水車 – ホルヘ・パルド

【タイトル】 水車
【アーティスト名】 ホルヘ・パルド
【期間】 2005年5月19日~7月19日

キューバ生まれのホルヘ・パルドは彫刻作品を出発点に、建築やインテリア、照明、メディアアートまで活動の領域を広げ、各分野の境界を無意味化してきた現代アーティスト。その彼が選んだモチーフは「水車」でした。
2005年のエルメス年間テーマは「川の流れとともに」。古代文明を育てた肥沃な川、産業革命を支えた輸送路としての川。時代と共に異なった役割を与えられながら、川は今も変わらず、とうとうと流れているのです。
その川からエネルギーを得るために、人類が最初に発明した器械=水車が初めて歴史に姿を現したのは、紀元前のギリシャ。水の力を利用して、粉を挽こうと考えたのでした。
今回ホルヘが創造した「水車」は球体。世界初の宇宙飛行士ガガーリンが「地球は青かった」と形容したように、水をたたえた豊かな惑星・地球のメタファーでもあるのです。
山からの水が集まり、川となり、海に流れ込み、また雨水となる地球の循環システムを、ホルヘはアクリル製の球体を吊して表現しました。優しい光を放つ姿は、宇宙から見た地球そのもの。エルメスの商品はといえば、リザードをまとったエスパドリーユやストラップ、プラットフォームなどの靴が、作品の上に点在しているだけでした。
背景のパネルに顔を出しているのは全て、ホルヘのもとで働く職人たち。クールベの「画家のアトリエ」(1855年)という作品でも語られていたように、作品づくりという川の流れを絶やさないために、かけがえのない存在なのです。

Jorge Pardo(ホルヘ・パルド)
1963年キューバ・ハバナ生まれ。98年、ロサンゼルス現代美術館のコミッションワークで現在のアトリエ兼住居を発表。
2000年にはNYのDIAアートセンター内ブックショップのインテリアをデザイン。

Copyrighted Image