです。どんよりとした気分から、清々しく晴れやかな気持ち、そして何か新しいことが起こるのではないかという期待へと変わっていく、そんな状況も雨上がりの一面なのです。

相対的な事物がある限り、その間には必ず境界といわれる空間が存在します。境界をテーマにした作品を作り続ける栗林がもっとも意識する境界は、陸と水の境目のいわゆる水面と言われる空間。プラットホームの水溜りから顔を出すアザラシは、まさに空間の間に存在するものたちの象徴であり、またその二つの空間、あるいはそれ以上の空間を結びつけるプラグ的な存在といえるでしょう。彼らは、これから向かう非現実世界と、今いる現実世界を結ぶ時空の旅のシンボルであり、また道先案内人でもあります。

栗林 隆 (くりばやしたかし)
1968年、長崎県生まれの現代美術アーティスト。1993年、武蔵野美術大学卒業後、ドイツ、カッセル総合大学フリーアート科に入学、デュッセルドルフ・クンストアカデミーにてマイスター・シューラー、アカデミーブリーフを取得。国内外にて境界をテーマとした作品を発表し続けている。

Copyrighted Image