異現実 – 栗林 隆

【タイトル】異現実
【アーティスト名】 栗林 隆
【会期】 2004年1月15日~3月16日

2004年のテーマは「色とファンタジー」。最初を飾るアーティストの栗林 隆は「境界」に興味をもっています。それはあらゆる意味での境界です。国境や海と陸、自然と人工、現実と非現実……。2つの世界を区分するラインは、このウィンドーにも存在します。上部は現実世界が表現され、カーペットが敷かれ、家具やホームラインの商品が飾られています。対して下部は非現実(=ファンタジー)を表しており、植物が密生し、バッグや靴が竜巻を巻き起こしている不思議な世界が展開されています。また正面右では「色」というテーマに合わせ、エルメスならではの豊かな色使いの、反対に正面左には白と黒の商品が飾られています。
上下両世界に商品が装飾されているのは、エルメスが現実とファンタジーの「境界」を越えていることを示します。そして自然界で境界を越えて存在する生物、ペンギンが登場します。陸と海とを自由に生きるペンギンとエルメスには、「全てを共有している」という共通点があります。12の小窓では、そのペンギンが主人公。ウェットスーツの素材とエルメスのジッパーでつくられた白黒のペンギンは、指輪を頭に乗せ、楽しげに水面から顔を出しています。
栗林は彼らしい「色とファンタジー」の表現と、エルメスの商品とを共存させ、ハーモニーを創出しました。ウィンドーを見る人にテーマが充分伝わる力強さは、栗林の真剣さと完璧への執着、そして何より彼自身が境界を越え、現実とファンタジーに生きているからに違いありません。

栗林 隆(くりばやし・たかし)
1968年長崎県生まれのアーティスト。93年武蔵野美術大学、
2002年ドイツのクンストアカデミー・デュッセルドルフを卒業。ドイツを中心にオランダやアメリカでも活動。03年「Out of the Blue」展(東京)でインスタレーションを展示。

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