「オーバーラップ」 イネス・ロンバルディ展

[タイトル] オーバーラップ – 16台のモニターのためのプロジェクト – 
[アーティスト名] イネス・ロンバルディ
[会期] 2005年6月2日 ~ 8月21日

Given – オーバーラップする出来事の間に在ること

はじめてこの展示空間に来たとき、記憶の中にだけ存在しているどこにもない風景を作り出そうと考えた。

想像された世界と現実をつなぎ、音、映像、空間での体験が一体化するような作品を形にしたい。

この場所の建築的特性や光は作品が立ち現れる環境を作り出す。環境は作品と影響しあい、変化をもたらす。また反対に作品は環境をも変え得るのだ。

インスタレーションは、空間を音や静寂で満たし、反射や光の変化の強弱を包括しながら建築と一体化してゆく。と同時に、フレームによって切り取られた映像による新たな風景も作り出している。

この作品の素材は、私の実体験に基づくものである。ロッテルダムから黒海へ、西ヨーロッパから東ヨーロッパへの旅の中で、私はひとりの旅行者であり、かつ傍観者であった。旅での社会地理学的な状況がここではひとつの認識可能なレイヤー(層)として機能する。

作品の中の旅、それは「動き続けてゆく(身体的にも精神的にも)」状況下における抽象的で心理的なアプローチである。

それぞれのヴィデオは、異なる方向に互いに流れ込んでゆく2つのパーツから構成されている。意識と無意識(内部と外部空間)との間、その移り変わりは相互に連結している。いずれのパーツも川、旅、動き続けてゆくことを意味しているのである。

モノクロのパートは想像された世界、無意識、夢、歓喜と関連している。目は観察し、思考は夢の旅へ潜り込む。それが内的空間。

16台のモニターに流れる一連の画面(シークエンス)は、それぞれ数秒の時差をもって映し出される。そのため、ひと目で全体の映像を見ることができるのだ。

カラーのパートでは、シークエンスはそれぞれのモニターで異なっている。あるものはリピートし、またあるものは時を越えた時間が流れてゆく。これは、意識、現実を表している。それが外的空間。

音。これは音楽作品としてではなく、カノンとして構成され、それぞれの場面に呼応している。

時の一時停止、繰り返し、相互作用、変化は、毎日スタートボタンによって始まるこの旅の必要不可欠な要素だ。そして旅とは頭の中で思考されたものに過ぎない、例えあなたがそれに気づかなかったとしても。さあ、あなたはこの旅とどのように向き合い、あなた自身の旅を作り出すのだろうか。

イネス・ロンバルディ

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