出航 – 中村哲也

【タイトル】出航
【アーティスト名】中村哲也
【会期】 2003年1月30日~4月1日 

2003年のエルメス年間テーマ「地中海」を表現する最初のウィンドーは、アーティスト中村哲也による白いクルーザーのインスタレーション。地中海のとある港町の桟橋に停泊中、という設定のクルーザー。その背景には、スカーフのモチーフが全面に貼られました。
正面右のスカーフ「地中海の港町」には、モロッコのモザイク模様やチュニジアの建築物、エジプトのスカラベなど地中海沿岸の文化が描かれています。正面左の「テラの春」は、キクラデス諸島の最南端に位置するサントリーニ島の春を表現しています。輝くクルーザーで優雅に旅をして、地中海ならではの町や村の表情を見つけていくというコンセプトが、ウィンドー全体に描かれているのです。
中村によるウィンドーは、2部構成で繰り広げられます。視覚的なスピード記録を更新し続けるレプリカシリーズで「速そうな形態」を制作してきた中村が今回挑戦したのは、「スピード感のありそうなクルーザー」。型を起こしFRPで成型したものを、塗装と磨きで仕上げたもので、独力での制作は1カ月余りを要しました。今回のインスタレーションでは、前後半を通して登場します。
クルーザーの塗装色を白にしたのは、エルメスの多彩な商品を目立たせるため。漆芸を専攻した中村らしい上品な艶が、クルーザーに上質感を与えています。またクルーザーに使用されているクリート(留め金)は、小窓のオブジェとしても使われました。

中村哲也(なかむら・てつや)
1968年千葉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科漆芸専攻終了。93年より制作活動を開始。98年からは「レプリカシリーズ」をスタート。02年メゾンエルメス8Fフォーラムにおいて「手の隙間」展を須田悦弘と開催。

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