empty swimming pool (the mistake) - フィリップ・ラメット

【タイトル】empty swimming pool (the mistake)
【アーティスト名】 フィリップ・ラメット
【期間】 2005年11月17日~2006年1月17日

「川の流れとともに」をテーマとした05年のウィンドーは、「水が流れてしまった空っぽのプール」というエスプリの効いた表現で締めくくられました。
「川」という自然に存在するテーマから、「プール」という人工的な主題を選んだのは、アーティストのフィリップ・ラメットです。自然と人工という真逆な対象を選ぶことで、皮肉のこもった面白おかしさを表現する、こうした演出方法は、彼が最も得意とする手法なのです。
ブルーのタイルで貼られたウィンドーの中には、はしごやスポットライトが仕込まれており、まさにプールの中の風景です。そこにたたずむのは、なぜか排水溝を見つめて呆然とする男女。男は排水溝の蓋をもって立ち尽くしており、どうやら彼が蓋を外した様子です。男女の間に漂うのは、水を流してしまったという罪悪感。その気まずい雰囲気が何気なく伝わるワンシーンが、ウィンドーで展開されているのです。
しかしこのプールに水がないのは、単純に季節が冬だからに他なりません。そうした細かい部分に季節感を出しながら、作家特有のエスプリを漂わせました。その一瞬の物語の主人公にエルメスの商品を据えた、ストーリー性の高いコラボレーションといえるでしょう。作家は、人が感じる罪悪心をテーマにした表現を繰り返し行っています。この観点は彼のアート表現の主題であり、このコラボレーションも例外ではありません。
水が流れてしまったプールの中に残った商品が、水が流れた方向を意識して配置されているのにも注目です。

Philippe Ramette(フィリップ・ラメット)
1961年生まれ、パリ在住のアーティスト。皮肉さやシュールレアリズム的発想がミックスされた、独自の表現方法を得意とする。01年にはブリュッセルの「ラ・ヴェリエール・エルメス」で個展を開く。

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